パーソナルファイナンス研究
Online ISSN : 2189-9258
ISSN-L : 2189-9258
6 巻
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
招待論文
  • 岩崎 薫里
    2019 年 6 巻 p. 7-19
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

    東南アジアでは近年、フィンテック・ビジネスが盛り上がっている。その背景には、この地域での金融課題の多さがある。低所得者を中心に本人確認や信用度合いの判断が難しいことなどにより、銀行口座保有率が低い、銀行サービスへのアクセスが悪い、クレジットカードが普及していないなど、金融包摂を含むさまざまな課題を抱える。そうしたなか、インターネットとスマートフォンの普及に伴い、それらを活用して金融課題の解消を図ろうとするフィンテック・ビジネスが続々と登場している。

    東南アジアのフィンテック・ビジネスに利用される技術やビジネスモデルは先進国や中国発のものが多い。フィンテックはあくまでも課題を解決するためのツールであり、どこかの二番煎じではないかといった視点は彼らにとって重要ではない。また、多くのフィンテック・サービスは「カエル跳び効果」と呼ばれる後進性利益により、最先端のデジタル技術を取り入れながらも、ローテク部分が混在する制度設計となっている。

    東南アジアのフィンテック・ビジネスのなかで最も活発な分野はモバイル決済である。多種多様な事業者によりモバイル決済サービスが提供されており、それにより、東南アジアでキャッシュレス化が進むことが展望される。シンガポール、マレーシア、タイでは政府もキャッシュレス化を積極的に推進しており、その結果、日本で未導入の携帯電話番号を使った24 /7即時振込みがすでに実現している。

    もっとも、東南アジアでフィンテックが根付くためには、安全性の確保などの課題もある。それらを克服してはじめて、フィンテック・ビジネスが社会に広く受け入れられ、金融課題の解決につながるとともに、現金社会からキャッシュレス社会への転換を果たすことになろう。

  • ~ICO とクラウドファンディングやソーシャルレンディングとの接点と規制枠組みの在り方~
    田中 幸弘, 田中 秀一郎
    2019 年 6 巻 p. 21-46
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

    本論文においては、我が国における仮想通貨の現在の状況について検討し、金融庁の研究会等での議論や仮想通貨に関連する事業者の金融庁による処分や法制度改定などの取り組みを検討した後、いわゆる ICO(Initial Coin Offering) の制度について金融庁による「金融の4機能」のどこに ICO の四類型が該当するのかを検討した。そして、 ICO と類似するクラウドファンディングやソーシャルレンディング等の現行制度における限界を踏まえ、証券及び金融市場における資産運用業界の実務的な側面からICO の投資可能性を担保するための条件を提示するとともに、 ICO という資金調達手段が市民社会の側面から見た資金調達の簡便性との両立が可能かどうかを検討した。その際に ICO という資金調達手段において投資家保護と資金調達の簡便性が両立するかという問題との関係で、その両立のために必要とされる各種制度整備を検討し、現行制度に対する代替案の提言を行った。そして最後に仮想通貨の法的性格との関連でアメリカにおける個人情報を所有権の客体と位置づける法案の内容について紹介するとともにその各方面での将来的な影響について若干の検討を行なった。

  • 趙 彤, 石田 基広
    2019 年 6 巻 p. 47-56
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

    近年P2P ネット金融が中国で急速に成長してきた。本稿ではP2P ネット金融の大手プラットフォームである「人人貸」(RRD)の取引レコードを用いて、成約済のローン証券のデフォルト要因を分析した上、未成約ローン証券のデフォルト率の予測を行った。成約済ローン証券の実際のデフォルト率が17.83%であるのに対して、未成約ローン証券の予測デフォルト率が35% で、両者の間に大きな差があり、投資家がかなり賢いであることが間違いない。しかし、成約済ローン証券の実際のデフォルト率が17.83%、極めて高く、改善すべき点がかなり多いと思われる。さらに、ローン証券利率とローン証券期間の間に多重共線性が起こってしまうほど強い相関を持っていた。これはRRD が借り手の信用ランギングよりもほぼローン証券期間に比例してローン証券利率を決定するスキームが設計されていたことが起因である。

  • 堂下 浩
    2019 年 6 巻 p. 57-66
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

    日本において貸金業法が2006年に改正されて以降、ヤミ金融の事犯が表面化される機会が減ったように見受けられる。しかしながら最近の報道を精読してみると、ヤミ金融はそのスキームを様々に進化させ、警察にとって摘発が難しい形態へ巧妙化させることで高金利被害を拡大している。例えば、2018年9月26日に報道された日本経済新聞の記事「倒産企業の陰にひそむ危うい資金調達」によると、従来から商慣行として行われてきたファクタリングのスキームを利用する違法性の高い二者間ファクタリングが新たなヤミ金融として水面下で浸潤し、資金需要のある中小企業の間で被害が拡大している。二者間ファクタリングに関しては警察の摘発が困難であるだけでない。利用した中小企業がファクタリング業者に賠償請求を求める裁判が幾つかの事案で争われたが、その違法性を巡る判決に一貫性はない。

    2017年3月3日に共同通信が報じた記事「債権取引『実質は貸金』  地裁、過払い金返還命令」によると、二者間ファクタリングの違法性を認めた判決が出された。一方で筆者が二者間ファクタリングを利用した中小企業に行ったインタビュー調査の中には、裁判で二者間ファクタリングの違法性は認められず、逆に中小企業側がファクタリング業者に多額の違約金の支払いを命じられた事例も存在する。

    こうした司法判示の限界性を鑑みると、現行法令で二者間ファクタリングを規制することは困難となってきている。さらに2020年改正民法の施行により債権譲渡が原則自由化されることで、二者間ファクタリングを行う上での環境は逆に整う恐れもある。こうした見地からも中小零細企業による資金需要の現実を考慮した上で貸金業法が改正され、適正な貸金市場が日本国内で形成されるべきである。

査読論文
  • 上村 祥代, 竹本 拓治
    2019 年 6 巻 p. 67-79
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

    本研究では、日本のライドシェアの先行事例から現状と課題、さらに過疎高齢化かつ公共交通の不便な地域におけるライドシェアの受容性を明示し、利用と運賃との関係性の考察を行った。
    まずライドシェアの事例を把握した結果、利便性に関しては2つの事例ともに向上したと考えられるものの、各々運行範囲や様々な時間帯への対応、ドライバー確保の課題が示された。また運賃に関しては、ささえ合い交通では、利用者は高いと不満を感じており運行管理側も課題と認識していた。しかし、ささえあい交通の運行実績やささえ合い交通の開始年度を拠点に見たデマンドバスの利用者減少、さらに海外事例の知見を踏まえると、運賃のマイナス面より も利便性のプラス面が優先し利用する傾向がみられ、一定の利用に繋がっていた。一方、なかとんべつライドシェアでは、始めは無料としていたものの、利用者の意志により受益者負担となったことで不満の声は聞かれず有料化に伴う運行回数の変化もみられなかった。そして、ささえ合い交通の事例を基に運行管理の枠組みや留意点を整理すると、運行管理者を軸とし輸送サービスの提供や安全管理への配慮が行われており、今後導入にあたり検討すべき要因を明らかとした。

    次に、今後ライドシェアの検討や展開が見込まれる過疎高齢化かつ公共交通の不便な地域の一例として福井県吉田郡永平寺町の高齢者の地域交通の意識把握を行った。その結果、まず料金面よりも利便性を優先事項に挙げていた。そして、ライドシェアや共助型輸送の輸送方法が地域になじみ展開できる可能性があると期待していた。また、運賃に関しては、ささえ合い交通やなかとんべつライドシェアで取り入れられている「固定型」を選択した。しかし、先行事例の実態を踏まえると、利用者の満足を得られるような運賃設定の工夫が求められる。

    以上より、運賃より利便性、無料より有料化、謝礼や選択型より固定型の運賃が評価されることについては、行動経済学のナッジが意識決定に影響した効果と考えられる。

    今後、ライドシェアを普及、展開を進めるにあたっては、利便性の評価が最重要となり、運賃が高いと実感しても一定の利用は見込まれる。しかし、利用者の運賃に対する満足を得るためには、利用者に輸送サービスの価値を評価させ固定型の運賃設定を行う戦略を取り入れることが望ましいと示唆される。

  • 趙 彤, 水ノ上 智邦
    2019 年 6 巻 p. 81-97
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

    中国のP2P ネット金融市場は、わずか10年間にその規模を2000倍に拡大し、世界一となった。急激な成長を果たした陰では、これまでに開業した取引仲介サイト(プラットフォーム、以下PF)の2/3 以上において、倒産や夜逃げなどなんらかの問題が発生するという異常な事態が起きている。P2P ネット金融は、既存の金融機関から排除されていた中小企業、農家や個人に金融サービスへのアクセスを与える社会的な影響力を持つ新たなイノベーションではある。しかし、中国の金融当局はこの市場に対して長年にわたり規制を設けず、PF は無秩序なまま「野蛮成長」することになった。市場規模の拡大に伴い、P2P ネット金融が社会で一定の存在感を持つようになった2016年8月、ついに成文化された初めての規制文書が公布され、「野蛮成長」から安定成長に向けた変化が起きつつある。

    中国のP2P ネット金融については、先行する欧米とは異なる特徴を持つこともあり、これまで系統的かつ経済学的な評価や分析を行った研究がほとんど存在しない。本稿は、中国P2P ネット金融の特徴を、経済学的な視点から解釈し、その視座に基づき、「野蛮成長」と形容される急速な発展、および多産多死となった理由を考察する。また、中国政府が規制を半ば意図的に遅らせたことは市場の拡大に繋がったが、本格的な規制が始まったことで、市場の安定化が期待される一方で、角を矯めて牛を殺す結果にもなりかねず、借り手と貸し手の双方を保護しPF の安全性を確保し、かつ成長を促すような適切な規制が実現できるかどうかが市場の命運を大きく左右する。そのため、社会問題となった実例を踏まえ、当局の規制が持つ意味を時系列に説明するとともに、その効果や市場の展望についても考察を行っている。

English Summary
編集後記
奥付
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