日本貿易振興機構(以下,JETROとする.)から講演依頼を受けた標記の講演について,日本側からの講演だけでなく,上海市からも修光利先生(国家環境保護化学工業過程環境リスク評価・コントロール重点実験室,華東理工大学資源・環境工程学院)より中華人民共和国(以下,中国と示す.)および上海市における悪臭を中心とした環境関連の法令等について,また宋先生(上海市環境モニタリングセンター高級エンジニア)より悪臭関係の測定方法についてご講演頂いた.
本稿は,両先生の講演内容の概要を整理したものである.
なお,本稿の内容は現在,中国,上海市で検討中のものであり,中国の国家としての方針を示したものではないので,その点をご理解して頂いた上で,参考として読んでいただきたい.
中華人民共和国(以下,中国とする.)では,1993年8月に悪臭大気汚染物質基準(GB14554-93)が正式に発布され現在に至っている(実施は1994年1月).
上記の基準の発布から20年以上が経過し,中国の産業や生活様式等も大幅に変わりつつある中で,明確ではないが,現在これらの基準の改定が検討されているようである.
そのような背景の中,日本貿易振興機構(以下,JETROとする.)の依頼により上海市における悪臭関連の法律の改定の参考に資することを目的として,日本の悪臭防止法の特徴的な部分について講演を行った.また,法律に関連したにおいの測定方法を中心とした技術面についても講演を行った.
講演後,参加者より法律面,技術面等多数の質問をいただいた.
本稿は,講演内容とその後の質疑応答についてまとめたものである.
質疑応答の内容から,中国における臭気測定等の状況についての参考になればと考える.
大阪市の悪臭汚染の対策指導の方法について上海市の臭気の研究者や測定技術者に対して報告した.先ず,大阪市の悪臭発生源の規制指導を担当する組織について紹介した.大阪市では,2006年に特定悪臭22物質の濃度規制から臭気指数による規制に変えた.敷地境界線における規制値は大阪市全域で臭気指数10を採用している.悪臭苦情は,大規模な工場の臭気対策は進んでいるが,零細な工場や飲食店などに対する苦情が多い.苦情発生時には,大阪市の職員が現場に出向き,悪臭調査を実施している.また,日本のし尿処理場や下水処理場で採用例の多い活性汚泥ばっ気法や充填塔式生物脱臭法についてもその概要と脱臭機能について説明した.
上海市では,悪臭に対する新たな規制基準の制定を検討しており,日本の悪臭防止法を参考にすることを目的として,日本貿易振興機構(以下,JETROと示す)と上海市化学化工学会の主催で大気分野の専門家会合が催された.弊社は,悪臭防止法における臭気指数測定において重要となる精度管理に視点を置き,嗅覚測定用器材の紹介と弊社の消臭剤による臭気対策事例について講演した.本稿はその講演内容,それに関連する上海側の参加者の意見や情報を報告として纏めたものである.