日本女子体育連盟学術研究
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34 巻
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原著論文
  • 八木 ありさ, 原田 純子, 三岳 貴彦, 安達 詩穂
    2018 年 34 巻 p. 1-15
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/10
    ジャーナル フリー

    JAPEW公認ダンスムーブメント指導員の活動状況並びに活動開始動機や継続効果の意識を明らかにするために質問紙調査を実施した。回答数は182人中102人(A級18.B級46.C級38)(回答率56.0%)で,回答者全体の平均年齢は57.6±8.6歳,平均ダンス指導年数22.51±7.11年,65歳以上の占める割合が41.2%,75歳以上が10.8%であった。

    活動開始動機の探索的因子分析の結果,「新しい活動や新しい仲間への期待」「安心」「ダンスへの関心」「間接的関心」「身体的欲求」「講師/指導への関心」の6因子が抽出された。因子得点と所持級との関連では,「身体的欲求」因子にC>B,C>A,また「講師/指導への関心」因子にA>B,A>Cの関係が見られた。活動継続効果の意識については「関心事と学びの共有」「音楽とダンスに親しむ」「創造と自由を体験する」「自信が持てる」「変身できる」「関係形成」の6因子が見出された。因子得点と所持級との関連を比較したところ,統計的有意差は見られないものの,「関心事と学びの共有」「創造と自由を体験する」「自信が持てる」の3因子でA級取得者がより高い値を示す傾向が見られた。

    初期にC級を取得する際にはダンスから得られる身体的な満足感への関心が動機として強く働いていて,B級,A級へと進むと,指導者としての活動への関心が強く働くようになること,また,これと並行して,高い所持級に進むと,仲間との共有体験や創造性といったダンスの性質をより強く感じており,同時に自信を持つことにつながっている,と推論することができる。

  • -看護専門職の「主体的対話的で深い学び」を通して-
    髙橋 和子, 山本 光
    2018 年 34 巻 p. 17-30
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/10
    ジャーナル フリー

    レジリエンスは,困難な出来事を経験しても個人を健康へと導く心身の特性である。本研究の目的は,看護師536名と看護学生320名に「からだ気づき」実習を実施し,「からだ気づき」によるレジリエンスへの有効性を検討することである。心身の健康の指標は,レジリエンス尺度(精神的健康尺度・精神的回復力尺度)を用いて解析を行った。

    その結果,次のことが明らかになった。①「からだ気づき」実習を通して「運動好き」「ダンス好き」「精神的健康」「精神的回復力」の項目が肯定的に変容した。②「精神的健康尺度」は[憂鬱][集中力欠如][怒り][身体的症状]の4因子構造であり,特に[身体的症状]の改善がみられた。③「精神的回復力尺度」は4因子構造であり,実習前後に因子構造の変容がみられた。特に看護専門職において[感情コントロール]の改善がみられた。④人とのかかわりを「主体的対話的」に行う中で,からだ(心身)の状態が改善された。 以上のことから,レジリエンスを高める「からだ気づき」の有効性が明らかになった。

実践研究
  • 髙野 牧子
    2018 年 34 巻 p. 31-38
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/10
    ジャーナル フリー

    「もの」(小道具)によってどのような身体表現を母親と子どもから引き出せるのかを明らかにし,環境構成として提供する際に期待できる効果を検討することを研究目的とする。対象は2歳児とその保護者であり,月1回の創造的身体表現の連続講座を実践した。「もの」の素材は,1 )新聞紙 2 )緩衝材によるエアマット(プチプチ緩衝材)3 )ムーブメント・スカーフ4 )光と映像5 )伸縮布6 )フープの6種類とした。活動中に引き出された動きを分析するとともに,各活動後,母親が自己評価と子どもについて評価し,自由記述を行った。評価項目は,①楽しく踊る ②真似して動いた ③からだで表そうとした ④子どもや他の参加者と 一緒に活動した ⑤意欲的に参加した ⑥活動に満足した という6項目について5件法で評価した。

    その結果,新聞紙は上肢の動きが多く,エアマットは下肢を中心とした動きが多い。光と映像は,身体部位を意識させ,伸縮布は全身のバランス感覚を養う動きが多い。ムーブメント・スカーフとフープは見立ててなりきる模倣的な動きが引き出された。

    さらに母親による評価では,新聞紙は母親の意欲,満足度が高かった。エアマットは,子どもの評価が高く,母親との相関係数も高い。スカーフは,母親が楽しく踊ったという項目について,最も高い評価を示した。光と映像は,標準偏差が大きく,評価のばらつきが目立った。また,伸縮布は,それを楽しむ子どもと怖がる子どもで評価が分かれた。フープは,子どもの満足度が最も高い結果となった。

    以上より,素材によって子どもと母親の評価が異なり,身体表現の引き出され方も違う。多様な表現を引き出すために,意図して素材を組み合わせ,年間を通して多様な動きが経験できるよう計画し,目的に応じて,援助の工夫が必要であると結論づける。

  • ―ルーブリックの有用性の検討を通して―
    相馬 秀美
    2018 年 34 巻 p. 39-51
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,教員を目指す大学生を対象とした現代的なリズムのダンスの指導法授業において,受講学生が学習内容をより深く理解するためにいかなる授業改善が可能かとの視点から,ルーブリックを作成しその有用性について検証することを目的とした。

    授業内容としては,現代的なリズムのダンスの授業が陥りやすいと言われる,技能偏重型とならないよう配慮した。特に授業後半の3回の授業では,グループでの関わり方に留意した指導内容とし,介入群においてはルーブリックを用いて,統制群においては口頭によって解説し受講学生の理解を促した。

    ルーブリックを用いた授業者による学習状況の評価について介入群と統制群の2群間で比較を行った結果,「技能」において,統制群と比較して介入群の得点が有意に高く,「関心・意欲・態度」において介入群の得点が高い傾向が認められた。また「関心・意欲・態度」「思考・判断」「技能」全10項目の総得点においても,統制群と比較して介入群の得点が有意に高い結果であった。この結果からルーブリックが,授業者と受講学生との間における具体的な到達目標や評価基準を共有するためのツールとなり,授業者が指導の目安として授業期間を通じて活用することや,受講学生の学習内容に対する理解,技能や知識の習得到達度を促進する可能性があることを伺うことはできたものの,本研究では比較条件が整っていなかったため,成果を実証的に明らかにすることはできなかった。本研究を通じて,研究方法,ルーブリックの作成方法及び活用方法に関する多くの課題を確認するとともに,教員養成系大学における現代的なリズムのダンスの指導法授業における学習と指導と評価の一体化に向かうべく研究を継続するという今後の課題を確認することとなった。

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