応用統計学
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47 巻, 1 号
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研究論文
  • 富田 裕章, 藤澤 洋徳, 逸見 昌之
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 47 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/15
    ジャーナル オープンアクセス

    多重代入法(Multiple Imputation; MI)は多分野の研究で欠測データを解析する手法として使われている.多重代入法は非常に使いやすい反面,欠測値に代入する補完値を生成する際に条件付き分布の同定を誤ると偏りのある推定量を導き得るという欠点がある.本研究では条件付き密度推定から導かれる重みを利用した重み付き最尤推定法(Bias-corrected MI; BCMI)に基づく推定量が,目的変数が欠測する場合の回帰分析においても一定の条件下で一致性があることを確認した.さらに,本手法を予測に適用することを検討し,予測精度を向上させるために密度推定によって求めた重みと補完したデータに対する重み付けパラメータを導入し,交差検証によって値を定めるという改良法(BCMI-CV)を提案した.数値実験によって,BCMI-CVは補完の誤り度合いによらず,安定的に予測誤差を小さくするという挙動を示すことを確認した.

  • 井上 友彦, 佐藤 忠彦
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 47 巻 1 号 p. 17-42
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,製薬企業の人的販売(ディテール)に関するストックと閾値効果を考慮した市場反応モデルを提案する.ディテールは製薬マーケティングにおいて多額の投資がなされる主要な操作変数であり,その効果検証と資源配分の最適化に対する経営者の関心は高い.また,顧客(医師)と営業員(MR)の対面コミュニケーションは,企業が長期的な顧客関係性を築くための貴重な接点として,昨今CRMの観点から重要性を増している.本研究ではディテールの市場反応性をモデル化するにあたって,製品訴求と顧客関係構築という質の異なる2種類の作用に着目し,それらを繰越構造を持つ潜在的なストック変数として表現する.2つのストック変数がそれぞれ閾値を伴い,市場反応性を4つのレジームに分ける構造を閾値回帰モデルによって表現した.反応係数,繰越率,閾値の各パラメータは医師ごとに異質であると仮定し,階層ベイズモデルによって定式化した.提案モデルのMCMCによる推定結果から,医師別レジームの分布やレジームによって異なる反応特性を医師の属性とともに解釈し,実務的な示唆を得た.さらに,推定された医師ごとのレジーム分布に基づきクラスタリングを行い,クラスター別の反応性やストック形成に関する特徴を解釈することで,営業資源最適化の方策について考察を与えた.

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