水道水の異臭味被害は全国各地で発生しており,原因別割合ではかび臭が大半を占めている.平成26年10月,大分市においても水道水のかび臭障害が発生した.原因は,当市浄水場の取水口上流に位置する多目的ダムで,かび臭物質である2-メチルイソボルネオール(2-MIB)を産生する藍藻が増殖し,高濃度化したことであった.当市水道事業におけるかび臭障害対応に際しては,水道水の2-MIB濃度低減化と需要者への情報提供が喫緊の課題であったことから,原因の検証や組織対応,浄水処理対応を展開し,水道水の利便性や快適性,信頼性の回復に努めた.水道水のかび臭障害に対するこれらの一連の対応について考察した.
近年,東京都の水源である多摩川では,かび臭原因物質2-MIBを産生する河床付着性藍藻Phormidium autumnaleに起因する問題が続いており,平成25年8月には浄水場の原水で220ng/Lという極めて高い濃度を記録している.夏季の高水温期には少ない藍藻数でも河川中の2-MIB濃度は高くなる一方で,冬季の低水温期に藍藻が多数繁殖しても,2-MIB濃度はさほど高くならないことから,この藍藻の2-MIBの産生および放出は水温の影響を受けているものと推定された.浄水場における高濃度2-MIB除去対策として,水理模型実験を踏まえて,中次亜注入方式を導入したところ,粉末活性炭の除去効率が約2倍に改善された.
相模川水系を水源とする神奈川県営水道では,貯水池である相模湖(相模ダム)や津久井湖(城山ダム)で繁殖した藻類が,浄水処理や水質に悪影響を及ぼす「生物障害」が問題となっている.これらの生物障害のなかで最も深刻なのは,かび臭による異臭味障害である.近年このかび臭障害が,上流の水源湖沼だけでなく,相模川本川で発生する事例が観察されている.本報では,相模川水系における異臭味障害について概説し,さらに,相模川本川中流域における湖沼性障害生物の繁殖事例と河床着生・付着藻類の調査結果について報告する.
本研究では,生活環境で発生する不快臭の成分としてフェニル酢酸とノナン酸を取り上げ,各成分の濃度に対するヒトの感じ方の差について検討し,臭気特性を明らかにすることによって,居住空間に求められる臭気基準値を提案することを目的とした.嗅覚閾値を三点比較式臭袋法で求めた結果,フェニル酢酸で7.3×10-7(ppm),ノナン酸で7.1×10-4(ppm)となった.次に,被験者138名に対し4段階の臭気濃度に調製した試料を用いて官能評価を行った結果,両成分において臭気濃度が上昇するにつれ臭気強度と不快度が高くなる傾向が見られた.また,SD法によるにおい質評価の因子分析の結果について,臭気濃度の上昇に伴い不快性,重厚感,刺激性が増す傾向が見られた.さらに,臭気基準値となる非容認率20%での臭気指数は,フェニル酢酸で17,ノナン酸で21となり,既往研究のトイレ臭などと比べて両成分ともに高く,空間中に存在したとき高濃度でも許容できるにおいであることが分かった.