日本創造学会論文誌
Online ISSN : 2433-4588
Print ISSN : 1349-2454
最新号
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  • 熊谷 彩乃, 大塚 有希子
    2026 年29 巻 p. 1-20
    発行日: 2026年
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル フリー

    イノベーションとは、異なる「別領域」の要素を「組合せ」することで生まれるものとされる。しかし、既存のアイデア発想手法には、「別領域」との「組合せ」を促す仕組みが不足している。著者らが開発したアイデア発想モデルは、アナロジー思考を応用して「別領域」との「組合せ」を促し、新しいアイデアを創出する手法である。本研究では、ブレインストーミング、2軸図の構造シフト発想法、バリューグラフとの比較実践での主観的評価検証により、AYモデルの有用性を検証した。

  • 自由記述タスクと探索的因子分析による予備的検討
    ヒーリ サンドラ, 井上 拓也
    2026 年29 巻 p. 21-38
    発行日: 2026年
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル フリー

    本研究は、日本人学習者に適した文化適応的な創造性評価尺度の開発を目的とした。国際的に広く用いられている創造性尺度においては日本人学習者のスコアが相対的に低く出る傾向が指摘される中、その背景にある文化的に異なる創造性概念の存在が示唆されている。この課題に対応するため、本研究では、異なる学科に所属する英語科目を履修する日本人大学生を対象に、(1)自由記述形式による創造性キーワード生成タスク、および(2)創造性自己評価アンケートを実施し、探索的混合研究を行った。調査1の結果、学科によって創造性の概念化に有意な差異がみられた。続く調査2では、自己評価データに対する探索的因子分析を通じて、「探究心」「柔軟性」「積極性・自信」「感情の調整能力」「問題解決志向性」という5つの主要因子が抽出され、いずれも良好な内的一貫性を示した。特に「柔軟性」と「積極性・自信」が独立した因子として現れた点は、現代日本の学習環境における創造性の内面的かつ集団的側面を示唆する。本研究は、日本の高等教育における創造性教育と評価に対し、より詳細な文化的・文脈的適合性を持つ新たなモデルの構築に資する知見を提供する。

  • 共創型開発における創造的インタラクションの分析
    谷口 俊平, 西野 涼子, 永井 由佳里
    2026 年29 巻 p. 39-60
    発行日: 2026年
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル フリー

    本研究は、デジタルファブリケーション技術を活用し、デザイン経験のない人々との協働による医療補助器具の開発プロセスを実践記録として整理し、その知見を共有することで、同プロセスにおける創造性のインタラクションを質的に分析し理論的示唆を導くことを目的とする。研究では、4名の関係者(患者・開発者、デザイナー、医師、マネージャー)に対するインタビュー調査を実施し、「問題発見」「解決案の提案」「意思決定」「価値創造」「共感」の5つの創造的行為に焦点を当てる。分析の結果、問題発見や解決案の提案は患者である開発者が主導し、意思決定にはマネージャーと患者の発言が多く見られた。価値創造では関与者全員が重要な役割を果たし、特に医師はユーザー視点を強調した。共感においてはデザイナーが最も多く発言し、関係者の意見をデザインに反映させる役割を果たした。本研究は、共創型デザインプロセスの可視化と構築に貢献し、QOL向上を目指す医療補助器具の開発において、創造性のインタラクションが重要な要素であることを示唆している。

  • 電子コンパスデバイスR&Dチームの事例から
    安田 剛規, 内平 直志, 西村 拓一
    2026 年29 巻 p. 61-81
    発行日: 2026年
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル フリー

    Schönは主要な発明15事例からイノベーションには「抵抗勢力に逆らってでも積極的にイノベーションを推進する個人」が存在することを示し、「チャンピオン(アイデアを擁護する人)」と名付けた。本研究はチャンピオンのみならず、周囲で共創する人材もイノベーションに不可欠であるという視点に立ち、チャンピオンの周囲の人材がどのような資質を持ち、どのような動機で積極的に支援するのか、探索的な事例検討を行った。本研究の理論的貢献は、チャンピオンと積極的に共創する人材の要件として「欲求要件」「アイデアと欲求の共鳴要件」「創造性資質要件」の三つが不可欠であること、そして「チャンピオン気質フォロワー」と「スペシャリスト」という二つの人材タイプが存在することを示した点にある。あらかじめチャンピオン気質を有する人材を特定し、スペシャリストと非公式に共創できる環境を整えることが、共創成功の確率を高める上で有効であると提言する。

  • プライミング法を用いた共創促進手法の提案と検証
    三冨 敬太, 白坂 成功
    2026 年29 巻 p. 82-102
    発行日: 2026年
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル フリー

    本研究は、プロトタイプの未完成性が評価者の記憶や経験を喚起し、共創参加意欲を高めるメカニズムを明らかにし、そのプロセスを活用したプロトタイピング手法を提案・検証するものである。思考発話法を用いた実験では、評価者がプロトタイプを見て、自身の知識や体験をプロトタイプに反映する過程が、共創への参加意欲と深く関係していることを確認した。これらの知見に基づき、プロトタイプ提示の前に記憶や経験を呼び起こす画像の提示(プライミング)を行う手法を設計し、その有効性をワークショップと1,600名を超える大規模調査、および専門家インタビューによって検証した。分析の結果、手法は特に自己表現や新たな経験を求める意欲が高い評価者に対して顕著な効果が認められた。本研究は、プロトタイプに対する解釈を評価者自身の経験から引き出すことで、共創への巻き込みを促進する新たな手法の可能性を示す。

  • 神経科学的エビデンスと社会科学的エビデンスの比較
    尾崎 幸平, 橋本 一生, 岩本 慧悟
    2026 年29 巻 p. 103-122
    発行日: 2026年
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル フリー

    近年では、ニューロマーケティングへの注目が示唆するように、神経科学的エビデンス(神経科学的手法に基づくエビデンス)の方が社会科学的エビデンス(社会科学的手法に基づくエビデンス)よりも権威性の高いエビデンスであると評価されている。しかし、エビデンスの参照が職場における問題解決に与える影響については十分に検討されていない。そこで、本研究では、神経科学的エビデンスの参照が柔軟なアイディア生成に与える影響を検証することを目的とした質問紙実験を行った。統計的仮説検定の結果(N=43)、仮説に反して、神経科学的エビデンスの参照が柔軟なアイディア生成を促進した。ただし、この効果は、エビデンスの権威性に起因しないことも示唆された。今後は、エビデンスの独創性や馴染み深さの影響、本研究の一般化可能性、エビデンスの権威性の測定指標、他の柔軟性の測定方法、実験課題の妥当性などを考慮した詳細な検討が必要である。

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