日本創造学会論文誌
Online ISSN : 2433-4588
Print ISSN : 1349-2454
25 巻
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  • 製品やサービスを実装する活動を中心に
    櫻井 敬三
    2022 年 25 巻 p. 1-47
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー
    筆者は、過去40年間で350件のプロジェクトで技術的課題解決を行ってきた。その過程でイノベーションを生み出し、企業利益に貢献したこともあった。プロダクトアウトする製品やサービスがイノベーションを起こすためには『着想』と『具体化』のプロセスが必要である。特に『具体化』は十分な知見に基づく決断が必要であり創造開発テクニックでは解決できないのである。基礎知識学習能力に基づく固有技術力が勝負である。また『コスト重視か技術水準重視か』の見極めが大切である。筆者が、本学会加入後、多くの方々からイノベーションを実現するための支援を受けた。技術的課題の解決の切っ掛けは『機能に遡る』『願望を実現』『活動の具体化』『活動の強力推進』『資質の把握』『意思決定の支援』などであった。筆者は、その結果としてツールやマップや考え方を提供してきた。提供した内容について『気づき』から『実施』までの過程をまとめた。
  • 抽象化と具体化を用いたポンプチャートの開発による概念使用を志向した創造性態度の育成
    尾澤 知典, 由井薗 隆也
    2022 年 25 巻 p. 48-71
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー
    近年「概念」は、創造的認知プロセスの説明や知識伝達のためのカリキュラム設計の基礎となっている。本研究では10-12歳児童がアイディアを発想する際、情報の抽象度を上げた「概念」を使おうとする態度を育成することを目的としている。その方法として「概念」使用の有効性を児童が実感できることを目指したポンプチャートを開発した。ポンプチャートを用いた授業では「具体→抽象(概念)→新具体」のように「概念」を基軸として、はじめの具体を新しい具体へ転換する学習を行う。「概念」を使用する態度の向上を確認するために「概念」明示の授業では著者が考案したポンプチャートを用い、概念を明示しない授業ではブレインストーミングを用いる。そして両者の比較を行う。その結果「概念」を明示すると児童はアイディアの質(流暢性・柔軟性・独自性)が向上することを実感でき、今後のアイディア発想において「概念」を使用する志向性の向上が確認できた。
  • “Matching HUB Business Idea & Plan Competition”の実践を通して
    西野 涼子, 中田 泰子
    2022 年 25 巻 p. 72-93
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー
    本研究は、起業を創造性の高い精神性を持つ人物が起こす創造活動と定義し、その段階を明確化したうえで「起業態度が表出した状態の学生は、起業に対しどのような動機をもっているのか」をResearch questionとする。ビジネスコンテストM-BIPを開催し、アンケート調査およびインタビュー調査を行うことで動機の抽出を試みる。その結果から起業に対する動機の3つの因子「衛生的要因を起点とした社会的地位の追求因子」「生活の質の向上を目的とした経済的独立因子」「個人の創造性の社会実装因子」が得られた。またインタビュー調査では、対象者らが人と関り合うことで、自己自律的に成長するオートポイエティックな思想をもつことがわかった。実践的な起業教育の場では、多様なステークホルダーが対象者らの動機に併走するよう関り合いながら、起業計画や未来ビジョンの創出を支援することが重要である。これによってそれぞれの動機の強度はさらに向上できることが示唆された。
  • 楠 聖伸, 保井 俊之, 前野 隆司
    2022 年 25 巻 p. 93-108
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー
    本研究は、Seligman、Boniwell並びに前野らの主観的幸福度に関する先行研究をもとに主観的幸福度を高める要因に着目し、児童養護施設入所児童(注1)の主観的幸福度の向上を目的としたグループ学習型ワークショップを提案し、その有効性を定量的かつ定性的に検証するものである。グループ学習型ワークショップは、自己受容並びに他者とのつながり及び感謝がテーマの二つのワークから構成する。筆者らは、児童養護施設入所児童のグループを対象に当ワークショップを実施し、人生満足尺度を用いた定量的検証並びに半構造化インタビューによる定性的検証により、提案するグループ学習型ワークショップが主観的幸福度の向上に有効であることを検証する。これにより、児童養護施設入所児童の退所後の自立支援の方法の一つとして、入所児童の主観的幸福度の向上を目的としたグループ学習型ワークショップが展開できることを示す。
  • 因子得点による画像クラスタ毎の印象差違に基づくアプローチ
    前川 正実, 青谷 聡美, 田中 那乃
    2022 年 25 巻 p. 109-130
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、現在手軽に得られるリアルな写真画像に反リアル加工した画像がもたらす印象変化の把握である。適度な抽象度を持つ反リアル表現画像は私たちの世界を豊かにする画像表現といえる。本研究で用いる刺激画像は高精細フルカラーの画像と5種類の反リアル加工画像である。セマンティック・ディファレンシャル法による印象評価調査の結果、全画像に対してほぼ共通の評価構造があると判断されるため、全刺激画像の評価結果に対する因子分析を行い、導出された2種類の因子における各刺激画像の因子得点を得る。そして因子毎の因子得点に基づいて、クラスタ毎に、各加工方法が与える印象差違の内容を把握する。この内容と各クラスタのオリジナル画像の性質との連関から、オリジナル画像の性質、加工方法、印象変化の間の定性的な関係を示す。
  • 避難所用簡易間仕切りシステムの事例研究
    由田 徹, 藪内 公美, 永井 由佳里
    2022 年 25 巻 p. 131-152
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、デザインの創造過程で感性語の明示により、感性要求の獲得をする一つの方法を示すことで、デザインの創造性向上にむけた知見を得ることである。人(ユーザ)の感性をデザインの創造プロセスで感性要求として獲得する方法を示し、デザインの創造性向上にむけて考察した。事例研究の対象を「避難所用簡易間仕切りシステムPaper Partition System (以降、PPS)」とした。PPSの宿泊体験実験を行い、実験協力者の感性をネットワーク図で明示した。「明るさ感」の評価語に対しては「布の輝度」を物理量として、「広さ感」の評価語に対しては「床の面積」を物理量として、ME法( Magnitude Estimation Method )による感性評価を行いその特徴を示し、その特徴を感性要求として獲得した。PPSの再デザインに向けたデザインアイデア創造のためのワークショップの実施により、複数のデザインアイデアが創造された。この結果感性要求の獲得が、デザインの創造性の向上に寄与することが確認できた。
  • 坂口 和敏, 山岡 俊樹, 白坂 成功
    2022 年 25 巻 p. 153-180
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー
    本論文はサービスビジョンが「目的に基づく場の先行イメージ構築」と「視点間の調整による構造化」の反復で表現できることを実験によって検証する。実験は従来手法との比較分析と実際のプロジェクトに適用して評価を実施した。サービスはアイデアスケッチシートを使用し、ビジュアルとして描くことで、言語化しにくい目的や文脈を表現できる。また、サービスモデリングシートはビジネス–サービス–製品の階層構造の反復設計を促進する。サービスビジョンは、サービスデザインの経験に依存せず、経験がない実験協力者でも可視化できることを検証で確認した。これらの結果から、ビジョン構築プロセスはサービスを概念と実体イメージの両面で可視化し、それらの不適合を認識し、修正することによってサービスの実現に必要な実用最小限製品が特定する。また、可視化されたビジョンは他者への共有が可能であるため、多様な解釈が参加者間で育まれる。
  • 企業内大規模ワークショップの10年スパンでのプロセス分析
    宮西 克也
    2022 年 25 巻 p. 181-207
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー
    我々は、2008年と2018年の2回、職種や興味有無に関わらず、約370名の全社員が一堂に集まる大規模なワークショップを実施した。ワークショップは全社員が創造技法の一端に触れながら、ワイガヤ議論で入り交じりコミュニケーション促進を図り、成果物が出来上がる成功体験を共有することを目的としている。具体的には370名の全社員を勤務地域・職種/職制・年齢・スキルでシャッフルした12名程度の混成チームに分け、創造技法のレクチャを含め3時間程度の短時間で議論をまとめるものである。本稿では、企業イベントとして短時間で行うこの全社員ワークショップをどのように実践したのか、初心者が大多数であった1回目での実践内容と失敗例、および10年後の2回目での改善プロセス・ツールと結果(時間、成果物の量・質)を示し、どのような工夫が有用であったかを述べる。また全社員での協働実践の効能についても述べる。
  • 東海林 慶祐, 元村 祐貴, 松前 あかね
    2022 年 25 巻 p. 208-224
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー
    共創的協働に際して、個々人間に共有された心象が形成され、他者と創造的心理状態が共鳴する「響きあい」が重要な現象であることは定性的には認識されているが定量的把握に乏しい。「響きあい」の生理指標による定量的把握により、「響きあい」を促す関与の方法論的探索への展開が期待できる。そこで本研究ではマルチモーダルな生理指標による共創的ペアワーク中の創造的心理状態の概略的捕捉を目指す。具体的には2つの名詞句から自由に発想する概念形成ペアワークを行い、その間に計測された表情筋筋電図や眼電図などの生理指標と、被験者本人による振り返りを記録した被験者に知覚された創造的心理状態や「響きあい」を対応させることにより、生理指標による創造的心理状態の捕捉を試みる。その結果「響きあい」発現時に眼輪筋が一段と活発化するなど、ペアの双方が単に創造的心理状態にある時と「響きあい」時との差異を複数の生理指標で捕捉した。
  • デザイン思考の実践が職業イメージ・多様な力・幸福感に与える影響
    醍醐 孝典, 前野 隆司
    2022 年 25 巻 p. 225-244
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー
    近年、人材育成の必要性が叫ばれている介護分野において、デザイン思考を導入した介護デザインスクールを開発した。デザイン思考のステップをベースとして介護デザインスクールの内容を構築し、参加者の満足度などから人材育成プログラムとしての評価を確認するとともに、デザイン思考における共感、定義、創造、試作、検証のステップがそれぞれプログラムの評価に影響していることを明らかにした。さらに、職業イメージ、多様な力、幸福感といった参加者の内面の変化から人材育成効果があることを検証するとともに、デザイン思考のステップを丁寧にマネジメントすることによってそれらをさらに向上させる可能性があることを明らかにした。
  • 日本国内の大学におけるアンケート調査から
    辻 周吾
    2022 年 25 巻 p. 245-261
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー
    本研究では、日本人学生と中国人留学生の起業家精神の特徴を明らかにするために、日本国内の大学生を対象としたアンケート調査を実施した。アンケート調査の結果、中国人留学生の方が、起業家精神を有する要因として、起業にかかわる「周囲の環境」、「自己評価」、「就職観」の違いなどが挙げられた。また、本研究では、マン・ホイットニーのU検定の結果から、日本人学生と中国人留学生それぞれの男女差について分析した。日本人学生については、男性と女性で大きな差がみられた。また、日本人女子学生には、「起業にかかわる自己評価の低さ」、「起業家の知り合いの不足」、「起業と切り離された就職観」などの特徴がみられた。一方、中国人留学生については、男性と女性でほぼ差がみられなかった。起業家精神において、男女差がみられないのが特徴的である。
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