におい・かおり環境学会誌
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38 巻, 5 号
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特集(食の官能評価と感性)
  • 岩橋 尊嗣
    2007 年 38 巻 5 号 p. 345
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2008/09/19
    ジャーナル フリー
    “食”と“におい・かおり”の関わりについては,本年協会設立20周年記念号(Vol. 38, No. 3)座談会の中での一話題として,さらに同号特集“食を通してにおい・かおりを考える”というテーマの中で7編を紹介している.その中で納豆,醤油,お茶,ワイン,発酵食品(ナレズシ)など私達の日常生活と深い関わりをもってきた食について,歴史的な背景も含め,主に,におい・かおり成分などに視点を置いた内容として掲載されている.
    近年,ヒトの五感によって物質(製品)の特性を評価・測定する官能評価すなわち,感性というものが,食品,日用品をはじめとして,自動車産業界など多くの分野での基礎研究や新製品開発において重要な手法として注目されている.特に,食に関わる味やかおりを評価する場合,機器による分析・測定とともに官能評価は欠くことのできない重要な一手段となっている.本特集では“食の官能評価と感性”というテーマで,5名の専門の方々に執筆していただいた.
    1編目は,食感品質についての記述である.食感品質(eating quality)とは,食物を手にし(この時点で,におい・かおり情報の一報を得る),口に入れ咀嚼し(この時点で,におい・かおり,味,口中での触感の情報を得る),そして飲み込むまでの一連の感覚性と捉えることもできる.そこには,個人個人の生活背景も大きく関与するとされる.本編では,実例としてソーセージに添加されたかおり効果を,官能評価用語を用いて行った結果について記載されている.次の2編は,アルコール発酵法によって生産される「清酒(日本酒)」と「ビール」についてである.清酒の研究・製品分析には,古くから官能評価が用いられている.日本の風土において,そしてそれぞれの地域において独特の発展を遂げてきた日本酒.しかし,その裏には並々ならぬ努力がはらわれ,嗅覚・味覚を駆使した品質評価法を作り上げてきた歴史がある.ビールは,周知のとおり欧米において発展してきた飲料物である.ビールは清酒と違い炭酸が入り,喉の渇きを癒すため一気に飲みほすという一面をもつ.したがって,ビールには「喉越し」という独特の感覚表現法がある.さらに,これらアルコール飲料物は酸化を受け易く,品質は変化し易い.これらも,においやかおりによって品質評価・管理がなされる.4編目は「コーヒー」についてである.コーヒーの香味を保持するために,原料検査から焙煎などの加工工程でカップテストと呼ばれる官能評価が実施される.また,原料である生豆の段階でもカップテストが行われ,製品の評価がなされるという.なお,国際規格である「ISO6668」には,すでにコーヒーの官能評価の指針規格が設定されている.さすがに国際的商品である.最終編では,消費者の食嗜好を定量化しようとする食感性工学について述べられている.ここで提案されたものが,今後の新商品開発へのさまざまな情報として役立つようになることを目的とし,現在,着実にその成果を出し続けている.
    これらの食品の官能評価方法で最大の課題が,言葉での表現法をどうするかであろう.たとえ,言葉としての表現法が定義され統一化されても,実務として評価・検査などをする側はヒトである.すなわち,評価・判定する側(ヒト)のスキル,標準化を,どう成すべきなのか.解決の難しい問題の一つであろう.また,機器分析と官能評価のクロスオーバーをどのようにしたら良いのかも,今後検討しなければならない重要課題の一つであるような気がする.最後に,ご多忙中にも拘らず,執筆をご快諾いただいた方々に,本紙面を借りて厚く御礼申し上げます.
  • 神宮 英夫, 熊王 康宏, 國枝 里美
    2007 年 38 巻 5 号 p. 346-351
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2008/09/19
    ジャーナル フリー
    食品におけるかおりの役割は多様である.しかし,かおりは食感品質の中で独立に存在しているわけではない.嗅覚と他の感覚との関係は議論されているが,通常の官能評価手法では必ずしもこの関係は明らかにはできない.このことを明らかにするには,評価用語や分析手法を工夫する必要があろう.ソーセージに添加されたかおり効果を,官能評価用語を工夫して実施し,分析を行った.パネル自身が気がついていない評価構造を,グラフィカルモデリングを使って明らかにした.
  • 宇都宮 仁
    2007 年 38 巻 5 号 p. 352-360
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2008/09/19
    ジャーナル フリー
    官能評価は,清酒の研究や製品分析に不可欠である.最初に,これまで行われてきた清酒の官能評価の歴史とその問題点について紹介する.最近,筆者らは,記述的試験法のために,用語,標準見本とフレーバホイールで構成される評価用語体系を作成した.この評価用語体系中のにおい・かおりに関する用語とその由来について説明する.
    また,専門家と専門家以外を比較するため,標準見本18種類と3種類の製品を利用して一般パネルによる清酒のかおりの表現,類別,嗜好について調査を行い,一般パネルによる清酒のかおり構造を作成した.
  • 岸本 徹, 尾崎 一隆, 鰐川 彰
    2007 年 38 巻 5 号 p. 361-367
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2008/09/19
    ジャーナル フリー
    わが国で統一化されたビール官能評価方法について解説した.北米およびヨーロッパで統一化された国際評価方法をもとに,日本と欧米との言葉や文化の違いを視野に入れ,それらの香味用語が意図する意味を十分に考慮し作成されたものである.また,ビール独自の官能評価方法に関して述べ,官能評価と成分を対応させる試みについて,ホップ香気や酸化臭について具体例を挙げ解説した.
  • 石脇 智広
    2007 年 38 巻 5 号 p. 368-374
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2008/09/19
    ジャーナル フリー
    コーヒーは石油に次ぐ貿易量を誇る国際商品である.そして日本の輸入量は年間40万tを越えており,今や世界第3位の輸入国となっている.コーヒーの品質を管理するために生産国,消費国でさまざまな品質検査が行われているが,官能評価はその中でも最も重要なものとして位置づけられている.本稿ではコーヒーの基礎的な知識を述べた上で,官能評価について,目的,手法をまとめた.また,業界全体の動向として,コーヒーインストラクター検定についてその概要を述べた.
  • 相良 泰行
    2007 年 38 巻 5 号 p. 375-382
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2008/09/19
    ジャーナル フリー
    食感性工学は消費者の食嗜好を定量化する手法・技術・システムなどを考究する新しい科学技術の分野として提唱されている.日本語の「感性」は多様に解釈されているため,欧米の諸言語には正確に対応する言葉が存在しない.したがって,「kansei」が欧米の言語として認知されることを提案している.また,消費者個人に「おいしさ」が生起するメカニズムを記述するために開発された「食感性モデル」は,新食品製品の設計,加工条件の最適化および販売戦略などに応用されている.本稿では,このモデルに基づき,緑茶飲料の成分分析データと社会属性の異なる消費者の官能評価スコアを利用した香味設計法およびペットボトルを介した製品情報が香味の「おいしさ」評価に及ぼす影響を明らかにし,ヒット商品の創生に貢献した事例を紹介する.
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