応用統計学
Online ISSN : 1883-8081
Print ISSN : 0285-0370
ISSN-L : 0285-0370
40 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
研究論文
  • 白石 高章
    2011 年 40 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル オープンアクセス
    多群2項モデルにおいて,母比率の間の相違に関しての多重比較検定について論じる.比率の間のすべての差の同時区間推定法が,Hochberg and Tamhane (1987) で述べられている.この手法と同様なシングルステップのTukey-Kramer型検定方式を構築することができる.しかしながら,この検定方式は保守度が未知パラメータに依存し制御することができない.この論文では,逆正弦変換による多重比較検定法を提案し,保守度をサイズの比の関数として制御できることを示す.また対照群との多重比較法に関しては,白石(2009)と田中・垂水(1997)はBonferroniの不等式による手法が述べられている.逆正弦変換により,Bonferroniの不等式による手法よりも検出力の高いDunnnett型多重比較検定法を論じることができる.さらにテューキー・ウェルシュの方法とREGW法を改良する閉検定手順も論じる.
  • 下川 敏雄, 辻 光宏, 後藤 昌司
    2011 年 40 巻 1 号 p. 19-40
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル オープンアクセス
    アンサンブル学習法は,樹木モデル(基本学習器)の予測確度を向上させる方法として,統計科学およびデータマイニングの分野で研究されている.アンサンブル学習のモデルは,単一の基本学習器に比べて,劇的にその性能を向上させるものの,モデルを「ブラック・ボックス化」するため,結果に対する解釈は困難である.Friedman and Popescu(2008)は,樹木によって構成される「ルール」をアンサンブルさせる,ルール・アンサンブル法(RuleFit法)を提案している.RuleFit法は,応答に影響を与える基本学習器(ルール)を提示できる.そのため,変数重要度だけでなく,ルール(基本学習器)の重要度を提示できる.RuleFit法では,基本学習器に対して,lasso法による重みを加えることで,不必要な基本学習器を削除する「刈り込み」を有する.ただし,lasso法では,説明変数間の相関が強いときに,過剰刈り込みを行うことが線形モデルにおいて指摘されており(Hastie et al., 2009),RuleFit法においても同様の問題が推察される.その対処法として,本論文では,Elastic Net法(Zou and Hastie, 2005)を基本学習器の重み付けに用いる,修正RuleFit法を提案した.さらに,ルール重要度およびルール重要度をグラフィカルに表示するためのグラフィクスを提示した.修正RuleFit法の性能は,若干の数値検証により確認した.その結果,修正RuleFit法は,既存の手法(MART[Multiple Additive Regression Trees])法(Friedman, 1999; 2001),RandomForest法(Breiman, 2001)に比して良好な結果を示した.また,修正RuleFit法および診断グラフィクスの有用性は,臨床研究に対する文献事例において評価した.そこでは,前立腺癌のバイオマーカに対して影響を与える要因の探索に焦点を当てた.その結果,修正RuleFit法および診断グラフィクスは,ポジティブ・レスポンダー(およびネガティブ・レスポンダー)に対して,有用な示唆を与えることができた.
研究ノート
  • 大倉 征幸, 鎌倉 稔成
    2011 年 40 巻 1 号 p. 41-51
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル オープンアクセス
    ロジスティック回帰モデルを小標本かつ応答変数発現確率が高い条件下または低い条件下で用いる場合,完全分離または準完全分離が生じていないかを確認することが重要である.完全分離または準完全分離が生じていると,最尤推定量は存在しない.しかし,SAS,S-PLUSやRなどの統計ソフトウェアでは,最尤推定値を求めるため,反復法を実行してしまう.SASやS-PLUSと いった商用ソフトウェアでは,完全分離または準完全分離の可能性や反復法が収束しなかったことを警告表示した上で,反復法の結果を表示する.ところが,Rに標準で提供されているglm 関数は,最尤推定値が求まっていないにもかかわらず,そのことを明確に表示せずに反復法の結果を表示してしまう.その場合,回帰パラメータ推定値の標準誤差が大きくなるので,事後的にも標準誤差から完全分離または準完全分離を確認できることを示した.Firth(1993)は,最尤推定量のバイアスを取り除く方法を提案しており,結果として,完全分離または準完全分 離が生じていても,回帰パラメータの推定が可能となり,回帰パラメータ推定値の標準誤差を用いてWald検定が可能である.しかし,最尤法またはFirth法によるWald検定は,小標本かつ応答変数発現確率が高い(または低い)条件下で用いると,第一種過誤の確率が過度に保守的となる.本論文では,完全分離または準完全分離に近い状態となりやすい,小標本かつ応答変数発現確率が高い条件下において,回帰パラメータの検定をブートストラップ法を用いて検定する方法を提案し,帰無仮説の下で第一種過誤の確率をシミュレーションによりWald検定と比較する.ブートストラップ法を用いた検定は,小標本かつ応答変数発現確率が高い条件下で,保守的となる第一種過誤の確率を改善し,回帰パラメータの検定に有用であることを示した.
  • 朝倉 こう子, 上坂 浩之, 杉本 知之, 濱崎 俊光
    2011 年 40 巻 1 号 p. 53-71
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル オープンアクセス
    医学分野では,個体に対して刺激や用量といった処理を与え,特性値の処理前後の二つの値がそれぞれ正規分布に従うとして,それらの変数から導出される「比」(あるいは「変化率」)をもって処理による影響の程度(処理効果)を評価することがある.このとき,解析において,比を選択することは,処理効果が処理前値に比例することが前提とされる.しかし,実際には,比の分布上の性質を十分に考慮せずに,比を用いている場合が多いようである.本稿では,正値をとる二つの変数が2変量正規分布に従うとの仮定のもとで,比の近似分布の特性を吟味し,どのような場合に比の近似分布が正規分布で近似できるかを検討した.そのうえで,比をどのような場面で用いることが適切か,あるいは不適切かを議論した.とくに,1標本における処理前後の値の比較,2標本における処理前後の変化の比較における,比の解析の問題点を明らかにした.
feedback
Top