においの評価には,大別して静的評価と動的評価の2つの評価手法があるが,両評価手法を併せ持つような多成分の同時動的評価手法が求められている.我々は,アンビエントイオン化法による質量分析計を用いた多成分の同時動的評価手法の検討を行った.検討の結果,揮発成分導入デバイスを併用することで,気体試料を安定的に検出し,検出感度を向上させることができた.この手法を用いて食品のにおいを測定したところ,官能評価を支持するデータが得られた.
近年では,食品のフレーバーリリースに対する関心が高まっている.これは,喫食時の感覚がガスクロマトグラフィーを用いて行われる香りの解析だけでは説明するのが難しいことが,その理由として大きい.ここでは,調理食品におけるスパイスの香り立ちという視点で,喫食時のフレーバーリリースについて,Direct analysis in real time質量分析システムを用いた計測事例を交えながら考えていきたい.また,フレーバーリリース計測データ解析手法に関する,新たな取り組みについても併せて紹介する.
均質化処理は,飲用乳の製造において重要な工程の一つである.均質圧力の程度が,牛乳とフレーバード乳飲料の官能特性と嗜好性,およびフレーバード乳飲料のフレーバーリリースに及ぼす影響について,分析型官能評価とRetronasal Aroma Simulator(RAS)を用いたGC-MS分析により調べた.その結果,牛乳とフレーバード乳飲料の官能特性と嗜好性,およびフレーバード乳飲料のフレーバーリリースは,均質圧力によって有意に影響を受けることが示されたので,本稿にて紹介する.
食品を食べている際に口腔から鼻腔へと抜けるレトロネーザルアロマは,食品の“おいしさ”に大きく寄与している.レトロネーザルアロマ生成時の食塊形成の過程には食品の変形,唾液との混和といった動的要因が多く,また,ヒトの咀嚼挙動は個人差が大きい.そこで,再現性のあるデータを得る有効な手法の一つである模擬咀嚼装置について紹介する.1986年初出の装置がバイアルの撹拌といった簡便な模擬咀嚼を行っていたところから,最新のコンピューター制御された圧縮動作による食塊形成が可能な装置までを紹介する.
近年,小規模の発生源である調理臭の苦情が多くなってきているが,この苦情の対応が困難を極めている.そこで,焼肉臭・カレー臭について,噴霧水,活性炭,常温触媒について脱臭性能を調査した.噴霧水のみでは脱臭効率が低く,活性炭や常温触媒を組み合わせることによって脱臭効率を高めることが出来る可能性が明らかとなった.また,調理臭によって効果的な脱臭法が異なる可能性があることが明らかとなった.
多様なにおいに対応でき,再現性よくにおいを評価できるにおい表現語の選定基準を検討するため,アンケート調査とにおい質評価実験を行った.まず303表現語を抽出し,これらに対してにおい表現語としての適性に関するアンケート方式での調査と,80種のにおい試料のにおい質評価実験を行った.その結果,におい質表現としての理解しにくさ,使用頻度,評点のばらつき,および表現語間の相関関係に着目することが有効であることが示唆された.
生活空間の不快臭気はアルデヒド類に起因する場合が多い.本試験では,アルデヒドをカルボン酸に変換できる酢酸菌(Gluconacetobacter hansenii)酵素に着目し,これを空気清浄機中の水に分散させ,アルデヒド類を含む試験空間で運転した.この結果,試験に用いたほぼ全てのアルデヒド類が明確に低減し,アルデヒド臭も明らかに低減していた.従って,酢酸菌酵素を消臭剤へ活用することで,不快な室内臭気の低減が期待できる.
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