SCERTS モデルは、発達論を基盤にした自閉性スペクトラム障害のある児童への支援の枠組みで、SC(社会コミュニケーション)ER(情動調整)TS(交流型モデル)の3 つの領域からなっている。そのアセスメントであるSAP(SCERTS Assessment Process)の結果に基づき、特に他者と意図を共有する力の発達を支援するために、「社会性発達支援プログラム」の中から協同活動「荷物運びゲーム」を取り上げて取り組んだ。
「キャリア共立板」を使用し、不安定な荷物を二人で協力して運ぶ活動を行った。支援は、児童の力に合わせて身体援助、モデル提示、音声指示などを臨機応変に行い、それを次第にフェーディングした。トークンボードを使って目的と目標を視覚化し、また、運び終わったときに「やったー」とハイタッチすることなどでモチベーションを高め、気持ちを共有できるように支援した。約半年の実践の後、SAP-sum や社会-情動成長指標で表された結果からは、児童たちが他者に意識を向け、他者のメッセージを受け取ったり、他者にメッセージを送ったりする力が伸び、他者意図理解の力が高まったことが示された。それは、他者と意図を共有し協同活動を成功させる基盤となった。その上にたって、支援期間の終わりには、目標や役割を解って自立して荷物運びができ、なかなか参加できない仲間を呼んで活動に誘うなどの行動も見られた。また、その力を育てる上で、彼らの生活する世界全体の構造を最適に構成することが必要であることが示唆された。
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