牛ふんの堆肥化過程で発生する高濃度臭気を低減化する堆肥脱臭を,臭気規制が導入されている地域に適合させるため,酸・アルカリ水溶液を噴霧する2次処理と組み合わせて高度化した.その結果,2次処理において1%濃度の苦土石灰懸濁液を噴霧することが,臭気低減効果やランニングコストの面から有利であった.本脱臭システムにより臭気指数は元臭の28から脱臭処理後の12程度まで減少し,低減率は58%であった.
堆肥化処理のロータリー式攪拌・切り返し作業時に堆肥化施設から発生する粉じんとアンモニアの拡散を抑制するため,攪拌・切り返し装置を局所的に密閉化した場合と,密閉化した中で水を噴霧した場合とについてその効果を検討した.攪拌・切り返し装置を密閉した場合は,密閉化しない場合に比べて拡散した粉じん量が54%,アンモニア量が48%減少した.さらに,密閉化した中で水を噴霧すると,減少量はそれぞれ58%,52%に高まったがその効果はわずかであった.
畜産臭気対策における現地指導の支援ツールとして,臭気マップ作成手法を考案した.
畜環研式ニオイセンサで測定した農場内各ポイントの臭気指数(相当値)を,その値に応じて色分けし,地図上に表示することで農場内の臭気発生状況を一目で確認できる.データ記録間隔を同期した畜環研式ニオイセンサとGPSロガーを携帯して,農場内の臭気を測定し,記録したデータをパソコン上の臭気マップ表示シート(Microsoft® Excel)に取り込むことで,迅速に臭気マップを作成することができる.
悪臭抑制型飼料と期待されるアミノ酸バランス改善飼料の堆肥化処理過程における臭気抑制効果を総合的に検証した.慣行飼料に比べて生産物品質にも生産コストにも影響せず,環境負荷を軽減した臭気対策として提案できる.バランス改善飼料区では,堆積型堆肥化処理時のアンモニアの低減効果が認められ,茨城県では飼料用米と豆腐粕を原料とした発酵飼料を添加したオリジナルバランス飼料,山梨県ではバランス改善飼料をベースにブドウ粕由来の乳酸菌を添加することによる悪臭低減効果が検討された.