正規分布に従う変量が所定の値cを超える確率を推定する問題では,最小分散不偏推定量と最尤推定量がよく用いられる.この推定問題は単一の正規母集団について論じられることが多いが,実際には回帰分析や分散分析などの場合にもしばしば起こる.この論文の目的は,(1)最小分散不偏推定量を正規線形模型に拡張すること,(2)cの"基準化偏差"の推定値を正規分布の累積分布関数に代入することによって確率の推定値を得るタイプの推定量を"MLE型"と呼んで,その性質を漸近的に検討するとともに,その結果に基いて推定量の偏りに対する補正法を提案すること,および(3)各推定量の偏りと平均2乗誤差を数値的に検討することである."MLE型"の推定量は特別な計算プログラムを必要としないという意味で計算が容易な反面,特に小さな確率を推定するときの偏りはきわめて大きい.ここで提案する補正を行った推定量は偏りが非常に小さく,平均2乗誤差から見てもきわめてすぐれた性質をもつ.
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