乾しいたけおよびそのだし汁はさまざまな日本の調理に利用されている.乾しいたけの水戻しによって得られるだし汁の風味は,水戻しの際の時間や温度に影響される.本論文では,水戻しの条件を3種類設定し,得られただし汁について,そのにおいをGCにおいかぎと官能評価により検討した.におい濃縮物は溶媒抽出物をSAFE装置により精製する方法と連続水蒸気蒸留抽出法により得た.AEDA法により,ジメチルトリスルフィド,ジメチルテトラスルフィド,1,2,4,6-テトラチエパン等の含硫化合物のFDファクターが高いことが明らかになった.官能評価では,簡便な方法の38℃(温湯),30分の水戻し条件がにおいの点で好ましいと考えられた.
加熱中のサツマイモ香気の変化,および,加熱中最も嗜好性が高まる時間帯の香気について調査した.加熱温度を200℃とした場合,最も焼き芋らしく好ましいと評価されたのは,加熱開始から75~90分の間の香気だった.この香気のAEDAより,16成分が香気寄与成分として示された.これらはいずれも加熱反応による生成物であるが,加熱中の増加の仕方は一様ではなく,アミノ-カルボニル反応,ストレッカー分解,カロテノイドやフェルラ酸の熱分解といった生成経路ごとに異なる増加パターンを示した.
鳥取県境港で水揚げされたベニズワイ(Chionoecetes japonicus)を試料とし,揮発性成分をガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)により分析した.その結果,加熱によって,特にカニミソ(肝膵臓)の揮発性成分の種類が顕著に増加することを確認した.
また,蒸煮後のベニズワイにクエン酸を添加してpHを低下させ,においの変化について官能評価を行い,ガスクロマトグラフ質量分析装置によって揮発性成分の変動を解析した.その結果,pHの低下に伴って,カニをイメージさせるにおいと複数の揮発性成分が減少することがわかった.このうち,カニのにおいを形成する成分として,トリメチルアミンが含まれることが示唆された.
充填塔型生物脱臭装置を適切に維持・運転するためには,装置の充填層に適切な水分と栄養塩類が維持されている必要がある.本研究では,ガス状VOC(揮発性有機化合物)を処理対象とする生物脱臭装置で供給される栄養塩成分として窒素源に着目し,栄養塩溶液を多孔性PVF(Polyvinyl formal)担体充填層に浸漬供給する装置での塩化アンモニウムの物質移動過程を,モデル浸漬実験により推定した.また,実際の生物脱臭装置における最適な浸漬条件の検索,また浸漬方式と通常装置で適用される散布方式との間での装置性能の比較を目的に,VOCガスの処理実験を行った.その結果,浸漬方式での栄養塩供給は,散布方式と比較して疎水性ガスであるトルエンの除去に有効であった.また,栄養塩溶液から充填担体への物質移動については,含水率75%を境に,高含水率側では分子拡散が,低含水率側では水分移動に伴う移流が,それぞれ主要な物質移動推進力となっていた.ただし,低含水率の充填層に対する実際の栄養塩移動量は,水分移動量から推定される移動量よりも低くなる傾向にあった.浸漬頻度を上げると充填層に過剰な菌体増殖が生じる傾向にあり,その原因は窒素源よりも水分の過剰な存在にあると推察された.過剰な菌体増殖を抑制するためには,充填層の含水率が75%を下回る程度まで乾燥してから浸漬操作を実施すべきと考えられた.