線形ないしは非線形の構造を有する現実のデータに対して,データの層化と回帰解析を同時に遂行しながら,データの背後に潜む回帰関係を捉えることを可能とする接近法として,多変量適応型回帰スプライン(MARS: Multivariate Adaptive Regression Splines: Friedman, 1991)が知られている.一般に,回帰解析の目標には,(i)応答の適合予測と(ii)回帰関係の適切な解釈を与える二つの立場がある.このとき,MARS法を適用する場面に注目すると,後者の目標に重みをもつことが多く,とくに,MARS法の単一の樹木構造がその目標の達成に貢献する.他方,これら二つの目標を同時に満たすことを意図した縮小推定量として,非負圧縮推定量(NNG:Non negative garrote, Breiman, 1995)が提案されている.本稿では,MARS法の適用結果で現象に符合する解釈が得られるように,NNGをMARS法の推測過程に組み入れるNNG-MARS法を提案し,その性能を文献事例およびシミュレーションを通して吟味する.その結果,NNG-MARS法は,回帰関係の解釈が容易な単一の樹木構造の形式をとり,多くの状況下において,通常のMARS法を上回る予測性能を示した.
抄録全体を表示