第四紀研究
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41 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 片川 秀基, 穴田 文浩, 吉田 進
    2002 年 41 巻 3 号 p. 145-160
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    邑知平野南部地区を横断する羽咋市宿屋-本江間で,標高-60m程度までボーリング調査を実施し,下位からVI層~I層の第四紀層を認定した.V層~I層は,火山灰分析および14C年代測定による堆積年代,堆積相から推定された堆積環境および花粉分析から推定された古気候によれば,酸素同位体ステージ6~5e以降の地層である.V~I層はそれぞれステージ6~5e,5d~5b,5b~5.0,4~2,2~1に対比できる.また,これらの地層について,古気候と堆積物の構成から,堆積当時の深度と現在の分布深度を比較し,眉丈山地や石動・宝達山地に対する邑知平野の相対的な沈降の時期について検討した.その結果,眉丈山地に対する邑知平野の相対的な沈降はV層堆積後,IV層堆積以前に終了している.一方,石動・宝達山地に対する邑知平野の相対的な沈降もIV層堆積開始以降認められない.
  • 大阪府高槻市小寺池の例
    槻木 玲美, 吉川 周作, 後藤 敏一
    2002 年 41 巻 3 号 p. 161-170
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    ここ数百年における人間活動の活発化が,溜池の水域生態系にどのような影響を与えてきたかを歴史的に明らかにすることを目的とし,池底堆積物を用いて珪藻およびリン・重金属(銅・亜鉛)と年代推定のためのセシウム分析を行った.
    調査対象の小寺池は,大阪府の高槻市に位置する沖積低地上の皿池で,池底下の堆積物2.2mを用いて約200年間の水域環境変遷の解明を試みた.その結果,(1)溜池堆積物は数年単位の高時間分解能で解析が可能であること,(2)1955年頃より栄養塩類の指標となるリンの流入量が大幅に増え,珪藻の浮遊性優占種が短期間で段階的にAulacoseira subarctica f. subborealisからStephanodiscus delicatus, S. hantzschii,さらにCyclotella meneghinianaへと変化した.この変化は人為的攪乱による水質変化に対応した珪藻群集の応答過程,すなわち富栄養化の段階を示唆する可能性が高い.また,(3)ここ数十年での珪藻の付着性優占種のNitzschia paleaからAchnanthes minutissima var. minutissimaへの変化は,現在から約150年ほど前の時代に優占していた種の復帰であり,下水道など社会的基盤の整備による汚濁負荷が減少したことに起因する可能性が高いことが明らかとなった.
  • 三好 教夫, 片岡 裕子, 志知 幸治, 尾田 武文, 高原 光, 長谷 義隆, 河室 公康, E. V. Bezrukova
    2002 年 41 巻 3 号 p. 171-184
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    バイカル湖の湖底から得られた5.1Maをカバーする全長200mコア(BDP96-1)のうち,第四紀に相当する上部の深度80m以浅についての花粉分析を行い,植生変遷について考察した.産出した化石花粉・胞子のうち51種類を同定したが,マツ科針葉樹が70~80%を占め,その産出状況に特色がみられた.すなわち,大量の化石花粉・胞子の産出する多産層(間氷期,湿潤期)と,草本花粉・胞子がごくわずかに産出するだけの稀産層(氷期,乾燥期)が交互に現れている.上部80mの2Maに32回のサイクルが認められ,δ18O曲線とほぼ調和的な環境変動を記録している.また,マツ科のツガ属と落葉広葉樹のクマシデ属,コナラ亜属,クリ属,ニレ科,ハシバミ属,カエデ属は第四紀前半に絶滅してしまい,後半以降のバイカル湖周辺のタイガはマツ科針葉樹とカバノキ属を中心とした比較的単純な植生からなる森林が継続した.
  • 安井 賢, 鴨井 幸彦, 小林 巖雄, 卜部 厚志, 渡辺 秀男, 見方 功
    2002 年 41 巻 3 号 p. 185-197
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    越後平野北部における沖積層層序と堆積環境の変遷を解析し,縄文海進期に形成された汽水湖沼の成立過程とその変遷について検討した.その結果は以下のとおりである.(1)8,000年前以前には胎内川扇状地と加治川扇状地との間は低地であった.約8,000年前に海水準の上昇とともに,低地前面に砂州が発達し,低塩分の汽水湖沼が形成された.汽水湖沼の出口は加治川以南に求められる.(2)汽水湖沼は次第に塩分を減少していき,海水や淡水が交互に流入する時期を経て,約5,000年頃までに淡水湖化した.(3)淡水湖は約5,000年前以降に北部から埋積されたが,9世紀になって水域が拡大し,現在の塩津潟となった.
  • 信濃川ネオテクトニクス団体研究グループ
    2002 年 41 巻 3 号 p. 199-212
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    信濃川流域の津南町卯ノ木地域において,6枚の指標テフラをもとに第四紀後期の段丘面区分を行った.特に,そのうちの1枚のテフラは5,000年前頃のものとみられ,「完新世段丘」の編年・対比に重要である.当地域の段丘は,低位からI(I1,I2),II(II1,II2),III(III1,III2),IV,V(V1,V2,V3),VI(VI1,VI2)およびVII段丘面(群)に区分される.
    これらの段丘面の高度や分布から,第四紀後期の卯ノ木地域の構造運動を,以下のように推定した.卯ノ木凹地帯は,津南断層の活動に伴って,VI1段丘礫層が変形したことによって生じた凹地帯で,その形成時期は約50,000年前にさかのぼる.凹地帯を形成した「西部」ブロックの傾動を伴う隆起運動は,特に約50,000~25,000年前に活発であった.当地域では,約25,000年前以降に最大52mの下方侵食が生じ,計8段の段丘が形成された.下方侵食の主因は,完新世まで引き続く隆起運動によるものと推定される.
  • 熊原 康博, 長岡 信治
    2002 年 41 巻 3 号 p. 213-219
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    本稿では四国南西部,松田川流域で見いだされた小川テフラ(新称)を記載し,本テフラと中部九州・九重火山から噴出した九重第一テフラとの対比を試みた.小川テフラは層厚20~40cm,中~細粒砂サイズの結晶質降下軽石層で,その鉱物組成は多量の普通角閃石と少量の斜方輝石・黒雲母・石英・磁鉄鉱からなる.小川テフラの層位は,鬼界アカホヤテフラ・姶良Tnテフラの下位に位置する.鉱物組成・重鉱物比・含有鉱物の屈折率の一致から,小川テフラは九重第一テフラに対比できる.また,広域テフラとの層位から推定した小川テフラの降下年代は,70~80kaに降下した九重第一テフラの年代と矛盾しない.
    小川テフラとの層位関係をもとに,松田川中~下流に分布する低位段丘構成層が,70~80ka前後に堆積したと推定された.
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