日本創造学会論文誌
Online ISSN : 2433-4588
Print ISSN : 1349-2454
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  • 「図書室の改善」を題材としたデザイン思考の共感・問題定義プロセスによる学習
    髙瀬 和也, 安永 太地, 遠藤 慶仁, 丸山 純司, 杉妻 謙, 有澤 寛則, 城 愛美, 塩田 真吾
    2024 年 27 巻 p. 1-20
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/05
    ジャーナル フリー

    本研究は、従来の課題設定プロセスは課題の抽象度が高く指導難度が高い点を問題の所在とし、「図書室の改善」を題材とする小学生向け課題設定支援ツールを開発する。デザイン思考の理論を援用し、題材に対して①観察するツール、②分析するツールの2種が授業へ導入される。①②を用いた予備実践では、児童の問いが本や図書室自体に関するものから環境・心理・行動に着目したものへと変容し、問いに関する肯定的な意識が広く向上する。①のみを用いた本実践では、児童の問いが「なぜ」という形に固定化されたが、問いの着眼点の変容は確認され、理解の深まりに関する意識も向上する。2実践の比較から、小学校へデザイン思考の課題設定プロセスを応用する際は、導入期で観察による対象物への理解と問いに関する肯定的な意識の基礎を醸成する点を重視し、その後段階的に分析による他者視点の獲得や肯定的な意識の向上を取り入れていく必要性が見出される。

  • 感動のSTAR分析とYG性格検査の3尺度を用いた基礎的調査
    前川 正実, 川島 華月
    2024 年 27 巻 p. 21-38
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/05
    ジャーナル フリー

    人に感動を与えることを意図する製品やサービスのデザインにおける困難のひとつは、感動する内容が各個人で異なるという問題である。本研究の目的は、そうした違いを生じさせる人の性格特性と感動経験との関係の一部を解明することである。その手段として、「調査協力者に対するYG性格検査の3尺度から把握される性格特性」と「それらの感動経験に対して、感動のSTAR分析で把握される感動種類別の構成比率」との間の相関係数を求めて解釈する方法を採る。分析結果の解釈から、次の結論を得た。1. 外向的・社交的な性格特性は、自分と他者との関係の中で生じる事象や、他者に着目して感動する傾向がある。2. 協調的および非協調的な性格特性の双方とも、自分だけで完結する事象に対してだけでなく、他者が他者に関与する事象に対しても感動する傾向がある。

  • 猪田 大介, 金田 充弘
    2024 年 27 巻 p. 39-52
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/05
    ジャーナル フリー

    創造的な建築にはコラボレーションが必要と考えられる。しかしコラボレーションに着目した建築の研究は希少である。そのため効果や価値を理解し、評価できればデザインの要素になると考えられる。本研究は建築家と構造エンジニアのコラボレーションを対象とする。近代に誕生した構造エンジニアの職能をその起源から定義しコラボレーションの目的を定め、定量的に評価する手法ASCs (Architect-Structural Engineer Collaboration sheet)を開発する。そして造形的で構造エンジニアの役割が大きいと考えられるビルバオのグッゲンハイム美術館と国立代々木競技場を評価する。結果、コラボレーションの目的に見合う効果の大きさに差が表れ、2つの違いをコラボレーションの観点から説明した。

  • 川路 崇博
    2024 年 27 巻 p. 53-64
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/29
    ジャーナル フリー

    沈黙のブレインストーミングとも呼ばれるブレインライティングは、よく知られた創造技法として普及し実利用されている。そのブレインライティングを日本に紹介し広めたのは、高橋誠であることに疑いの余地はない。しかしながら、高橋がGeschkaより伝え聞いたという、ホリゲルによって当時の西ドイツで開発されたブレインライティングについての書誌情報が明確に示されている状態とは言えなかった。そこで、ブレインライティングの初出について、探索的に文献を調査した。結果、ブレインライティングの初出は、「Methode 635」としてRohrbachによって1969年に発表された文献であった。また日本におけるそれは高橋(監修・編著)の『創造開発技法ハンドブック』(1981年)であった。文献調査の過程で、635法の命名由来がこれまで知られているものと異なっていることが分かった。また、初期のブレインライティングでは、シートのアイデア行にイニシャルでの署名をするなど、現在知られているルールとは異なっている点が見つかった。加えて、Geschkaらが635法をブレインライティングと呼んだことが示唆される。

  • 個人間音声コミュニケーションに着目して
    七條 花恋, 東海林 慶祐, 澤井 賢一, 松前 あかね
    2024 年 27 巻 p. 65-81
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/29
    ジャーナル フリー

    共創時個人間で共通の心象を形成し、相互に創造の喜びや興奮といった「心に響く」感覚を刺激・共鳴しあう状態である「響きあい」は個人および集団の創造性や共創の持続に貢献しうる。この「響きあい」とアイデア生成プロセスの関係を、共創に参画する個人間の音声コミュニケーションに着目し ①言語的要素(発話機能) ②近言語的要素(②-1沈黙, ②-2発話の偏り)の観点から分析する。その結果、「響きあい」発現時には「好意的な反応」が非発現時より多く、両者の発話バランスは主に一方が話し他方も発話で反応する傾向が高かった。さらにアイデア生成プロセスをアイデア推移(拡張/深耕)ごとに分けると、「響きあい」非発現時の拡張推移では「停滞」と「発案」が大半で会話が不規則なのに対し「響きあい」発現時の拡張推移では「停滞」せず「質問/対立意見」「躊躇/真剣」「好意的な反応」等の相互間コミュニケーションが多く観測された。

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