第四紀研究
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39 巻 , 1 号
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  • 多 里英, 公文 富士夫, 小林 舞子, 酒井 潤一
    2000 年 39 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    青木湖周辺には,後期更新世から完新世にかけての,おもに河成や湖成の堆積物が断片的に分布しており,下位より藪沢層,崩沢層,神城砂礫層,佐野坂崩壊堆積物,青木湖成段丘堆積物,青木湖底堆積物に分けられる.指標テフラと岩相対比によって,それらの相互関係を明らかにした.佐野坂崩壊堆積物の上位には,Dpm火山灰層がのるとされていたが,それを再堆積物と判断し,周辺の地史を次のように推定した.
    藪沢層は,比較的広い谷の中を南がら北へ流れる蛇行河川によって形成された.その時代は5万年前以前の寒冷な時期である.約5万年前,その河川は狭い谷の中を流れる網状河川に変化した.この堆積環境の変化は,DKP火山灰層を挾む崩沢層と神城砂礫層中部が礫を主体とすることにより示されている.約3万年前に,西方の仁科山地で大規模な地すべり崩壊が起こり,佐野坂丘陵が形成された.この崩壊堆積物は川をせき止め,丘陵の南側に深い湖(青木湖)を形成した.佐野坂丘陵の北側の凹地には支谷からの堆積物供給が多く,徐々に埋積されて,現在の神城盆地を形成するようになった.
  • 斉藤 尚人
    2000 年 39 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    八ヶ岳東麓から関東平野にかけて分布する中期更新世テフラの対比を検討した.層序学的位置,岩相・岩石記載的特徴から,房総半島の藪層中に挾在するYb1・Yb1直下の軽石層(Yb0.5)をそれぞれ八ヶ岳のKt-1・2Py.黄Pm.にセットで対比した.また,房総半島の地蔵堂層中に挾在するJ4・J4upを,それぞれ関東平野のTE-5・TE-5up,HBP・HBPupにセットで対比し,J4は八ヶ岳のB0に対比されることを明らかにした.
    房総半島のJ4は酸素同位体ステージ11.3の最温暖期直後の時期に,Yb1はステージ9.1の最温暖期の直前の時期に降灰した.Yb1とKt-1とを対比したことで,ステージ9.3の時代の大阪層群のMa10に対比される海成層は,房総半島に存在しないという可能性が指摘される.また,中部地方に広く分布する指標テフラであるAPmテフラ群は,ステージ11.2から11.1にかけての時期に降灰したものと考えられる.
  • 高地 セリア好美, 佐瀬 隆, 井上 克弘
    2000 年 39 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    北上山地尾根沿いには荒廃裸地が広く分布している.この地域では江戸時代から天然ブナを牧草地にするため伐採が行われ,厳しい周氷河的環境が荒廃裸地を生じさせたと考えられている.本研究では,北上山地における土壌荒廃の開始前後の環境状態を植物珪酸体分析,腐植分析から明らかにする.
    森林が伐採される以前の表土である埋没A層は,ササおよびブナ起源の珪酸体で特徴づけられる植物珪酸体群集を有する.このことは,荒廃地形成以前ササを林床に伴うブナ林が成立していたことを示す.一方,荒廃裸地の拡大に伴い形成された風積土層の植物珪酸体群集は,寒冷型イネ科起源のウシノケグサ型が温暖型イネ科起源のキビ型を上回る特徴を有し,さらに,放牧草原の優占種であるシバ属起源の珪酸体を含んでいる.この組成は,森林伐採後に卓越した周氷河的環境と調和的である.また,風積土層の腐植化程度が低く,このことも厳しい環境条件に対応する.
    これらの結果は,この地域が草原に被覆されていても依然として土壌荒廃の危険性をはらんでいることを示している.
  • 中村 有吾, 平川 一臣, 岩崎 正吾, 澤柿 教伸
    2000 年 39 巻 1 号 p. 33-43
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    日高山脈エサオマントッタベツ岳,トッタベツ岳,および七ツ沼カールにおいて,氷河堆積物中に認められた6層のテフラについて,主として火山ガラスおよび斜方輝石の屈折率にもとづいて十勝平野の模式試料と対比・同定した.その結果,日高山脈には,洞爺(Toya),クッタラ6(Kt-6),楽古パミス3(RP3),クッタラ3(Kt-3),支笏1(Spfa-1),恵庭a(En-a)が分布することが明らかになった.これらの火山灰の発見・同定によって,日高山脈では(1)最終氷期における氷河最前進期はSpfa-1降下直後であること,(2)Kt-6降下頃にはすでに氷河はカール氷河から谷氷河へと成長しつつあったこと,(3)最終氷期以前にも氷河作用があったこと,などについて詳しく検討することが可能になった.
    十勝平野においては,従来の知見にくわえて,野塚パミス(NzP:新称)を新たに認定・記載した.NzPは,十勝平野に広く分布する中期更新世示標テフラである可能性が高い.
  • 太田 陽子, 大村 明雄
    2000 年 39 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    喜界島のサンゴ礁段丘に関する最近の結果を議論するために,1998年2月にシンポジウムが実施された.その際の序論として,筆者らは喜界島の更新世および完新世のサンゴ礁段丘に関する従来の成果を展望し,問題点を整理した.またシンポジウムでは,サンゴ礁段丘の模式地の一つであるパプアニューギニア,ヒュオン半島のサンゴ礁段丘で得られた結果との比較も試みた.
  • 大村 明雄, 佐々木 圭一, 寺尾 大介, 村上 和男
    2000 年 39 巻 1 号 p. 55-68
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    喜界島に分布する更新統は,酸素同位体ステージ9以前の中部更新統と,その上位を不整合に覆う上部更新統から成る.最近の地質調査と230Th/234U年代測定により,後者にはステージ5e・5cおよび5aの礁成サンゴ石灰岩のほか,70~40ka当時の礁成石灰岩も含まれ,それが喜界島の南西部から中西部を経て北東部までの高度20~65mの地域に点在することが明らかになった.本島の段丘構成層としての上部更新統は,いずれの段丘においても薄く,その岩相が側方へ著しく変化する.それは,各更新世段丘の侵食作用が,ステージ9以前の更新世中期からステージ3までの堆積年代の異なる多様な礁複合体構成物を同一段丘面上に露出させたためといえる.
    また,本島でもっとも広い,中川(1969)が川峰段丘と呼んだ段丘下には,ステージ5e以降に堆積した各種の炭酸塩堆積物が認められる.それらは下位から上位に向け,苔虫質石灰岩・大型底生有孔虫石灰岩・石灰藻球石灰岩・細粒砕屑石灰岩・粗粒砕屑石灰岩およびサンゴ石灰岩と岩相を変化させている.このような岩相の垂直変化を示す堆積物は,Tsuji(1993)によって報告された宮古諸島沖の島棚-島棚斜面の現世炭酸塩堆積相やそれらの分布水深との比較から,ステージ5eからステージ3にかけての相対的海面低下期に,外側島棚から水深5m以浅に堆積した上方浅海化シークエンスであるといえる.
  • 木山 修, 山田 努, 中森 亨, 井龍 康文
    2000 年 39 巻 1 号 p. 69-80
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    鹿児島県喜界島の志戸桶周辺の現生および完新世隆起サンゴ礁から得られた化石造礁サンゴPorites sp.の炭素・酸素同位体比を測定した.同時に,その周辺海域の全天日射量・表層海水温・塩分に関するデータを収集した.現生サンゴ骨格の炭素・酸素同位体比は明瞭な年周期変化を示し,年輪および酸素同位体比変化の水温依存性を用いて時系列データに変換した.その結果,両同位体比の変化は逆相関の関係にあり,炭素同位体比の変化は酸素同位体比の変化よりも1~2ヵ月位相が早いことが判明した.また,酸素同位体比と表層海水温は強い負の相関を,炭素同位体比と全天日射量は弱い正の相関を持つことが明らかになった.現生サンゴ骨格の酸素同位体比と現在の表層海水温をもとに,酸素同位体比温度計を作成した.この温度計に過去の氷床量と塩分の変化による影響を加え,化石サンゴ骨格の酸素同位体比から古海水温を求める式を作成した.これに従って,9.2kyrs BPの年平均海水温を計算したところ,現在よりも2.7℃高い値が得られた.この結果は,古海洋学的知見に基づく一般的な見積もり(0~-2℃)よりもかなり高い.その原因として,現時点では造礁サンゴのvital effectに関わる変化分が十分に評価できていないことがあげられる.
  • 太田 陽子, 佐々木 圭一, 大村 明雄, 野沢 香代
    2000 年 39 巻 1 号 p. 81-95
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    喜界島北東部の志戸桶海岸において,完新世サンゴ礁のボーリング調査および地表調査,サンゴの230Th/234U年代測定などに基づいて,後氷期海進に伴うサンゴ礁の形成過程と,その後の離水に伴う段丘の分化を論じた.本地域でのサンゴ礁の成長は,海面上昇におくれたcatch-up typeである.そのために,最高位のI面にはサンゴ石灰岩はわずかしかみられない.それに代わって,5.3kaに離水したII面がサンゴ石灰岩の堆積面で,礁池と礁嶺を伴う典型的な隆起サンゴ礁の形態をとる.段丘III,IVは礁斜面に発達した狭い波食面で,一部に若いサンゴ石灰岩を伴う.段丘の分化は間欠的な離水,おそらく地震隆起によるが,II面を除いて離水期を確定できなかった.さらにパプアニューギニア,ヒュオン半島と完新世サンゴ礁段丘との比較により,サンゴ礁の成長の速度や段丘の形態の差を明らかにした.ヒュオン半島では,最高位の完新世段丘はkeep-up typeのサンゴ礁からなる堆積性の面であり,地震隆起による多段化が顕著で,その離水期が確定できたことが,喜界島との大きな相異である.
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