におい・かおり環境学会誌
Online ISSN : 1349-7847
Print ISSN : 1348-2904
ISSN-L : 1348-2904
53 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
じんちょうげ
特集1(Covidによる嗅覚感度低下メカニズムと生理)
  • 三輪 高喜
    2022 年 53 巻 3 号 p. 170-176
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/05/26
    ジャーナル フリー

    嗅覚・味覚障害は新型コロナウイルス感染症に特徴的な症状であるが,その発生頻度ならびに病態はウイルス株の変異により変化を遂げている.嗅覚障害の発生には,嗅上皮に存在するSARS-CoV2のスパイク蛋白の受容体であるアンギオテンシン変換酵素2が関与している.嗅覚障害の多くは数週で改善するが,数か月以上にわたり症状が遷延する症例も存在し,そのような症例では異嗅症が患者を悩ませる.嗅覚障害が遷延する症例では,障害が嗅神経細胞まで及び,感冒後嗅覚障害と同様の嗅神経性嗅覚障害となることが推測される.

特集2(嗅覚感度の簡易測定)
  • 上野 大介
    2022 年 53 巻 3 号 p. 177
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/05/26
    ジャーナル フリー
  • 鄭 雅誠, 森 恵莉
    2022 年 53 巻 3 号 p. 178-182
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/05/26
    ジャーナル フリー

    本邦の嗅覚診療で現在保険適応となっている嗅覚検査は基準嗅力検査と静脈性嗅覚検査の2つである.静脈性嗅覚検査は1960年に提唱され,世界でも最古の部類に属する長く続けられている嗅覚検査であり,静脈ににおい物質を注入する,日本独自の検査方法である.これに対してにおい物質を嗅がせる嗅覚検査は,長らく各施設ごとに独自の形式が取られており,1956年に統一された聴力検査法と比較して,嗅覚検査の統一は遅れていた.嗅覚検査の統一基準を作るべく,1971年に研究班が設置され,日本人になじみのある「基準臭」が1973年に発表された.1978年には今日臨床で使用されている基準嗅力検査が制定され,以降40年以上にわたって静脈性嗅覚検査とともに,嗅覚の保険適応検査として使われ続けている.その後,基準嗅力検査の問題点である室内空気の汚染の改善や検査の定量化を目的に噴射式基準嗅力検査が1996年に発表されたが,検査装置製造中止のため現在は入手困難である.また,海外では検査手順簡略化や室内空気汚染対策としてマイクロカプセル技術を用いた嗅覚検査UPSITが1984年に発表され,本邦でも同技術を使用したスティック型嗅覚同定検査が2006年に発表された.スティック型嗅覚同定検査はマイクロカプセルに内包されたにおい物質をスティック状に加工し,パラフィン紙にその都度塗布して検査を行うが,その煩雑性と不定性,冷蔵保存の必要があったことから,2008年には紙を擦るだけのカード型嗅覚同定検査が発表された.

    このような嗅覚検査を組み合わせて臨床では嗅覚診療を行うが,嗅覚検査結果と患者本人の自覚的な嗅覚症状が乖離することも多く,嗅覚専門外来では自覚症状の評価のためにVAS : visual analogue scaleや日常のにおいアンケートも併用されることが多い.近年では好酸球性副鼻腔炎やCOVID-19の増加から,嗅覚診療の注目度や重要性も上がってきている.

  • 満山 知恵子, 松脇 由典
    2022 年 53 巻 3 号 p. 183-189
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/05/26
    ジャーナル フリー

    嗅覚はにおいを感じる化学感覚であり,これに異常が生じた状態を嗅覚障害という.嗅覚検査は自覚的検査と他覚的検査に分類されるが,現在臨床で用いられているのは自覚的検査のみである.本稿では国内で行われている自覚的嗅覚検査について,T&Tオルファクトメーター,静脈性嗅覚検査,嗅覚同定検査などを中心にその方法と特徴について解説する.

  • 小早川 達
    2022 年 53 巻 3 号 p. 190-196
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/05/26
    ジャーナル フリー

    日本人のための嗅覚同定検査の開発について,黎明期から現在に至るまでの道程を紹介した.嗅覚同定検査では,被検査者に馴染みのあるにおいを用いる必要がある.そのため,日本人の日常生活臭の分類は,カード型におい提示具,スティック型におい提示具(製品名OSIT-J),Open Essenceの開発の礎となった.開発された嗅覚同定検査は,実用化され,医療現場などで活用されている.最後に,薬事承認に向けた現在の取り組みについて言及した.

研究論文
  • 藤岡 薫, 柳橋 泰生
    2022 年 53 巻 3 号 p. 197-204
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/05/26
    ジャーナル フリー

    人間の嗅覚による悪臭の測定方法で利用されている三点比較法では,人による嗅力の差異に起因する臭気指数の測定値への影響が懸念される.また,まぐれ当たりによる偶然の的中が3分の1の確率で生ずることによる影響も考慮する必要がある.さらに,環境試料および排出口試料により臭気指数の算出手順が異なり,同じデータであっても臭気指数の算出値が異なる.そこで本研究では,環境試料および排出口試料の臭気指数の算出手順に従い,嗅力分布および偶然の的中による臭気指数の平均および標準偏差への影響を計算し比較した.その結果,環境試料における臭気指数の算出で用いる正解率について現行の0.58は適切な値と言い切れない可能性が示された.また,排出口試料の算出手順で得られる臭気指数の値は,環境試料の算出手順で得られる臭気指数の値より変動が小さくなることが示された.

「におい」と私
研究室紹介
資料
におい・かおり広場
官公庁ニュース
会告
協会ニュース
feedback
Top