茨城県桜川の中・下流低地における過去32,000年間の環境変遷史を, テフラ,
14C年代, 花粉分析などのデータに基づき明らかにした. 同低地に分布する小田面や矢作面などの古鬼怒川による立川期の段丘形成後, 古鬼怒川は協和台地を分水界にして争奪され, 流路を桜川低地から小貝川低地に移した. この時, 桜川中流低地では立川期段丘は下刻されて浅い谷を形成, さらにその谷を桜川系の礫からなる下大島礫層, その上位の泥炭を主とする堆積物, 最上位の水成から風成のローム層で構成される下大島層が埋積し, 下大島面を形成した.
下大島礫層が下流低地の沖積層基底礫層 (BG) に対比されること, 下大島層の層位学的データや花粉分析により, この地域における最終氷期最寒冷期は2.1~1.7万年と推定されることから, 桜川低地におけるBGは最終氷期最寒冷期に先行して堆積し, その年代は2.4万年前頃まで遡る可能性が高い. さらに中流低地では, 下大島層を下刻して完新世基底礫層 (HBG) に相当する塚田砂礫層が堆積した. この河成作用が活発化した時期は, Younger Dryas Event に関連する可能性が強い. また下流低地では, 塚田砂礫層を基底に縄文海進にともなう海域の飯田層下部層, 後期完新世の河成堆積物の飯田層上部層の順に埋積して, 桜川低地が形成された.
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