中越地区の地質・構造,構造の発達と石油鉱床の関係について,以上のべてきた事を総括する。
1. 等層厚線図と復元断面図とによって,構造の発達の経過をたどると,地層の堆積と時の経過に伴い,基盤の相対的昇降運動がおこり,安定帯と沈降帯を生ずるが,その位置は時と共に変る。津川期から現世までの変化を辿ると,構造が次のように分類されることが判った。
1) 全期を通じて大体堆または高処として存在した構造。(弥彦,薪津)
2) 古くから堆として存在したが,現在平原下に没している構造。(加茂,見附)
3) 途中で発生し次第に生長,発展してきた構造。(寺泊,尼瀬,西山,柏崎,中央油帯)
4) 初期に発生の萠芽をみせたが,後に一時かくされ,現在再び発達してきたもの。(関原,片貝,小千谷,真人,岩田,八石,鳥越,東山,荷頃,竹沢,田菱山)
2. 含油構造は,合油層準が堆積した時期に堆,乃至は安定帯であったものが多い。
3, 巨視的にみると,この地区の油層はレンズ状であつて,一度集油した油はその後の変動で余り移動しないようである。一つの構造から隣の構造へと云う様な油の移動は考えにくい。したがってこの地区では動水力説はあてはまらない。
4. 火山岩,または火砕岩の油層では,主として裂目による移動,集積が行われているようである。このため,この種の油層の油は熟成度が低いらしい。
5. 今回取扱った火山岩体はいつれも海底噴出で,火山堆を生じ,それが後の石油鉱床成生の遠因をなしている。また,火山岩体は潜丘構造をつくり,不同圧密により集油する可能性が大きい。この種の構造は褶曲に対する抵抗体として働く。
6. 含油(ガス)するためには,ある程度の厚さで地層が連続存在すること,すなわち,地層の欠除のないことが豊ましい。また帽岩が必要であるが,西山泥岩は最もよい帽岩である。
7. 油質は貯溜岩の性質と密な関係がある様である。
8. 以上により局地生成・早期生成説をとりたい。石油の生成・移動・集積の主なるものは遅くとも期の単位で行なわれているものと思われる。
各構造の発生,発達は区々であり,各油田は独自の履歴をもっている。従って,ある構造について,ある層準の出油の可能性をたしかめるためには,その層の堆積した時の構造の位置,その時の集油面積,その時の環境などについて具体的に検討することが大切であるが,それは現在の地質断面のみからは到底判定出来ない。古期からの構造運動,堆積作用を系統的に分析し,時を追っての変化を調べる事が大切である。本文で解明した通り,ある構造のある層準の油層または油徴は,それ自身の独自の経歴をもってそこにあり,まさに,あるべくしてあったと云える。この様な解明法をさらに徹底的に実施すれば,油出の発見率は帯まる筈である。ただ,ここで問題となるのは平原下の潜在構造である。まつ第一に物理探鉱を行わねばならぬ事はもちろんであるが,上記のような分析こそ必要である。そのためには,ある程度の危惧をおさえて, pioneer boringを敢行し,データを収集することが肝要であろう。
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