日本精神保健看護学会誌
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25 巻, 2 号
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原著
  • 田村 達弥
    2016 年 25 巻 2 号 p. 1-11
    発行日: 2016/11/30
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,慢性期統合失調症患者が頓用薬を要求する場面において,対応する看護師が行う頓用薬与薬の判断とケアのプロセスと,そのプロセスに影響を与える要因を明らかにすることを目的とした.研究対象者は5年以上の精神科経験を有する看護師10名であり,半構造化面接を行い,帰納的に分析した.

    その結果,看護師は頓用薬の要求に対して,《普段との違いを観察》《過去の経験とのつきあわせ》を含む【切迫感の程度の見極め】の相,《話を聞くことによる判断材料の模索》《与薬の適切性の査定》を含む【頓用薬の必要性の査定】の相を経て,頓用薬使用の【判断】と【ケア】を行っていた.その後は《継続的に観察》をし,【患者の状態を評価】していた.

    このプロセスには《看護師の価値観・信念》《患者との関係性》《看護師の情緒状態》といった『看護師側の要因』と,《その時の病棟状況》《病棟文化》《チーム内のコンセンサス》といった『環境要因』が複合的に影響を与えていた.

研究報告
  • 加藤 沙弥佳, 田上 博喜, 白石 裕子
    2016 年 25 巻 2 号 p. 12-21
    発行日: 2016/11/30
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー

    現在,わが国において,看護職者を対象としたCBT研修は少なく,看護の専門性を活かした内容という点については検討段階で,未だ確立されていない.そこで,われわれは,看護職者を対象としたCBTの試行的研修を構築し,実施した.本研究の目的は,試行的研修において獲得した知識の定着と看護実践への活用を図るために,試行的研修に参加した看護職者13名を対象にフォーカス・グループインタビューを行い,そこで得られたデータを質的に分析した.試行的研修で得たCBTの知識と看護実践を結ぶために必要なプロセスとそれを促進する要素として,6つのテーマ:1) CBT定着のための反復学習,2)習熟度に応じた知識提供,3)理解の促進を促す課題遂行演習,4)実践への動機づけを高める体験,5)語りによる他者との相互的な学習,6)反復学習のための環境調整,が抽出された.看護実践に向けたCBT研修のプログラムには,CBT研修の導入から実践の場において,反復学習を支援する体制が必要であることが示唆された.本研究は,今後の看護実践に向けたCBT研修のプログラム化を図るための一助となると考える.

  • 毛利 智果
    2016 年 25 巻 2 号 p. 22-29
    発行日: 2016/11/30
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,思春期精神科看護師が治療の場のルールをどのように捉えているかを明らかにすることである.研究対象は,思春期精神科病棟もしくは思春期の利用者を対象としたデイケアに3年以上勤務する看護師8名である.データはインタビューガイドを用いた半構造化面接にて収集し,比較検討しながら抽象度を高め,サブカテゴリー,カテゴリーを生成した.結果,看護師は治療の場のルールを[子どもの身を守る手段],[子どもが疾患や障害を持ちながら他者と上手く関わっていくための手段],[集団生活を維持するための手段],[子どもが大人の作った枠を越える手段]と捉えていたことが明らかになった.またこれらの手段となるルールには階層があるとともに,子どもの課題を達成させるための手段としてルールを用いることは,思春期精神科看護の持つ大きな役割であると考えた.

  • 吉井 ひろ子, 田嶋 長子
    2016 年 25 巻 2 号 p. 30-40
    発行日: 2016/11/30
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,境界性パーソナリティ障害患者の看護における精神科熟練看護師の実践内容を明らかにすることである.7施設の精神科熟練看護師10名(平均看護師経験16年・平均精神科看護経験13年)に半構造的面接を行い,KJ法での分析の結果,115個のコードの抽出から25個のサブカテゴリと6つのカテゴリに生成された.

    BPD看護における熟練看護師は,BPD患者病理を理解した上で,【生きづらさや本音を引き出しながら患者を理解する】といった患者受容をし,【大切に思う気持ちを伝えることで安心と励ましを届ける】ことや,【“まきこまれない”を意識しすぎず思いに共感することで信頼関係を形成】していた.また,患者に即した成長を促す目的で,【患者のありのままを受容し,セルフコントロールを支える】ことや,【患者の状況に応じて枠組みを調整したりしなかったりしながら,セルフコントロールを手伝う】こと,心理的中立の立場を遵守するために,【看護師のありのままの自分を受容し,プロ意識でセルフコントロールする】ことも含め,全般にわたってフレキシブルな対処がみてとれた.これらから,BPD看護は難しくても,患者や看護師自身のありのままを受容し,看護師の思考と行動のフレームを柔軟に変容させたりさせなかったりするフレキシブルな対処によって,心的疲弊に陥らずよいかかわりを続けることが可能になると考えられた.

  • 野海 直子, 蔭山 正子
    2016 年 25 巻 2 号 p. 41-50
    発行日: 2016/11/30
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー

    中年期(45~64歳)の親への支援のあり方を検討するために,家族ピア活動に参加した中年期の親に焦点を当て,子の精神疾患発症からの経験を記述することを本研究の目的とした.質的記述的研究を行った.研究協力者は,母親11名,父親1名の計12名,56.8±5.5歳であり,精神疾患に罹患している子14名は,25.2±4.6歳であった.これまでの経過と経験,感じた困難と対処を中心にインタビューを行った.逐語録から家族の経験に焦点を当てコード化し,時系列に沿ったカテゴリ化を行い,テーマを生成した.

    分析の結果,『子とともに学びあい回復・成長を目指す』というテーマと,4つのカテゴリ《今まで通りに子へ対処》《状況の変化に無力で孤立》《子の回復に向けて模索》《子とともに学びあいながら回復・成長》が生成された.中年期の親を支える際には,子の回復を支える関わり方に「気づき」が生まれるような家族ピア活動が重要であることが示唆された.

資料
第26回日本精神保健看護学会学術集会
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シンポジウム 心と身体と社会を紡ぐ看護の今とこれから
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