におい・かおり環境学会誌
Online ISSN : 1349-7847
Print ISSN : 1348-2904
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48 巻, 6 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集(生体ガス活用の最前線)
  • 榎本 長蔵
    2017 年 48 巻 6 号 p. 401
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2021/07/27
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  • 近藤 孝晴, 奥村 直也, 下内 章人
    2017 年 48 巻 6 号 p. 402-409
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2021/07/27
    ジャーナル フリー

    生体ガス測定と病気の診断について最近の知見をまとめた.消化器疾患のうち乳糖不耐症などの消化吸収異常や腸内細菌異常増殖の診断では呼気水素測定が最も有用な検査法である.肝疾患では呼気あるいは皮膚アンモニアが増加するが重症度との関連は少ないとの報告が多い.糖尿病では呼気アセトン測定の報告が多いが,その診断や重症度判定に有用か否かについては必ずしも意見が一致していない.しかし,糖尿病性ケトアシドーシスでは間違いなく有用である.呼吸器疾患では気管支喘息での呼気NO(一酸化窒素)測定がすでに臨床で使用されている.循環器系,感染症などに関する生体ガス測定についても触れた.今後,基礎的検討や大規模な疫学的検討などの研究を継続発展することが望まれる.

  • 関根 嘉香, 木村 桂大, 梅澤 和夫
    2017 年 48 巻 6 号 p. 410-417
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2021/07/27
    ジャーナル フリー

    近年の機器分析法の発展に伴い,ヒト体表面から発せられる微量な生体ガス(皮膚ガス)の種類や放散量が明らかになり,ヒトの身体的・生理的状態,種々の疾病の有無,生活環境や生活行為との関連に注目が集まっている.皮膚ガスは,体表面から放散される揮発性の有機・無機化合物の総称であり,代謝生成物や外来因子,皮膚表面における生物的・化学的反応生成物などから構成される混合ガスである.本稿では,皮膚ガスの種類や放散経路に関する基礎的な知見,および筆者らが開発した簡便な皮膚ガス測定法の概要,およびいくつかの臨床応用例を紹介し,皮膚ガス測定が健康・医用面において極めて有望な研究視座を与えることを述べる.

  • 中村 禎子, 田辺 賢一, 奥 恒行
    2017 年 48 巻 6 号 p. 418-428
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2021/07/27
    ジャーナル フリー

    難消化性オリゴ糖や食物繊維は消化管における糖質消化酵素によって加水分解されることなく大腸へ到達し,そこに棲息する腸内細菌によって発酵を受けて,短鎖脂肪酸の他,炭酸ガス,水素ガス,メタンガスなどに代謝される.難吸収性の糖アルコールや希少糖も腸内細菌による発酵を受ける.産生された短鎖脂肪酸は吸収上皮細胞から吸収された後,宿主のエネルギー源として利用されるので,消化吸収されない糖質であってもエネルギー源として宿主に寄与している.経口摂取した難消化吸収性糖質がほぼ完全に発酵を受けた場合には,2kcal/1gのエネルギーを産生する.一方,腸内細菌由来の水素ガスは,その大部分が吸収上皮細胞から吸収され,呼気へ排出される.我々は,呼気水素ガス排出が糖質の小腸における消化性と大腸における発酵性を反映することを明らかにし,呼気水素ガス排出量を1つの指標として難消化性糖質素材の有効エネルギーを評価する方法を提案した.消化吸収性および難消化吸収性を含めた総糖質の生体利用性を評価するためには,血糖値やインスリン分泌応答に加えて呼気水素ガス排出量を生体指標に加えて総合的に評価することを提案したい.

  • 丑込 道雄, 百瀬 悟, 壷井 修
    2017 年 48 巻 6 号 p. 429-437
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2021/07/27
    ジャーナル フリー

    生体ガスのなかでアンモニアガスに注目した.臭化第一銅(CuBr)を感応膜としたガスセンサーを用いて,2種類の新しいセンサーシステムを開発した.ひとつはヒトの呼気をセンシングすることによって,健康状態を調べるシステム.もうひとつは,トイレのにおいをセンシングするシステムである.これらのにおい定量化,見える化システムを使い,これらをICT技術と融合させることで,我々の生活はより快適,便利で健康的になることが期待できる.

技術論文
  • 石川 綾子
    2017 年 48 巻 6 号 p. 438-451
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2021/07/27
    ジャーナル フリー

    本研究では,CuO含有ガラスの酸化反応性に着目し,悪臭物質である硫黄化合物や低級脂肪酸類に対する除去機能,特に,メチルメルカプタンに対する除去機能を調査した.

    CuO含有ガラスは,硫化水素,メルカプタン類,低級脂肪酸類を除去することが,ガス検知管を用いた除去試験で判明した.メチルメルカプタンを除去した際のガスからは,メチルメルカプタンの酸化生成物であるジメチルジスルフィドがガスクロマトグラフにより同定された.CuO含有ガラスからは,ヒドロキシルラジカルの発生がスピントラップ法を用いたラジカル検出試験で観測されたため,このラジカルによりメチルメルカプタンが二量化されてジメチルジスルフィドが生成したと考えられる.次に,CuO含有ガラスと同様の酸化機構を示すCuOと除去性能を比較するため,メチルメルカプタンの繰返し除去試験を実施するとともに,除去前後のCuO含有ガラスやCuOの表面をXPSで分析した.除去性能の持続性は,CuO含有ガラスがCuOよりも高かった.これは,CuOは表面に硫黄が固定化されていたのに対して,CuO含有ガラスは固定化されにくいため,除去性能がCuOよりも持続するものと推定された.

    本研究により,CuO含有ガラスは,硫黄化合物や低級脂肪酸類に対する除去機能を有すること,メチルメルカプタンを除去した際のジメチルジスルフィドの生成は,ラジカル反応である可能性が示唆された.

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