特定悪臭物質のにおい表現として,アンモニアは「し尿のような」,硫化水素は「腐った卵のような」など決まった表現が使用されている.しかし,日常で用いられる言葉は,時代とともに変化しており,においの表現に使用されている言葉からそのにおいの質がイメージしにくくなっている可能性がある.そこで本研究では,各特定悪臭物質に関する適切なにおい表現の検討を行った.臭気強度3程度に調整した22種の特定悪臭物質のにおい試料を大学生42名に提示し,臭気強度,嗅いだ経験と250のにおい表現に対する合致度を評価させた.その結果,メチルメルカプタン,硫化水素,トリメチルアミン,イソブチルアルデヒド,イソ吉草酸の5物質のにおい質は,従来表現と合致度していると判断された.5物質以外では,「個性的な」「こもっている」などの抽象的な表現や,従来表現とは異なる事物・状態表現が認められた.本研究では,におい表現の合致度に影響する要因の1つにその時代の背景,社会環境があることが推察された.
微細藻類イカダモ(Scenedesmus sp.)は食品や畜産飼料としての活用が期待されており,大量培養時に細胞の健康状態を含めた培養状況を簡易に判別できる技術が求められている.本グループではイカダモが発する“におい物質”を利用した判別技術である“においセンシング培養(Odor Sensing Cultivation:OSC)”の開発を進めている.本研究では,イカダモ培養液から放散される“においの変化”を,嗅覚官能評価および化学分析によって経時的に追跡することを目的とした.嗅覚官能評価では,クロロフィル蛍光値相対値とにおい指数相対値の経時的変化に相関関係がみられた.また感知された“甘みのある”というにおいの印象はイカダモの細胞分裂活性の高さを示しており,イカダモの健康状態の指標物質として利用可能であると考えられた.GC-MSノンターゲット分析で検出された7種のVOCsは収穫適期を示しており,可搬型GC-MSや匂いセンサー等による状態判別の指標物質として利用できる可能が示唆された.
芋焼酎(25度)の20倍濃縮液(酢酸エチル/アセトン=1:1溶液)を5.0 mL間隔でGPC分画した.GPC分画液はGC-MS分析で香気成分の同定と定量を行ない,検出された各香気成分は溶液閾値を求めた.次に,香気成分の濃度を溶液閾値で除してGPC分画液に含まれる成分のそれぞれの香気強度を算出し,芋焼酎の香りに寄与している香気成分を推察した.3種類の芋焼酎に含まれる香気成分の種類と香気強度を調べたところ,キンモクセイのような華やかな香りの芋焼酎Dは,芋焼酎Eと芋焼酎Fに比較してLinalool,β-Ionone,およびVanillinの寄与が大きかった.また,類似した香りの芋焼酎Eと芋焼酎Fについて比較したところ,芋焼酎EはPhenethyl alcoholの寄与が大きく,芋焼酎FはVanillinの寄与が大きかった.
香料分子であるオクタナールを用いて合成したプロフレグランスは,シクロデキストリン(CD)との包接複合体を与えた.酸水溶液中において,α-CDとの包接複合体は香料の徐放を促進したが,β,γ-CDとの包接複合体は香料の徐放を抑制した.CDの空孔サイズやプロフレグランスとCDの相互作用が,包接複合体におけるプロフレグランスの徐放および加水分解に影響していると考えられる.
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