生活環境中のカビ臭や腐敗臭を例とし,実環境の臭気に寄与している主要成分を,官能評価を用いて明らかにすることを目的とした.生活環境から採取したサンプルA~Cから臭気を採取し,21種の臭気物質の試料と嗅ぎ比べ,臭気強度や臭気質などをパネル22人に評価させた.SD法の評価結果を用いて平均値プロフィールを算出した結果,AとBは「ホコリっぽい」「不快」などの評価値が高く,オクタン酸,ノナン酸と近く,Cは「はっきりした」などの評価値が高く,ステアリン酸,フェニル酢酸と類似していた.SD法の評価結果を用いてA~Cと臭気物質のパターン類似率を算出すると,0.946~0.999の範囲となり,いずれの組み合わせでもよく類似していることが分かった.A~Cに共通して類似率が高いのは,オクタン酸,ノナン酸,ウンデカン酸,フェニル酢酸であり,これらの臭気物質が本研究で対象とした不快臭に寄与していることが分かった.
本研究では,非侵襲採取が可能でより安定な尿試料を対象とし,スニッファーマウスを2匹ずつ,Y 字迷路試験で3ペアのヒト尿(肺がん患者対健常者)の一方を正答率80%以上で識別できるまで訓練し,訓練に用いていない肺がん患者を尿臭で区別できるか調査した.訓練したスニッファーマウスは,肺がん患者と健常者(各1名)を,80%以上の正答率で識別した.この結果は,ヒト肺がんに特徴的な尿中揮発性マーカーの存在を支持する.
本研究では,嗅覚同定能力の個人差と加齢が嗅覚刺激による自伝的記憶の想起に及ぼす影響について検討を行った。実験では若年者,高齢者を嗅覚同定能力検査に基づいて嗅覚同定能力高群と低群に分け,嗅覚刺激による自伝的記憶の想起を求め,記憶の鮮明度等の評定を求めた。その結果,若年者において嗅覚同定能力が高い群がそれが低い群に比べて記憶の鮮明度が高くなったが,高齢者ではその差が確認されなかった。
花様の香りを発揚させた「香り緑茶」の‘やぶきた’,‘さやまかおり’,‘香駿’の3品種の香気特性を,成分分析とアンケート調査により評価した.ジャスミンラクトンは‘やぶきた’に比べ‘さやまかおり’と‘香駿’に,‘やぶきた’に比べ‘さやまかおり’と‘香駿’に対して花様の香りと甘い香りを強く感じるとする回答が有意に多かった.また,‘香駿’の香り緑茶に対する嗜好性は‘やぶきた’に比べ有意に高かった.
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