第四紀研究
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42 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 松本 建速
    2003 年 42 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2003/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    東北北部地域の8~11世紀の土器胎土と第四紀層粘土を,誘導結合プラズマ発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometry: ICP-AES)によって分析した.土器胎土の化学組成は,遺跡周辺の第四紀層の粘土の化学成分に類似していた.東北北部地域では,土器胎土や第四紀層の粘土に含まれるCa,Na,Kは,日本海側から太平洋側に向かって系統的に増減していた.これらの元素の含有量の変化傾向は,東北地方の第四紀火山噴出物の場合と類似していた.そして,土器胎土とされた第四紀層の粘土は,周辺の第四紀火山噴出物が起源であると予想した.
    長石を構成する主要元素のうち,Ca,Na,Kを用いてK/Na+CaとCa/Na+Kという指標を作った.マフィック鉱物を構成する主要元素のうちTi,Fe,Mgと,粘土鉱物を構成する主要な元素であるAlを用いて,Ti/Al+Fe+Mgという指標を作った.それらの指標の値は,日本海側地域から太平洋側地域へと系統的に変化していた.これらの指標の値から,東北北部地域に関しては土器胎土の産地推定が可能である.
    その結果,今回分析された東北北部地域の8~11世紀の土師器は,遺跡周辺で作られたものがそれぞれの遺跡で利用されており,広範囲での流通はなかったことがわかった.
  • 公文 富士夫, 河合 小百合, 井内 美郎
    2003 年 42 巻 1 号 p. 13-26
    発行日: 2003/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    1988年に野尻湖湖底から採取されたオールコア試料の上部について,30~50年間隔の精度で有機炭素(TOC)・全窒素(TN)の測定と花粉分析を行った.
    4点の14C年代測定,鬼界アカホヤ(K-Ah)および姶良Tn(AT)の指標火山灰年代に基づいて推定した堆積年代と,TOC・TNおよび花粉の分析結果に基づくと,遅くとも14C年代で1.4~1.5万年前より前には落葉広葉樹花粉の増加で示されるような温暖化が始まり,以後,「寒の戻り」を伴いながら約1万年前まで温暖化が進行した.約1.3万年(較正年代1.5万年前)前後には,「寒の戻り」を示す亜寒帯針葉樹花粉の明瞭な増加が認められる.約1,2万年前(較正年代1.4万年前)には,広葉樹花粉の急増と針葉樹花粉の激減があり,同時に全有機炭素・窒素量の激増も認められ,短期間のうちに急激に温暖化が進行したと推定される.なお,14C年代で約1.45万年前にも微弱な広葉樹花粉の減少が認められる.
    これらの気候変動のパターンは,北大西洋地域の気候イベント(新旧ドリアス期など)とよく似ているが,本稿における編年に基づけば,北大西洋地域よりもそれぞれ2,000~3,000年ほど古いようにみえる.較正年代で約1.3万年前と9千年前においても,軽微な気候変動が認められ,そのうちの後者はボレアル期に対比できる.
  • 藤原 治, 鎌滝 孝信
    2003 年 42 巻 1 号 p. 27-40
    発行日: 2003/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    14C年代測定には,堆積プロセスを通じて異なる年代をもつ貝殻が混在すること(堆積学的時間平均化)による不確実性を伴う.その幅は,層厚30cm以下の完新世の貝化石層でも数百年から6,500年にわたることが,房総半島の30枚の貝化石層から採取された252個の貝殻のAMS 14C年代測定値から示された.
    堆積学的時間平均化の影響は,地層の堆積環境(古地理,堆積相,生物群集)と矛盾しない同相的な貝殻を選び,さらに海底での滞留時間が短く磨耗していない貝殻を測定することによって,ある程度排除できる.同相的で保存のよい貝殻の年代測定値は,どの貝化石層の中でも年代が最も若い方へ収束し,かつ堆積シーケンスの中で一貫して上方へ若くなり,“真の堆積年代”に近づいていることを示す.
    上記の基準で試料を選別しても逆転する年代値は,堆積シーケンス中で測定された多くの年代値が示す全体傾向と比較すると,再堆積イベント(例えば,津波堆積物)を示す鍵になる場合がある.
  • 佐瀬 隆, 細野 衛, バルドマン ゲオルク, 木村 準, 青木 久美子
    2003 年 42 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2003/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    ドイツ,ライン川中流域のラーハーゼーテフラに埋没するアレレード土壌は,イチゴツナギ亜科起源のウシノケグサ型植物珪酸体が優勢な珪酸体群集を有している.したがって,13,000年前(較正年代)のころ,ラーハーゼー火山周辺ではイチゴツナギ亜科が明らかに優占していた.この珪酸体群集は,ラーハーゼーテフラの基底から検出されているウシノケグサ属などのイチゴツナギ亜科の大型化石を含むMendigフロラに対応するものである.
  • 熊木 洋太, 今給黎 哲郎
    2003 年 42 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2003/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
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