本研究では、言語での意思表出が困難で「状況の切り替え時」等の苦手な場面で攻撃行動をとる自閉症者に対して強化子の有効使用による指導を行った。中でも送迎車から降りる際に降車を拒否し強制すると攻撃行動をとるため、降車時の不適切行動の消失を実践した。指導はフローチャートを用いて行われ、手順の明確化が図られた。
ベースライン期では強化子の査定を行った。日常の活動で従事している「型はめ課題」、「おやつ」、ご褒美として用いる「ラムネ」の写真を提示し強化子として機能するものを検討した。段階1 では、指示から降車までの時間と強化子の個数を対応させ指導が行われた。段階2 では、指導を時間で区切らず指導が行われた。これらの指導により、1 分以内の降車が定着していった。次のステップとして、段階3 では強化子の個数を減らしていく手続きがとられた。さらに1/3 部分強化スケジュールに変更し、「自らシートベルトをはずして降車する」という行動が維持された。
本研究では、段階分けの指導を実施したことにより、達成状況に応じて指導を再計画して進行することができた。また「送迎車からの降車」に対しての指導を行ったことにより、「暑い時」「騒がしい時」「外出先での降車」等の他の苦手な場面での不適切行動が減少していった。このことは、対象者A の基本的な集団行動をとることを可能にしたといえる。
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