自閉症スペクトラム研究
Online ISSN : 2434-477X
Print ISSN : 1347-5932
14 巻, 1 号
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巻頭言
実践研究
  • 再認プロンプト手続きの指導効果の検討
    朝岡 寛史, 熊谷 正美, 岡村 章司, 渡部 匡隆
    原稿種別: 実践研究
    2016 年 14 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2019/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究では、自己視点における前後・左右弁別が可能であった自閉症スペクトラム児1 名を対象に、空間的視点取得課題を実施した。誤反応が出現したときに他者視点位置から提示刺激に注目する再認プロンプト手続きの導入により、自発的に自己の視点を他者視点方向に移動する行動が促進されるかを検討することを目的とした。ベースラインでは、対象児は「○○(信号のある交差点など)を右/左に曲がります」という教示を聞きながらミニカーを動かし、直後に正誤のフィードバックを受けた。介入1 期では、再認プロンプト手続きを実施した。誤反応時に対象児をミニカーの視点位置まで移動させ、ミニカーに注目させた。介入2 期では、自己の視点をミニカーの視点方向に移動する行動に対して強化刺激を提示した。その結果、介入1 期以降においてミニカーの視点方向に頭や顔を向けたり、移動したりする行動が出現した。以上の結果から、自発的な視点移動行動を促進する上で、再認プロンプト手続きを用いた指導方法の効果について考察した。

  • 青木 康彦
    原稿種別: 実践研究
    2016 年 14 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2019/04/25
    ジャーナル フリー

    本実践研究は、 ASD 児を持つ自閉症が疑われる母子家庭の母親が示す育児・家事が行えないという問題に対して、面接を通して支援を行った経過を報告している。[方法]まず、母親に家庭において期待される母親役割(家事・育児)を確認した。そして、面接を通して、現在行えていない家事・育児をリストアップし、それらを目標に家事・育児の遂行の記録をしてもらった。さらに、行うことが難しい項目について、課題分析を行い、ステップシートを作成し、それに基づいて家庭で取り組んでもらった。[結果]家事・育児のいくつかの項目について、記録開始時から面接を通して徐々に遂行率が高まった。また、「掃除をする」について、課題分析を行い、ステップシートにしたところ、当初0 ~15%であった遂行率が、57 ~100%に上昇した。社会的妥当性についても、本人、叔母ともにほとんどの項目で肯定的な評価をしていた。[考察]家事・育児の遂行率について、面接を通していくつかの項目で改善が認められた。しかし、改善が認められなかった項目については、子どもが発達障害児であることや母親本人の特性を踏まえた支援を行う必要性が示唆された。発達障害が疑われる親、発達障害児の親、母子家庭などの状態にある母親の家事・育児への支援に関して、これまで検討した研究は少なかったが、本報告により支援の有効性が示唆された。

  • 柴田 祐樹, 小黒 康廣
    原稿種別: 実践研究
    2016 年 14 巻 1 号 p. 19-31
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2019/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究は、知的障害を伴う自閉症スペクトラムの人1 名(A 氏)を対象に、日常生活におけるお知らせや行動、考え方について、ソーシャルナラティブを用いて説明を行った。対象者はX 年度からR 事業所に通所し、研究開始時は通所して6 カ月目であった。通所前に在籍していた特別支援学校と連携し、フォーマルアセスメントであるTTAP の直接観察尺度を行い、保護者への聞き取り等インフォーマルアセスメントを行った。これらのアセスメントからA 氏の障害特性や機能レベルを確認し、環境調整を行った。指導開始前は様々なことで落ち込み、机に伏して、その日一日活動できなくなってしまうことがあった。ソーシャルナラティブによる介入を行ってから、ソーシャルナラティブに記述されている内容について、机に伏してしまうことがなくなる等の行動の変容が確認された。また、保護者の聞き取りから、家庭においても行動の変容があることが確認された。以上の結果から、ソーシャルナラティブが対象者になぜ有効であったかについて考察した。

実践報告
調査報告
  • 自傷行動を有するASD児への積極的行動支援を通して
    谷 浩一, 酒井 佐枝子, 奥野 裕子, 藤原 義博
    原稿種別: 調査報告
    2016 年 14 巻 1 号 p. 45-55
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2019/04/25
    ジャーナル フリー

    近年、自閉症スペクトラム障害児の行動問題の軽減を図る上で、社会的に適切な行動を増やすことを目的とする積極的行動支援(PBS)が提唱されている。本研究は、授業や活動場面において自傷行動を示す自閉症スペクトラム障害児を担任する特別支援学校教師(8 名)に対し、課題従事行動の促進を主眼としたコンサルテーションを実施し、児童生徒の適切行動を促進させた際の教師自身の意識変容を検証することを目的とした。コンサルテーション後に、教師に対して半構造化面接を実施した。面接内容については、KJ 法を用いて逐語記録を分析した。結果、コンサルテーションを経ることで、対象児の行動に関する理解の深まり、課題従事行動を促すための新たな手段の気づき、対象児の指導に関する自信の獲得、他の児童生徒や問題行動場面におけるコンサルテーションで得た知見の活用への期待感、加えて、視野拡大の必要性への認識の増加や困り感の減少という意識変容が認められた。

編集後記
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