近年の研究報告では,自閉症的行動特性は一般母集団内でなめらかな連続分布を示し,知的水準 や自閉症スペクトラム(ASD)の診断に関わらずその特性を多く持つ群では,情緒や行為面のいわゆる精神 症状の合併によって適応が悪いことが指摘されている。本研究では,全国の小・中学校通常学級の一般児童・生徒を対象とした大規模調査を行い,自閉症的行動特性と合併精神症状との関連について検討した。 標準化の完了した質問紙に対する24,728 名分の保護者回答について解析した結果,自閉症的行動特性の程 度と情緒・行為の各問題には有意な相関関係があり,自閉症的行動特性を多く持つ群ほど精神医学的症状 の合併する割合が高いことが示された。またASD 診断閾下となるような軽微な特性を持つ子どもの場合に も精神症状の合併リスクが高いことから,学校現場において教育的支援のみならずメンタルケアのニーズが高い実態が明らかとなった。
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