におい・かおり環境学会誌
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39 巻 , 4 号
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特集(かおりの機能性)
  • 岩橋 尊嗣
    2008 年 39 巻 4 号 p. 209
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    2006年の日本人の平均寿命は女性85.81歳(22年連続世界一),男性79.00歳(世界第2位,第1位はアイスランド : 79.4歳)であった.厚生労働省では,今後三大疾病の治療効果の向上を見込むと,さらに寿命は延びると予想している.
    私達の身体機能は,加齢とともに確実に老化し衰えていく.その一つの現象として,外見上の体力衰退ではなく飲食時の気管への食物の入り込みである.この現象は“誤嚥”と呼ばれ大きな問題となっている.飲食中に突如,猛烈に咳き込む.このような状況に陥ったり,見たりされた方もおられるでしょう.普通,健常であれば気管に入った異物は咳き込むことで吐き出すことができる.しかし,高齢者・疾病者の場合,咳き込むことが出来ずに,異物が気管に入ったまま放置され続けると,この異物に起因しての発熱,さらには肺炎にまで進行してしまうことがある.
    第1編は,海老原氏らに「嗅覚刺激と高齢者摂食嚥下障害」という題目で,上述したような問題点の解決にブラックペッパーによる嗅覚刺激が脳への刺激となり,最終的に誤嚥予防の有益な手段になり得るという研究成果について執筆して頂いた.
    第2編は,今西氏に「香りと医療─メディカル・アロマセラピー─」というテーマで執筆して頂いた.本学会誌でも以前に呼気や体表より発散されるガス成分による疾病の診断,予防等への研究が実用化へと向かいつつあることを紹介している(Vol. 36 No. 5, Vol. 37 No. 2).エッセンシャルオイル(精油)を用いてのアロマセラピー(芳香療法)として,私達に最も身近のものはエステティック・アロマセラピーと呼ばれるもので,街なかの美容室やエステサロンなどで行われている行為である.これに対して,標題にあるメディカル・アロマセラピーは医療行為の中で補完的な目的として行われるもので,その効能は科学的エビデンスに裏付けされ,徐々に認められつつある.今後さらなる実施例が増え,病気の予防や症状の軽減への寄与という実用性が期待される分野である.
    第3編は,岩崎氏に「都市緑化植物が保有するストレス緩和効果─揮発成分からみた癒しの効果─」というテーマで執筆して頂いた.2006年林野庁より森林セラピー基地の認定箇所が発表され,樹木から発散される揮発性物質の身体におよぼす有効性が確認されている.厚生労働省は“治療する医学”から“予防する医学”が重要であると位置付け,主に食生活の改善指導等を積極的に進めるとしている.しかし,“食”だけではなく嗅覚を活用しての予防医学にも注目すべき点が多い.岩崎氏は都市部の緑化樹木でもセラピー効果が得られることを確認した.たとえば,比較的植樹が多い“クスノキ”からの抽出精油(主成分はカンファー)について,ヒトへのストレス緩和作用を調べ有効性を確認し,さらに,植物園内にあるラベンダー畑と芝生地においてもストレス緩和性があることを確認している.
    第4編は,野田氏らに「五感を刺激する園芸療法」というテーマで執筆して頂いた.“園芸療法”という言葉自体,読者の方々にとって馴染みの薄い言葉かもしれない.著者らの所属されている千葉大学では,芳香療法,森林療法など植物を媒介としての療法が注目を集めている中,園芸療法科学の確立に向けたプロジェクトをスタートさせている.園芸療法の特徴は,個人が実際に植物の世話をすることで,見たり,触れたり,嗅いだり,食したりすることで五感が活性化されることである.すなわち,自然のリズムの中に身を置くことで,日常の健康増進や生活の質の向上を図ることを目的としている.
    以上紹介した4編の研究内容に共通している特徴は,いずれの場合もヒトに対して“非浸襲性である“ということであろう.高齢,年少,重篤である人達にとって採血・採尿行為などは身体に負荷をかけてしまう.これからはヒトに対して負荷をかけない診断・治療法の確立が極めて重要なことになってくる.執筆して頂いたいずれの研究も,しっかりとしたエビデンスに裏付けされており,今後に大きな期待を抱かせてくれる分野である.これからのますますの発展を願いたい.
    最後にご多忙中にも関わらず,本誌への執筆をご快諾いただいた先生方に,本紙面を借り厚く御礼申し上げます.
  • 海老原 孝枝, 海老原 覚, 荒井 啓行
    2008 年 39 巻 4 号 p. 210-220
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    高齢者肺炎のみならず,一般の高齢者でも誤嚥に遇する頻度は高い.一般的な高齢者の誤嚥は,咽喉頭の器質的な病態が原因であるというよりも,脳に起因する,神経の知覚や伝達の障害といっても過言でない.であるから,誤嚥の予防あるいは治療は,神経に対するアプローチがカギとなる.そして,そのアプローチ法は,従来の治療のような医薬品の投薬だけでは困難で,介護的アプローチが重要な位置をしめる.とくに,ブラックペッパー精油による嗅覚刺激は,脳に直接刺激を与え,嚥下反射および運動を改善する.この嗅覚刺激のような介護的アプローチをもって,はじめて統合的に誤嚥予防が可能である.
  • 今西 二郎
    2008 年 39 巻 4 号 p. 221-230
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    香りの効果を積極的に利用して,病気の予防・治療や症状の軽減を図ろうとするのが,メディカル・アロマセラピーである.すなわち,メディカル・アロマセラピーは,エッセンシャルオイルを用いて,疾患の治療や症状の緩和を図る治療法の一つである.エッセンシャルオイルは蒸気蒸留法や圧搾法などで抽出し,多くの成分を含んでいる.エッセンシャルオイルには,抗菌作用,抗ウイルス作用,抗炎症作用,鎮痛作用,抗不安作用,抗うつ作用,リラクセーション誘導作用などさまざまな薬理作用があるので,メディカル・アロマセラピーは産婦人科疾患,皮膚疾患,上気道感染症,心身症,疼痛管理,ストレス管理などにおいて,有用である.アロマセラピーの方法としては,吸入,内服,アロマバス,マッサージ塗布などがある.このうち,アロママッサージは,もっとも効果が高い.アロママッサージにより,効率よくレラクセーションを誘導することができる.しかし,メディカル・アロマセラピーは,あくまでも補完的であり,他の療法と組み合わせることで,理想的な医療の実現に貢献できる.
  • 岩崎 寛
    2008 年 39 巻 4 号 p. 231-238
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    都市緑地に植栽された植物の揮発成分が保有するストレス緩和効果を調べた.その結果,都市公園に植栽されたクスノキの揮発成分には唾液コルチゾール(ストレスホルモン)を抑制する働きがみられたことから,ストレス緩和効果があることが示唆された.また,都市公園に植栽されたラベンダーと芝生のストレス緩和の場としての評価を試みたところ,どちらの緑地も生理的指標から見ると,ストレス緩和効果がみられたが,心理的指標から見ると傾向は異なり,芝生は休息の場として,ラベンダー畑は気分転換の場として評価できるといえた.
  • 野田 勝二, 小宮山 政敏, 大釜 敏正
    2008 年 39 巻 4 号 p. 239-246
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    園芸療法の特徴について概観した後,ハーブの栽培と利用による効果測定の実験例を紹介した.ハーブを用いた園芸作業は,心理学的指標である精神健康調査および気分プロフィール検査から神経症症状や一時的な気分の改善に有効であること,生理学的指標である唾液中コルチゾール濃度とフリッカー値から,園芸作業がストレスや中枢性疲労の解消に効果的であることなどが明らかとなった.また,医療機関や福祉施設における実践から得られた症例もいくつか紹介した.
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