固相表面に付着する微生物の菌体数は液相に存在する浮遊菌より大きいことが知られている。MEORにおいて微生物の活動を効率化するためには, 貯留層の対象空間おいて微生物の付着量を大きくする必要がある。本研究では, 流動を伴う場合の微生物の付着挙動を理解するために, 垂直二次元の多孔質体を平行平板の充填層により表し, そのなかにおける微生物の付着挙動と流体流速との関係について調べた。
微生物は化学走性および自走性のない微生物として乳酸桿菌を用い, 栄養塩を制限し増殖のない条件とした。実験では, 微生物の懸濁液を所定時間, 所定流量にて多孔質体に注入した。微生物懸濁液の注入後, 蒸留水により押し流し, 流出する微生物濃度の変化を濁度により連続的に定量化した。得られた流出微生物濃度を比較的簡便な二次元の数学モデルにより解析した。数学モデルは移流項, 分散項および付着項を含み, 浮力の効果も考慮した。付着項にはこれまで多く適用されてきたラングミュアー型の速度式を用いた。
実験結果より, 注入したすべての微生物が流出するのではなく, 一部の微生物は固相に付着することを確認した。注入した微生物量に対する流出した微生物量を流出率として定義した。また, 数学モデルによる解析から微生物の固相への見かけの最大付着量を評価した。微生物は注入濃度および注入流速によって, 最大付着量は異なり, 流出率も変化した。注入流速に対する注入微生物量の比は, それらを整理する1つのパラメータである。実験結果は, その比に最大付着量と流出率について最適な値が存在することを示した。このことは, 仮に菌体濃度差による浮力の効果を抑制するオペレーションを選んだとしても, MEORの設計精度向上に対する二次元解析の必要性を示唆している。
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