第四紀研究
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38 巻, 1 号
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  • 山根 雅之, 大場 忠道
    1999 年 38 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 1999/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    三陸海岸の気仙沼沖の水深2,353mから採取された1本のピストンコア(KH94-3,LM-8)について,浮遊性有孔虫の温暖種の産出頻度,底生および浮遊性有孔虫殻の酸素同位体比(18O/16O),有機炭素含有量を測定した.その結果,浮遊性有孔虫の温暖種の産出は,間氷期(酸素同位体比ステージ51とステージ1)に多く,氷期(ステージ4,ステージ3,ステージ2)に少なく,三陸沖では黒潮の暖水塊の影響がステージ51とステージ1で強く,ステージ4~2で弱かったことが判明した.LM-8コアの底生有孔虫殻のδ18Oカーブは,外洋域の標準的なカーブとよく一致したが,浮遊性有孔虫殻のδ18Oカーブは外洋域のそれとは多少異なり,気仙沼沖の海洋表層の環境が過去9万年間に変動していたことが示唆された.また,有機炭素沈積量はステージ51,ステージ1およびステージ2で大きく,これらの時代に海洋表層の生物生産量が増加したことが推定された.さらに,鹿島灘沖(CH84-04)・三陸沖(LM-8)・襟裳岬西方(CH84-14)の3本の海底コアについて,浮遊性有孔虫殻の酸素同位体比から古水温を算出したところ,鹿島灘沖と三陸沖では最終氷期最寒期に,表層付近の水温が7.6℃と4.4℃も低下したと推定された.このような著しい水温低下は,最終氷期最寒期(Last Glacial Maximum, LGM)に三陸沖から鹿島灘沖にかけて,混合水塊や親潮の南下が著しかったことによって引き起こされたと考えられる.
  • 宍倉 正展
    1999 年 38 巻 1 号 p. 17-28
    発行日: 1999/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    房総半島南部の保田低地には,高位から保田I面,II面,III面,IV面の4面の完新世海岸段丘が発達する.詳細な地形・地質調査の結果,従来,元禄地震時(1703年)の地震隆起に伴い形成されたと考えられていた最低位の保田IV面は,段丘面上の泥炭の年代,歴史的遺物の証拠から元禄地震以前に離水していたことが明らかになった.さらに,地形的証拠と古文書・古絵図の記載から判断すると,保田低地は元禄地震時に沈降したと考えられる.また,保田I面,保田II面は4,350yrs BPより前,保田III面は2,200yrs BPより前に離水しており,いわゆる元禄型地震によって離水した沼面群とは対比できない可能性がある.これは,元禄型地震のたびに保田低地が沈降していることを示唆する.保田面群の成因を大正型地震によるものと考えれば,保田I面の旧汀線高度から,大正型地震の平均再来周期は670年以内であると推測される.
  • 白石 建雄, 竹内 貞子
    1999 年 38 巻 1 号 p. 29-39
    発行日: 1999/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    秋田県男鹿半島の安田海岸では,海成更新統が連続露出し,上部更新統層序は安田層とその上位に不整合関係で重なる潟西層に区分されていた.しかし,火山灰層序学,含有動植物化石群集組成にもとづく検討により,安田層は安田海岸から約5km東方の模式地域における潟西層の一部で,同層の沖浜堆積相であることが判明し,安田砂部層と再定義した.安田海岸では,安田砂部層以上が潟西層を構成し,下位の鮪川層を不整合関係で覆う.ここでの潟西層には,模式地域の潟西層の離水層準より上位で,酸素同位体比ステージ5aに対比される可能性がある海成層が含まれる.また,模式地域における潟西層の最下部の部層は,洞爺火山灰との層位関係ならびに含有動植物化石群集の特徴から,安田海岸における鮪川層最上部に対比される可能性がある.それゆえ,男鹿半島において上部更新統層序を確立するためには,潟西層の下限と上限の確定に関連した上記の課題を解明する必要がある.
  • 藤原 治, 増田 富士雄, 酒井 哲弥, 入月 俊明, 布施 圭介
    1999 年 38 巻 1 号 p. 41-58
    発行日: 1999/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    内湾(溺れ谷)の泥底に砂や礫を再堆積させるイベントが,完新世の三浦半島と房総半島南部で繰り返し発生したことが,沖積低地で行ったボーリング調査によって明らかになった.これらの再堆積層は,上方へ細粒化する淘汰の悪い泥質砂層や砂質礫層からなり,他生の貝化石や粘土礫を多く含み,生痕が発達し,自生の貝化石を含む泥層を削り込んで覆う.これらの再堆積層は,3ヵ所の沖積低地で掘削した6本のボーリング・コアで認められ,加速器質量分析計(AMS)による79個の14C年代測定値に基づいて,近似した年代をもつ7つの層(下位からT1~T7)にまとめられる.
    T3~T7は,水深10~20mの内湾中央部に堆積したものであるが,岩礁などに棲む貝化石を泥底の群集と混合して含む.また,貝化石は下位層と14C年代値が逆転するものがある.T1,T2は上述した異常堆積物と類似した堆積構造や化石を含み,特に貝形虫化石群集は外洋水が内湾奥の汽水域へ流入したことを示唆している.
    T1~T7の堆積構造,化石の種構成,14C年代値は,海底および海岸の侵食と削剥された堆積物の湾央への運搬が強い流れに起因することを示している.さらに,T3~T7は,相模トラフ周辺で発生した巨大地震に伴う海岸段丘の離水時期と年代が近似する.
    以上のことから,T1~T7は海底地震に伴う津波で形成されたことが強く示唆される.これらの津波は,過去約10,000年の間に,400年から2,000年の間隔で発生した.
  • 苅谷 愛彦, 水野 清秀, 永井 節治
    1999 年 38 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 1999/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    木曽山脈西縁に存在する馬籠峠断層は,右横ずれ変位の優勢な全長約20kmの活断層である.この断層の南部における最近の活動が,新たに生じた断層露頭の記載とそこで得られた5点の14C年代値にもとづいて明らかにされた.断層変位を受けた埋没腐植土層と変位を受けていない現成の腐植土層の年代から,確実性の高いイベントが8,400~3,800cal yrs BPの間に,少なくとも1回生じたと考えられる.しかし,これが最新活動にあたるかどうかは今後さらに検討する必要がある.
  • 野田 啓司, 小澤 大成, 奥村 清
    1999 年 38 巻 1 号 p. 65-73
    発行日: 1999/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    神奈川県の上部鮮新統中津層群大塚層中にザクロ石を含むテフラ層を発見し,これをMk19と命名した.Mk19は層厚11cm,最大粒径10mmの白色軽石層で,Ta型,Tb型の火山ガラスを高い割合で含み,結晶はおもに斜長石および石英の軽鉱物とザクロ石,角閃石,不透明鉱物,黒雲母の重鉱物より構成される.ザクロ石の化学組成は,アルマンディン-スペッサルティン固溶体である.Mk19は,その上位に位置する石英に富むMk20とのセットで,近隣地域の地層を対比する上できわめて有効と考えられる.Mk19と,含ザクロ石テフラ層として知られる新潟県の魚沼層群および灰爪・西山層中のテフラ層や静岡県掛川層群中のテフラ層,神奈川県丹沢細川谷含ザクロ石流紋岩との比較を行ったが,鉱物組成やザクロ石の化学組成が異なり,対比されるものはなかった.
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