産業保健法学会誌
Online ISSN : 2758-2574
Print ISSN : 2758-2566
1 巻, 2 号
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  • -特集の企画趣旨と個別報告の骨子-
    鎌田 耕一
    2022 年 1 巻 2 号 p. 1-2
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    テレワークは、当初、新型コロナウイルス感染拡大により緊急避難的に導入されたが、現在、以前のように行動制限、出勤自粛の措置が要請されていないため、中小企業を中心に、緊急避難的に導入されたテレワーク勤務から従来の出勤スタイルへの揺り戻しがみられる。他方で、一部企業においては、テレワークを社員のウェルビーイングを改善する働き方と位置づけ、テレワークを通常の勤務形態とするなどの先進的な取組みを行っている。現状は、テレワークに関して相反する潮流が混在しているといえる。 こうした状況の中で、本特集は、テレワークを持続可能な将来の働き方の一つと位置づけたうえで、その定着化にむけた取組みとそこから浮かび上がる課題、とくに健康管理・労務管理上の課題と法政策の在り方について、5つの論文が様々な観点から検討している。
特集:テレワーク定着化にむけた健康管理・労務管理上の課題と法
  • 神田橋 宏治
    2022 年 1 巻 2 号 p. 3-9
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    新型コロナウイルス感染症の対処策として急速にテレワークが導入された。テレワークの普及を医学的観点から見た時、最大の問題点は労働者に与える健康影響が未知であることである。最近論文が続々発表されているが①コロナ禍の影響とテレワーク固有の影響の区別の困難さ、②日本固有の影響がみられること、③ほとんどが横断的研究であることなどの問題点を抱えている。それでも少しずつ産業保健的管理方法は進歩してきている。
  • ―COVID-19流行下の影響と、これからにむけて―
    大河原 眞
    2022 年 1 巻 2 号 p. 10-14
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    本稿では、コロナ禍に伴う在宅勤務をめぐるこれまでの状況を整理し、在宅勤務が国内の労働者にどのような影響を与えたのかについて、筆者の所属する産業医科大学の7講座を中心としたプロジェクトチームで行ったCOVID-19流行下における働き方の変化と労働者の健康に関する調査(CORoNaWork プロジェクト)やその他の研究の中から、在宅勤務に関する研究をいくつか紹介するとともに、今後のCOVID-19終息後の在宅勤務を含むテレワークについて私見を述べる。
  • ―テレワークによる働き方の見直し及び従業員の we-llbeing 向上と超少子化と 超高齢化社会を迎える働き方について―
    玉山 美紀子
    2022 年 1 巻 2 号 p. 15-23
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    COVID-19によりテレワーク導入が加速化し、すでに3年が経過した。パンデミックが落ち着いてもテレワークの継続が定着しつつある一方、在場勤務に戻す企業も多くある。テレワークにより、働き方に関わる法的課題や、人事部門として課題と認識する内容が浮上してきた。よって「テレワークの必要性と定着への課題」、「テレワークによるwell-being 向上」及び「サスティナブルな経営の手法の1つとして継続的に考えるべき内容」について記述する。
  • ―制度利用に対する公正知覚に影響する要因―
    細見 正樹, 藤本 哲史
    2022 年 1 巻 2 号 p. 24-32
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    本研究は、ワーク・ライフ・バランスの研究および衡平理論に基づき、在宅勤務制度の利用者が出現した場合に、どのような職場環境であれば同僚従業員の公平知覚が高まるか研究した。質問紙調査を分析した結果、職務自由度および仕事の複雑性は、在宅勤務制度の利用者に対する公正知覚を高めた。また、職務の相互依存性が高いと、職務自由度と公正知覚の関係および仕事の複雑性と公正知覚の関係を強めた。
  • 末 啓一郎
    2022 年 1 巻 2 号 p. 33-42
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    本稿では、在宅テレワーク勤務における労働者の健康問題に関する法的な問題を整理する。まず、労働者の健康問題に関する使用者への法的な規制の整理を行い、次にその具体的な適用場面について検討を行う。すなわち、公法的な規制を中心に、①作業環境の問題、②労働の量の問題、③労働の質の問題について検討を行い、最後に④私法上の責任問題について検討を行うこととする。
第二次出版
  • —日本の状況と展望—
    三柴 丈典, 倉重 公太朗, 中澤 祥子
    2022 年 1 巻 2 号 p. 43-67
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    日本の労働関係法は、一般的にソフト・ローであり、ギグワークに関する法制度も不十分/もどかしいが、独自の趣旨を持つ様々な法律が課題を包囲し、社会学的な力学(就労者や消費者の事業者への信頼等)と共に事業者の行動を監視している。ルールの形成過程で経営者との合意を重視する理由の1つは、ルールの策定後、経営者にそのルールを確実に履行させることにある。多面性と柔軟性の面では、国際的に一定の参照価値を持つようにも思われる。  日本の主要な個別的労働保護法(労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法、労災補償保険法)の適用範囲(scope)は、ギグワークを適切にカバーできていない。柔軟な解釈にも限界がある。集団的な労使関係法(労働組合法)なら、適用範囲に入る可能性がある。適用されれば、使用者への団体交渉の強制により、安全衛生について協議できる。労働安全衛生法には、一部にリスク創出者管理責任負担原則を反映した規定があるし、司法の解釈と法改正により、徐々に適用範囲が拡大されているが、全てのギグワークのカバーは難しい。内職者(家内制手工業者)用の家内労働法は、仕事の委託者と受託者(内職者)の双方に種々の安全衛生措置を課している。適用業務が限られているが、制定の背景(雇用者としての責任逃れの防止等)の共通性からも、改正すれば適応する可能性がある。民事上の安全配慮義務は、かなりの程度、リスク創出者管理責任負担原則を具体化しており、ギグワークへの適用可能性が最も高い。しかし、プラットフォーマーとギグワーカーの間に、勤務条件の設定や支配管理可能性、事実上の指揮命令関係など、労災(損害)の発生を予見でき、管理できる関係がなければならない。経済法では、中小企業等協同組合法が、個人事業主の連帯と取引先との交渉の法的根拠を提供しているが、殆ど活用されていない。  このように、直接的な規制は乏しいが、重大な脱法的問題が生じれば、裁判所が、関係法令の趣旨を汲み、安全配慮義務などの柔軟な解釈によって、救済を図り、その後、立法に結びつくだろう。今後の立法で、プラットフォーマーらに課すべき基本的な措置は、リスク調査と調査結果のギグワーカーらへの提供、集団的交渉への誠実な対応、国が行うべき措置は、ギグワークに伴う一般的なリスクと良好な対応策の調査と情報提供等となるだろう。中小企業等協同組合法で保護された協同組合が、メンバーの面接等を担当する産業医を選任し、その産業医が必要と認める場合、委託者らに対して、当該就労者の就労条件の改善のための働きかけを図るようなスキームも求められる。なお、産業衛生学等から、ギグワークに伴うリスクが指摘されているので、今後の立法はもとより、安全配慮義務の解釈、プラットフォーマーとギグワーカーらの義務的交渉等での活用が望まれる。
寄稿
  • 吉田 肇
    2022 年 1 巻 2 号 p. 68-76
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    日本の職域における新型コロナ感染対策では、法的な義務として強制することな く、主に協力要請や勧奨といった形で自主的対応が求められ、解決が図られてきた。 しかし、その過程では多くの労務問題が発生した。  本稿では、厚生労働省・令和3年度労災疾病臨床研究事業費補助金「職域におけ る総合的感染症予防対策に資するガイドラインの作成、体制整備、ツールの開発に 関する研究」での研究活動をベースに、主に①ワクチン接種・コロナ検査に関する 使用者の業務命令権、未接種者に対する配転命令権等の根拠と限界、命令違反等の 効果、②新型コロナウイルスの感染拡大と労働者の就労義務、在宅ワーク請求及び 使用者の安全配慮義務、について報告する。
判例紹介/判例研究
  • 林 剛司
    2022 年 1 巻 2 号 p. 77-96
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    Y 組合に総合職として勤務しているX が、統合失調症による休職期間中、Y 組合復職の申し出を二度行ったが、いずれも認められず、その後休職期間満了により退職扱いとされたことにつき、違法無効である旨訴えた事案である。判決では、X の請求はいずれも理由がないとして棄却しており、主治医等は復職可能と判断したものの、休職期間満了での退職扱いが有効とされた日本漁船保険組合(東京地裁 令2.8.27判決)を取り上げ、解説する。
文献紹介
労働行政の動向
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