におい・かおり環境学会誌
Online ISSN : 1349-7847
Print ISSN : 1348-2904
ISSN-L : 1348-2904
40 巻 , 4 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
特集 (畜産臭気の簡便な対策手法)
  • 金川 貴博
    2009 年 40 巻 4 号 p. 211
    発行日: 2009/07/25
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
    日本の畜産農家は大変苦しい状況にある.昨年の飼料価格の急激な上昇はおさまったが,以前の価格にまでは下落していない.配合飼料の主原料はトウモロコシであり,米国が,トウモロコシを燃料用エタノールの生産に使うという政策を打ち出したために,トウモロコシの需要が増えて,価格が高いままである.飼料用トウモロコシの輸入依存率はほぼ100%であり,その94%が米国からの輸入であるから,米国の施策が配合飼料の価格に直接ひびく.
    こんな状況の中で,畜産の臭気対策となると,コストがかかるものは,実現性が乏しい.さらに難題としては,硝酸汚染の問題がある.畜産臭気の大半はアンモニアであり,これを除去するには,アンモニア態のままか,または硝酸などに形を変えて気体から取り除くことになる.問題はその先である.除去したアンモニアを肥料として畑などに利用できれば問題はないが,窒素成分の全部を受け入れるだけの田畑がない場所ではどうするか.これを環境中に放置すれば地下水の硝酸汚染につながる.
    乳児が硝酸濃度の高い水を飲み続けると,酸素不足に陥ることがある(メトヘモグロビン血症).日本では過去に1例だけ報告がある.気になるのは,日本の地下水の硝酸濃度がだんだんと上昇していることである.「日本の名水」の中には硝酸濃度が水道基準を超えてしまい,「この水は飲めません」というところが出てきている.畜産だけに原因があるわけではない.食料自給率が40%という現状では,輸入食料品に由来する窒素化合物が国内に蓄積するだけでなく,自動車排ガスなどのNOxも加わる.脱窒処理を行って,硝酸を窒素ガスに変えてしまえば一件落着であるが,それには,無酸素条件で脱窒微生物に有機物を与えるという工程が必要であり,大きな費用がかかる.また,自然界では,脱窒が起こる場面が少なくて,硝酸濃度が簡単には低下しない.
    話を臭気に戻そう.畜産現場や畜糞堆肥化処理場ではアンモニアが高い濃度で検出されるが,アンモニアは空気よりも軽いので(重さは空気の0.6倍),拡散につれて上空へ飛んでいく.空気の重さを1.0とすると,硫化水素は1.2,メチルメルカプタンは1.7,酪酸は3.0,吉草酸は3.5であり,これらは空気よりも重い.臭気の強さにしても,三点比較式におい袋法で測定された検知閾値は,アンモニアが1500ppbであるのに対し,硫化水素は0.41ppb, メチルメルカプタンは0.070ppb, n-酪酸は0.19ppb, n-吉草酸は0.037ppbであるから,これらは低濃度でも臭いが強い.したがって,現場の遠くから苦情が来た時は,これらの臭気物質への対策を要すると思われる.現在のように清潔志向が強くなってくると,わずかの臭気も苦情の原因になりそうである.しかし,資源問題,エネルギー問題,地球環境問題を考えれば,生物資源の有効利用が重要な課題であり,利用過程での臭気は,ある程度までは受容してもらわないといけない難しい問題である.単に臭気だけを考えるのではなくて,食糧の確保,地域の経済,地域の環境問題,地球規模の資源問題と環境問題など,多面的に考えないと解決策が出てこない問題を含んでいる.
    この特集では,畜産農家が置かれている経済的な状況に鑑みて,できるだけコストがかからない有効な臭気対策を紹介するため,独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所の羽賀清典氏にご尽力をいただき,全体の構成を作り上げた.おかげで,第一線で活躍しておられる方々にご執筆いただき,臭気対策の現状を特集することができた.羽賀清典氏およびご執筆いただいた方々に深く感謝申し上げる.
  • 黒田 和孝
    2009 年 40 巻 4 号 p. 212-220
    発行日: 2009/07/25
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
    近年,畜産経営に起因する悪臭苦情の発生は公式報告で年間1500-1700件を数えている.畜産農家の戸数自体は減少しつつあるが,その一方で家畜の平均飼養頭羽数の増加と悪臭規制の強化の傾向が続いており,苦情の原因となる農家の割合は徐々に上昇しつつある.一方,法律に基づく施設整備と排せつ物管理の改善が進められてきており,このことが多くの事例で悪臭問題の解消につながっている模様である.また,悪臭問題への対応として,対策技術の開発や改良,情報やアドバイスの提供等,さまざまなサポート体制も整備されてきている.
  • 阿部 佳之, 本田 善文, 福重 直輝
    2009 年 40 巻 4 号 p. 221-228
    発行日: 2009/07/25
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
    家畜ふん尿の堆肥化過程で発生するアンモニアを回収,資源化するために,吸引通気式堆肥化処理技術を開発した.この技術では,堆肥原料の底部に設置した配管から吸引するために,堆肥原料への通気と同時に,堆肥化過程で発生するアンモニアを効率的に回収することができる.吸引通気によって集められたアンモニアは,アンモニア回収装置でリン酸,あるいは硫酸と反応して回収液として資源化される.つまり,窒素肥料に変換される.この回収液で栽培試験を行った結果,メロンや水稲の肥料として化学肥料と同等の効果が得られた.
  • 田中 章浩
    2009 年 40 巻 4 号 p. 229-234
    発行日: 2009/07/25
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
    家畜ふん尿に起因する臭気は大きな問題であり,特に堆肥化過程に発生する臭気はアンモニア濃度が高く苦情の原因となることが多い.そこで,牛糞の堆肥化1次発酵で揮散するアンモニアの90%を占める1,2週目発酵槽からの臭気を,出来上がり堆肥に吸着させ低コストに脱臭する方法について検討した.アンモニアは98%ほど除去され,硫黄化合物や低級脂肪酸に関しても良好な除去を示した.脱臭に用いた堆肥は窒素濃度が増加し,窒素肥効率70%の速効性の肥料となった.
  • 山田 正幸, 三枝 孝裕, 高橋 朋子, 鈴木 睦美
    2009 年 40 巻 4 号 p. 235-240
    発行日: 2009/07/25
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
    畜産の臭気対策を可能にするためには,タイプの異なる二つの発生源である堆肥発酵施設と畜舎向けに高性能で低コストな脱臭装置を開発する以外にない.
    そのために,群馬県では簡便性とコスト低減の可能性から生物処理方式に着目し,地域資源を活用しつつ性能を高めることで現場要望に対応する脱臭装置の開発に取り組み,発酵装置向けの脱臭方法については普及の段階に達した.装置の充填資材の軽石はロックウールに比べ数分の一のコストで,かつ長期使用に耐える.また,アンモニア性窒素の日負荷量で400g/m3充填資材程度の処理が可能である.
  • 山本 朱美
    2009 年 40 巻 4 号 p. 241-247
    発行日: 2009/07/25
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
    豚に給与する飼料成分を調整して糞尿から発生するアンモニアを低減することができる.今までに,アミノ酸バランスを調整した低蛋白質飼料や高繊維質飼料原料を配合した飼料を豚に給与すると,尿中への窒素排せつ量が低減することが分かってきた.今回,低蛋白質飼料へ高繊維質飼料を添加して給与することで,養豚業からのアンモニア発生量の減少を最大限にする技術を紹介する.
研究論文
  • 高部 圀彦, 間瀬 暢之, 久永 祐介, 高橋 正樹, 宮本 武典, 近藤 健, 植松 烈平, 金辺 民朗, 難波 三男
    2009 年 40 巻 4 号 p. 248-255
    発行日: 2009/07/25
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
    現在LPガスに使用されている着臭剤は硫黄系化合物が主であり,燃焼の際にSOXが排出されることや,燃料電池用の水素をガスから得る際の触媒毒になる等の問題がある.そのため,硫黄原子を含まない新しい着臭物質の開発が求められている.今回,種々の含酸素系および炭化水素系低分子化合物を合成し,快・不快度・臭気強度,生体安全性,化学的安定性等を評価するとともに,パネルにより,着臭剤としての適性について評価した結果,従来の硫黄系着臭剤の代替物質として1-ペンチン,2-ヘキシンが有用であることが明らかとなった.
トピックス
臭気対策・かおり施策
feedback
Top