本研究は,精神科看護師が患者に否定的感情を抱いた後の体験を明らかにし,前向きな関わりに至った体験と前向きな関わりに至らなかった体験について考察することで,サポート体制構築への示唆を得ることを目的とした.研究方法は半構造化インタビューを行い,収集したデータを質的帰納的に分析した.その結果,317のラベルから82のサブカテゴリーが得られ,そこから28のカテゴリーが得られ,最終的に『否定的感情の内容』『援助行動』『心の状態』『行動や心の状態に影響する要因』の4つの要素に集約された.これらのカテゴリーを時系列に配置することにより,否定的感情を抱いた精神科看護師の体験の構造図が得られた.このことにより,前向きな関わりに至る体験と前向きな関わりに至らない体験にはそれぞれ特徴的なプロセスが存在していることが示唆された.前向きな関わりに至らない体験には,否定的感情の内容として【自分の価値規範を交えた憤り】が存在し,看護師の思いには【サポートがなく困惑する】が多く,援助行動としては【状況を解釈し直す】が見られず,【否定的な査定に偏る】が見られたことが特徴的であった.否定的感情体験を経験した看護師が前向きな関わりに至るためには,感情のコントロールのための支持的な支援と,状況を解釈し直すための支援が必要だと考えられた.
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