信濃川流域の津南町卯ノ木地域において,6枚の指標テフラをもとに第四紀後期の段丘面区分を行った.特に,そのうちの1枚のテフラは5,000年前頃のものとみられ,「完新世段丘」の編年・対比に重要である.当地域の段丘は,低位からI(I1,I2),II(II1,II2),III(III1,III2),IV,V(V1,V2,V3),VI(VI1,VI2)およびVII段丘面(群)に区分される.
これらの段丘面の高度や分布から,第四紀後期の卯ノ木地域の構造運動を,以下のように推定した.卯ノ木凹地帯は,津南断層の活動に伴って,VI1段丘礫層が変形したことによって生じた凹地帯で,その形成時期は約50,000年前にさかのぼる.凹地帯を形成した「西部」ブロックの傾動を伴う隆起運動は,特に約50,000~25,000年前に活発であった.当地域では,約25,000年前以降に最大52mの下方侵食が生じ,計8段の段丘が形成された.下方侵食の主因は,完新世まで引き続く隆起運動によるものと推定される.
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