1970年代後半から農業関係の学術雑誌において,多重比較手法,とくにDuncanの多重範囲検定法の誤用・乱用を指摘する論文が相次いで登場した.その多くの論文で,農業実験データの解析と解釈における多重比較手法の使用に否定的な意見が述べられている.しかし,そこでは「多重比較」と「対比較」とが殆ど同義語として使用されているため,農業分野における多重比較に関する議論には少なからず混乱がある.
本稿では,まず多重比較に関する問題点を整理する.次に,処理に構造がある実験データの解析において,多重比較手法の適用に関して農業分野で行われている議論を紹介する.また,農業研究者のあいだでは広く使用されているにもかかわらず,多くの統計学のテキストでは否定的に扱われているDuncan法についても考察する.
臨床試験における試験計画実施規定から逸脱した被験者あるいは試験完了前に試験から離脱したりあるいは中止された被験者の取扱いは,薬効評価を偏りなく行うことを困難にする.本報告では,これらの被験者を組込み基準違反症例と無作為化後(または試験開始後)に発生する問題を有する症例に分類し,前者を不適格症例,後者を脱落症例と定義した.そして,これらの症例が評価ならびに解析にどのような問題をもたらすかを考察した.また,従来の取扱いの問題点を明らかにし,取扱いの基本原則を提案した.即ち,試験に組込まれた全ての症例から不適格症例および投与開始前に脱落した症例を除く全ての症例を全ての解析における解析対象集団とすること,解析対象集団に含まれることと一部の解析変数における欠測とは区別して考えるべきこと,脱落例においては脱落時点までのデータに基づき評価し解析することである.また,全ての解析から除外された被験者における安全性の詳細な記述および問題の発生状況の記述と群間の偏りの考察,脱落の発生状況の群間の偏りの考察を行うべきことを指摘した.さらにintention-to-treatの原則に基づく取扱いの多様さならびに困難さを指摘し,その難点を克服するための案を述べた.
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