応用統計学
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36 巻, 2-3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 黒木 学
    2007 年 36 巻 2-3 号 p. 71-85
    発行日: 2007/12/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    本論文では,変数間の因果関係が非巡回的有向グラフと対応する線形構造方程式モデルで記述できると仮定する.このとき,処理変数と反応変数の間に未観測交絡因子が存在する場合において,処理変数に対して外的操作を行ったときの反応変数への総合効果を推測する問題を考える.この状況に対処するための総合効果の識別可能条件として,フロントドア基準(Pearl,2000)や条件付き操作変数法(Brito and Pearl,2002)が知られている.これらの識別可能条件は,総合効果を推定するために,未観測交絡因子とは直接的には関連しない第3の観測変数を利用するというアイデアに基づいている.しかし,現実の問題においては,未観測交絡因子は処理変数や反応変数だけでなく,さまざまな変数に影響を与えていることが多い.このような状況に対応するために,本論文では,因子モデルの識別可能条件を改良した新たな総合効果の識別可能条件を与える.本論文の結果は,総合効果の識別可能条件として有用であるだけでなく,因子モデルの識別可能条件の新たな見方も与えている.
  • 大倉 征幸, 鎌倉 稔成
    2007 年 36 巻 2-3 号 p. 87-98
    発行日: 2007/12/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    ロジスティック回帰モデルを利用する際,最尤法によりパラメータ推定を行うのが一般的である.しかし,最尤推定量は完全分離または準完全分離の場合に存在しないことが知られている.また,発現確率が極端に小さい(または大きい)場合やパラメータ数に比べて標本サイズが小さい場合も妥当でないことが知られている.このような状況において,精確ロジスティック回帰推定法が有用であると言われている.しかし,すべての統計ソフトで精確ロジスティック回帰推定法を実施できるわけではない.Firth(1993)は最尤推定量のバイアスを取り除く方法を提案したが,完全分離または準完全分離に近い状態での検証は十分行われていない.本報告の目的は,完全分離または準完全分離に近い状態において,最尤推定値またはFirth法推定値を精確ロジスティック回帰推定値に近似する方法を検討することである.また,パラメータ推定の改善のためのデータ構造に関する近似法をシミュレーションにより検討する.尤度関数をTaylor展開することにより,最尤推定値またはFirth法推定値を精確ロジスティック回帰推定値に近似することが可能であることが分かった.さらに,最尤推定値はデータ構造を考慮することにより,近似の精度の改善が可能であることを示した.
  • 元垣内 広毅, 杉本 知之, 後藤 昌司
    2007 年 36 巻 2-3 号 p. 99-118
    発行日: 2007/12/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    線形ないしは非線形の構造を有する現実のデータに対して,データの層化と回帰解析を同時に遂行しながら,データの背後に潜む回帰関係を捉えることを可能とする接近法として,多変量適応型回帰スプライン(MARS: Multivariate Adaptive Regression Splines: Friedman, 1991)が知られている.一般に,回帰解析の目標には,(i)応答の適合予測と(ii)回帰関係の適切な解釈を与える二つの立場がある.このとき,MARS法を適用する場面に注目すると,後者の目標に重みをもつことが多く,とくに,MARS法の単一の樹木構造がその目標の達成に貢献する.他方,これら二つの目標を同時に満たすことを意図した縮小推定量として,非負圧縮推定量(NNG:Non negative garrote, Breiman, 1995)が提案されている.本稿では,MARS法の適用結果で現象に符合する解釈が得られるように,NNGをMARS法の推測過程に組み入れるNNG-MARS法を提案し,その性能を文献事例およびシミュレーションを通して吟味する.その結果,NNG-MARS法は,回帰関係の解釈が容易な単一の樹木構造の形式をとり,多くの状況下において,通常のMARS法を上回る予測性能を示した.
  • 大門 貴志, 後藤 昌司
    2007 年 36 巻 2-3 号 p. 119-137
    発行日: 2007/12/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    臨床試験では,主に倫理性・実施可能性・経済性といった視点から試験の中止・継続をはじめ試験のデザインの修正を検討するために,中間モニタリングが行なわれる。中間モニタリングへの統計的接近法は頻度流の枠組みとBayes流の枠組みに分類できる.本研究ではBayes流の中間モニタリングに焦点を絞る.Bayes流中間モニタリングでは,一般のBayes流接近法と同様に標本抽出分布と事前分布の両方の情報源を結合して事後分布を提供する「モデル」を構成して,このモデルから導出される指標(統計量)に基づいて試験中止・継続の是非を判断する,このとき,判断に用いられるモデルおよび指標が信頼できるか否かを点検することが必要になる.本研究では,このための一つの道具として予測点検接近法を提示し,文献事例および数値例でその性能を評価した.結果として,予測点検接近法は,事前情報,データ情報,事後情報間の整合性を評価し,モデルあるいはそこから導出される諸指標の信頼性を点検できることが示唆された.
  • 丸山 芳人
    2007 年 36 巻 2-3 号 p. 139-145
    発行日: 2007/12/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    正規性の検定に利用される多変量標本歪度・尖度として,Mardia型とSrivastava型の比較を考察した.古くから良く知られている前者に対し,後者に関してはこれまであまり深く研究されていない.本稿では,非正規性の下での後者の理論的な評価を漸近展開の形で与えた.また,両者の数値的な比較についてシミュレーションを行い検証した.
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