産業保健法学会誌
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1 巻, 1 号
第1回学術大会 特集号
選択された号の論文の47件中1~47を表示しています
大会長講演
  • 三柴 丈典
    2022 年 1 巻 1 号 p. 12-24
    発行日: 2022/07/10
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    現在、産業保健の分野では、精神疾患や生活習慣病など、責任の所在の判定、適切な予防方法の解明が難しい問題が沢山起きている。病のせいか性格のせいかが不分明なトラブルも生じている。こうした問題を解決するためには、単に労使を対立させ、利害を調整するのみでは足りず、労使やその他の関係者(病院、リハビリ機関、家族など)を資源とみなし、それらの連携を図るための法制度を考案する必要もある。また、職域には、それ以外にも複雑なリスクが多くあり、増加傾向にあるが、労働安全衛生法は、その全てに対応できていない。そこで我々は、法の知識をベースとし、関係する多分野の学問の知恵を結集し、そうした課題の解決を図るための学究活動を行うこととした。 その最大の特徴は、問題解決志向と予防志向にある。従来の法学は、既に生じた紛争の事後的な解決を志向してきた。本学会は、そこで培われた知見を基礎とするものの、関係するさまざまな分野の知見を総合して、産業保健に関する法的な問題の解決と防止を図る。最先端の学問研究から、現場的課題についての実践的な議論までを誘う。教育活動では、産業医など産業保健の専門職への実践的な法教育を重視する。 この学会の創設には、厚生労働省をはじめとする多くの団体、個人の協力を得た。
招待講演
  • 社会心理学の視点から
    村本 由紀子
    2022 年 1 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2022/07/10
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    組織が新たなルールや制度を導入したとき、従業員がその新制度に即応し、活用することは必ずしも容易ではない。従業員の心理や行動は、明示的な制度よりも目に見えない職場の文化に規定されがちであり、文化には、環境が変わっても容易には変化しがたいという特質が備わっているためである。特に留意すべきは、旧態依然とした文化が「多元的無知」によって維持されている場合である。本稿では、多元的無知に関する社会心理学の研究例を紹介しながら、組織における制度と文化の関係について考察する。
特別講演
  • ―職業病の医学基準と法学基準の実務的観察―
    中嶋 士元也
    2022 年 1 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 2022/07/10
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    医療関連紛争事項をめぐっては、実定法上、行政審査(因果律につき医学基準が主流)、司法審査(因果律の基準がカオス=混とん状態)、民事裁判(因果律の法学基準が圧倒)が用意されている(ただし、医療過誤と薬害の救済は民事裁判のみ。ADRは除く)。それら紛争解決システムにはそれぞれの制度的存在理由とそれぞれの実務的安定志向があり、「原因と結果」(因果律)についての一律的な判断規範の設定には困難が伴う。例えば、行政審査の裁量問題も法定公害(都道府県知事の処分)と労働災害(国の労働基準監督署長の処分。審査官の審査制度―審査会の再審査制度あり)では差異があっても不思議ではなく、それはいかなる理由からくるか考察の対象となる。 しかし、因果律の肯認・否認に当たり、少なくとも労災補償制度上、司法審査(裁判所)は、行政審査の行った医学基準による決定(行政処分)に対する違法判断(裁量権の逸脱)を審査すべきであり、そこにおいて安易に民事裁判上に現在通用している枠組み(因果関係の濃淡と帰責性の濃淡の混合による相当な「賠償額」の確定)を労災「補償額」(定率給付)の決定に流用するような手法は取るべきではない
教育講演②
シンポジウム①
  • 〜どうすればよかったのか、これからどうすべきか〜
    吉田 肇
    2022 年 1 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 2022/07/10
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    本事件は、職員の復職の可否について、産業医が、休職事由とされた精神障害は寛解をしているが、他の職員とトラブルが発生する可能性が高い等と判断して復職不可としたところ、裁判所は、産業医の判断は休職事由とは無関係として復職を認めたものである。シンポジストからは、産業医は、労働能力の回復の程度を踏まえて復職の可否を判断すべきであり、職場の人間関係等の管理部門が行うべき事項により判断すべきではない等の見解が示された。議論全体を通じ、主治医と産業医、職場、社労士、弁護士等が情報を共有するとともに適切に連携し、その役割を果たすことが重要であることが示された。
シンポジウム② 化学物質管理の法対策 〜アスベスト訴訟、胆管がん問題を踏まえて〜
シンポジウム③ テレワークにおける健康管理政策と法
連携学会との共同シンポジウム①【日本産業ストレス学会】
連携学会との共同シンポジウム②【日本産業精神保健学会】
  • ~精神障害者を念頭に~
    荒井 稔, 丸山 総一郎
    2022 年 1 巻 1 号 p. 109-111
    発行日: 2022/07/10
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    本シンポジウムでは、2名の司会者から、労災保険における精神障害者の長期療養増加の現状に対して、問題提起がなされ、その解決に向けた復職支援と療養の在り方を明らかにする趣旨が示された。そのあと、3名の演者から、①医学的知見に基づく精神障害者の復職支援と療養の在り方について、②行政的視点から復職支援と療養の在り方について、③日独の法制度の異同の検討を通じた給付適正化の在り方について報告がなされた。さらにシンポジストの発表を踏まえて、地方労災医員の立場からの指定発言に続き総合討論が行われた。これらのセッション全体を通じて問題点や課題の指摘はもとより、今後の対策まで議論され、医学・法学・行政の公正的調和をいかに図るかを問う視点が共有された。
  • 黒木 宣夫
    2022 年 1 巻 1 号 p. 112-115
    発行日: 2022/07/10
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    精神障害の労災請求件数は毎年、過去最高を更新し、2019年度は2060 件(前年度比240件増)、実際に労災認定された件数は2019年度509件(前年度比44件増)で認定件数も増加した。特に「自殺ではない精神障害」の労災認定件数が急増しており、「自殺ではない精神障害」が労災認定された件数は,過去2019年までに4702件であり、全認定件数6067件の77.5%を占めていた。労災認定後の長期療養に関する調査を報告し、労災認定後の長期療養事例(自験例)を提示、労災医療の問題点と課題に関して検討した。
  • 児屋野 文男
    2022 年 1 巻 1 号 p. 116-119
    発行日: 2022/07/10
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    業務上の強い心理的負荷によって精神障害を発病した場合には、業務上の疾病として療養、休業などに必要な労災保険給付がなされる。そして、労災保険の目的のひとつには社会復帰が掲げられており、なるべく早い職場復帰が望まれる。長期に療養をしている者については、主治医の意見を聞きつつ療養とアフターケア制度を利用するなどにより早期の職場復帰を目指す。
  • -ドイツ労災保険組合(DGUV)・健康保険組合(GKV)から得られた情報-
    三柴 丈典
    2022 年 1 巻 1 号 p. 120-128
    発行日: 2022/07/10
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    労災保険の受給期間が長引く精神障害者に対して、ドイツではどのように対応しているのか。ドイツの労災保険制度と健康保険制度に関する調査から、以下の事柄が判明した。 a) 労災保険等の社会保険受給者にも快復(社会参加能力の獲得・回復)のための協力義務が課され、それを履行しなければ、合理的な理由がない限り、保険給付が停止され得る。 b) 協力義務には、①正確な事実の申告、②医学/心理学的検査の受検、③受診と治療、④部分的な労働参加等が含まれる。保険者の判断により、リハビリへの参加も求められる。 c) 医師による要休業の診断書は、原則として向こう2週間分しか発行できず、保険給付もその期間のみ行われる。こうして、こまめに給付の必要性が判断される。 d) 労災保険の休業補償は、78週までしか支給されず、期間中に改善しなければ、改めて審査を受け、障害補償が適用される。 このようにして、少なくとも、特に労災保険法上の休業補償について、受給期間の不当な長期化に歯止めがかけられている。しかし、社会保険は被保険者の権利という彼国の法原則に基づき、保険給付の制限には、相応の裏付けが求められる。
  • 山本 和儀
    2022 年 1 巻 1 号 p. 129-132
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    精神障害の労災保険制度において、障害認定されることなく療養(補償)給付・休業(補償)給付を受給し続け、復職できていない長期療養者が増加している問題がある。その原因として、障害認定と判定される状態である不全治ゆや不全寛解状態を「治ゆ(症状固定)」と呼ばせていること、治ゆ認定されないと休業補償給付が続くこと、休業(補償)給付と障害(補償)給付の格差が大きいことが、主要な3つの要因として考えられることを論じた。療養期間に応じた休業(補償)給付の段階的減額や手厚い障害(補償)給付、障害認定後の療養(補償)給付の継続などを総合的に検討することが必要であると指摘した。
連携学会との共同シンポジウム③【日本職業・災害医学会】 海外勤務者の健康問題と労災事例の検討
緊急企画 新型コロナウイルス感染症の労務問題と法
  • 野見山 哲生, 向井 蘭
    2022 年 1 巻 1 号 p. 145-149
    発行日: 2022/07/10
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    日本産業保健法学会では、第1回学術総会開催にあたり、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が企業関係者に及ぼす影響が大きいことから、新型コロナウイルス感染症の労務問題と法について、企業の従業員等が新型コロナウイルス感染症に関して発生する各種問題のうち、休職期間の延長要求・出社拒否、PCR検査の義務付け、コロナと損害賠償・懲戒処分・人事考課、休業と賃金・休業手当(直接雇用及び派遣社員)、在宅勤務と安全配慮義務について、シンポジウム形式で専門家による講演、講演後の総合討論を行った。総合討論においては、ワクチン接種義務付けの可否、企業によるPCR検査も含む安全配慮義務の内容、休業手当、企業による新型コロナウイルス感染症対応の意思決定手続、在宅勤務と安全配慮義務について議論がなされた。
  • 川村 孝
    2022 年 1 巻 1 号 p. 150-155
    発行日: 2022/07/10
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    新型コロナウイルス感染症は、ウイルス変異により強感染化と弱毒化が進行している。PCR検査は、感度は高くないため非感染の証明はできず、活性の有無にかかわらず検出されるため感染性も表さない。ワクチンの有効期間は長くなく、変異に十分対応していない。飛沫感染が主体であり、人が触れたものには触れないことが重要。4回発令された緊急事態宣言は無効であった。医療の強化は喫緊の課題であり、本演題で具体策を提示する。
  • ~休職期間の延長要求・出社拒否を題材に~
    井上 洋一
    2022 年 1 巻 1 号 p. 156-161
    発行日: 2022/07/10
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    新型コロナウイルス感染症の労務問題のような、未知のリスクに基づく問題やエビデンスが明確でない課題に対しては、合理的なコンセンサスに基づく対応が必要となる。産業保健分野の法的責任は、従業員・使用者・外部環境の総合考慮により判断される。そのため、この3事情にフォーカスしてリスク分析や責任分析のルールをつくることが重要である。コンセンサスの合理性を担保するためには、専門家・多職種の適切な連携が求められる。
  • 吉田 肇
    2022 年 1 巻 1 号 p. 162-168
    発行日: 2022/07/10
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    新型コロナ対応で従業員を休業させた場合には、休業させた理由により、使用者が正当な理由なく労務の受領を拒否した場合には賃金全額(民法536条2項)を、使用者の経営、管理上の障害による休業の場合には休業手当(労基法26条)を支払う義務がある。感染拡大を防止する必要性の高い業務について、ワクチン未接種者に対し就労の条件としてコロナ検査による陰性証明を求める就業規則は、労働者の不利益に十分配慮すること等により、合理性が認められる。
  • ~PCR検査等の義務付け、コロナと損害賠償・懲戒処分・ 人事考課・ワクチン接種等を中心にして~
    岩出 誠
    2022 年 1 巻 1 号 p. 169-177
    発行日: 2022/07/10
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    本稿は、オミクロン株の猛威で、予想以上の規模で来襲した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第6波や、今後も次々と襲来するであろう変異株や新たな感染症に備えて、コロナ第1波~第5波までに得た貴重な教訓を活かすべく、コロナ禍が引き起こし、顕在化させた様々な労働法上の課題のうち、PCR検査、損害賠償、懲戒処分、人事考課、ワクチン接種等を中心にして、できる限り裁判例等に即し、最近公表され始めたコロナ関連の最新裁判例をも紹介しつつ、検討するものである。
  • 淀川 亮
    2022 年 1 巻 1 号 p. 178-182
    発行日: 2022/07/10
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    使用者には、在宅勤務をする従業員の健康の保持のため、労働安全衛生法令により求められる措置を講じると共に、在宅勤務をする従業員の健康状態を把握し、その内容・程度等に応じて、作業の転換や内容の軽減措置等を講じることが、健康・安全配慮義務の履行として求められる。その際、国や学会等が公表している指針やガイドラインについては、産業医等の適切な専門家の関与の下、遵守または参考にすべきであろう。使用者が、民事上の安全配慮義務を尽くさなかったために、在宅勤務をする従業員がうつ病になったり、エコノミークラス症候群になったりする等の健康被害を受けるようなことになれば、損害賠償等の責任を負うことになる。
模擬裁判
関係学問の最前線①(精神医学)
関係学問の最前線②(労働法学・比較法)
関係学問の最前線③(産業医学)産業保健活動の成果とは何か、 それは測れるのか?
ワークショップ①
ワークショップ③
  • ~それって法的に大丈夫?~
    神田橋 宏治, 守田 祐作, 白田 千佳子, 内藤 喜仁, 石澤 哲郎
    2022 年 1 巻 1 号 p. 265-269
    発行日: 2022/07/10
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    コロナ禍となった2020年以降テレワークが急速に広がり、これに伴い産業保健分野でも遠隔技術が利用されている。本ワークショップでは、産業医、産業保健師、法律家が一堂に会し、主に遠隔面談に関するプライバシー確保と責任の所在の問題に対して法的考察を加えた。その結果、社員に対して通達の内容を丁寧に案内する、適宜労働者の同意を得ながら進める、ルールの明文化などの手段が紛争予防として大切であることが明らかとなった。
ワークショップ④
  • 加藤 憲忠, 村本 浩, 豊澤 康男, 竹田 透
    2022 年 1 巻 1 号 p. 271-279
    発行日: 2022/07/10
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    現在、促進されている副業・兼業・フリーランス等の働き方における発注者・委託者の責任について、各シンポジストからご報告を頂き、下記のような見解が提示された。 ・ 副業・兼業・フリーランス等の新しい働き方については法的に未整備な部分が多く、特にフリーランスに対する安全衛生には十分な議論が行われていない現状がある。 ・ DX(デジタルトランスフォーメーション)の一つであるフロントローディングという手法は、設計段階で安全配慮を履行すると同時に現場の生産性向上にも寄与する画期的な取組みで、建設業以外の業界にとっても大きなヒントを秘めている。 ・ 雇用類似労働者への産業保健サービスの展開は技術的には可能だが、それを可能とするために解決しなければならない法的課題がある。 本シンポジウムでの議論を通じ、今後ますます拡大するであろう副業・兼業・フリーランス等の働き方において、発注者・委託者の責任範囲の明確化と労働者の健康確保措置は喫緊の課題であるという示唆が得られた。
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