害虫防除の手段には様々なものがあるが,その中で「忌避」は抵抗性の獲得や残留性の懸念が「殺虫」などと比べて少ないというメリットを持つ.テルペン類をはじめとする忌避活性成分に関しては,これまでにも数多くの報告がなされている一方,そのメカニズムや構造─活性相関についての研究は十分とは言えない.今日では,昆虫のみならず鳥類や哺乳類を対象として多種多様な忌避剤が販売され,剤形や用途も多岐に亘る.昨今,商品に対して安心・安全を求める消費者が増える中,今後,忌避剤市場はさらに拡大していくであろう.
ニホンオオカミが絶滅してから,100年以上が経過している.最後にニホンオオカミが目撃された場所は,紀伊半島であった.その後,福岡で目撃情報があったが,群れをつくるオオカミが単独で行動することが考えられないために野犬ではないかと結論づけられた.本小論は,絶滅以来100年を経過しているためにオオカミに対する怖さを体験していないエゾシカがオオカミ尿由来物質(P-mix)を忌避するとともに恐怖関連行動を示した研究成果を中心に紹介する.
モグラ忌避剤の効果を,コウベモグラおよびアズマモグラについて飼育下および野外で調べた.市販忌避剤5種類の効果を飼育下において調べたところ,「ヘビ・モグラ忌避ジェット」,「モグレス」,「モグラヨラズ」に少なくとも短時間の忌避効果があったが,「ニゲダス」と「とおせん棒」には認められなかった.野外におけるモグラの坑道通過頻度は1日に平均1.24回であり,環境による差は少なかった.「ヘビ・モグラ忌避ジェット」と「モグレス」を坑道内に置いてモグラの通過頻度を調べたところ,両剤とも有意な忌避効果が認められた.
高齢者施設,医療福祉施設,在宅介護では,老人のし尿の後始末について対応に苦慮していることが現状である.し尿の臭気に対する対策は主に芳香剤や消臭剤などを使用しているが,元を断つことはできない.本研究では,上記の施設で大きな問題となっている「尿」に着目して,まず尿自体の腐敗に伴う臭気,尿の臭気物質,繊維と関連をもたせた.この結果は臭気の発生源である尿漏れにともなう下着や寝具からの尿臭について,繊維の種類や織り方と臭気の発生の関係を把握した.