第四紀研究
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42 巻, 3 号
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  • 公文 富士夫, 三宅 康幸, 赤羽 貞幸, 鈴木 毅彦, 堤 隆
    2003 年 42 巻 3 号 p. 125-126
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
  • 原山 智, 大藪 圭一郎, 深山 裕永, 足立 英彦, 宿輪 隆太
    2003 年 42 巻 3 号 p. 127-140
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    飛騨山脈の隆起については,鮮新世後期から更新世初頭(2.7~1.5Ma)にかけて,最初の極大期があったとする点では,多くの研究者の意見が一致している.しかし,その後の第四紀の期間にテクトニックな隆起があったかどうかでは,意見が分かれていた.山麓の堆積物から隆起時期を推定する方法では,山脈の隆起がテクトニックなのか,アイソスタティックなのか,判定困難なため,本研究では飛騨山脈,爺ヶ岳一帯に分布する鮮新世後期~前期更新世の火山岩類の構造を解析した.この結果,これらの火山岩類はコールドロンをなしており,東に70°前後傾動していることが判明した.南方の高瀬川流域や槍穂高連峰での資料を加味すると,前期更新世後半(1.3Ma~)以降,飛騨山脈東半部の広い範囲で,東西圧縮場のもとでの挫屈による傾動・隆起を生じていることが明らかとなり,飛騨山脈の2段階にわたるテクトニックな隆起運動が明らかとなった.
  • 及川 輝樹
    2003 年 42 巻 3 号 p. 141-156
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    飛騨山脈の火成活動の消長と,山脈の隆起により生産された礫層の形成時期には,よい同時性が認められる.それは,2.5~1.5Ma(Stage I)と0.8~0Ma(Stage III)における火山活動の増大と周辺堆積盆への礫層の供給の時期であり,その間の1.5~0.8Ma(Stage II)には火山活動が低調で,周辺堆積盆における礫層の堆積が停止している.このことから,飛騨山脈は,激しい火成活動を伴いながら,3Ma以降に2度大きく隆起しているといえる.
    既知の広域テクトニクスの解析結果と隆起モデルから,各時期の隆起メカニズムを考察する.Stage Iでは伸張から中間応力場下での地殻へのマグマの濃集と地殻の厚化によるアイソスタティックな隆起が考えられる.一方,Stage IIIでは,この地域が圧縮場に変化し,マグマの熱によって弾性的厚さが薄くなった地殻が座屈変形し隆起したモデルが考えられる.このように飛騨山脈は,大規模なマグマの貫入・定置・熱の影響と,伸張から圧縮場への広域テクトニクスの変化とが合わさって形成された山脈といえる.
  • 鈴木 毅彦
    2003 年 42 巻 3 号 p. 157-163
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    中部山岳域周辺に分布する中・後期更新世テフラに関するこれまでの研究動向を探るとともに,現在残されている諸問題と今後の展望について論じた.本地域の火山で発生したプリニー式噴火による後期更新世テフラおよび同時代の広域テフラについては,すでに層序・分布はほぼ解明されている.しかし,立山DテフラとAso-3については,それぞれ年代や認定について不明な点が多く,飛騨山脈周辺河谷におけるMIS5e前後の気候段丘・氷河消長史の編年に問題を残している.中期更新世テフラの層序・分布については不明な点も多いが,飯縄上樽aテフラ,大町APmテフラ群,上宝テフラなど,最近になり詳細が明らかにされたテフラもある.今後,ローカルなテフラを追跡して層序・分布を明らかにし,応用研究として長期にわたる噴火史や盆地・山地の形成史の構築,堆積物の編年などを進める必要がある.
  • チベット高原とWest Pacific Warm Water Poolの役割
    福澤 仁之, 斎藤 耕志, 藤原 治
    2003 年 42 巻 3 号 p. 165-180
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    最近,地球表層環境に強いインパクトを与えて,突然かつ急激なグローバルな気候変動を起こすトリガーについて多くの議論がなされている.とくに重要な発現地として,(1)北部大西洋,(2)南極大陸周辺,および(3)西部太平洋暖水域(West Pacific Warm Water Pool: WWP)があげられ,それらの地域における変動の先行および遅延について,新知見が得られつある.日本列島を含む東アジアの気候変動は,基本的に西部太平洋暖水域の高気圧からチベット高原の低気圧に流れ込む東アジア夏季モンスーンによって強い影響を受けている.水月湖の年縞堆積物における風成塵・炭素フラックスの検討によれば,グリーンランドを含む北部大西洋周辺に比べて,東アジアにおける晩氷期のベーリング期に相当する温暖化時期は1,000年程度先行していることが明らかになった.とくに,水月湖における夏季表層水温の上昇の始まりは18,000~16,000年前であり,それによる基礎生産量の増加も確認された.
    一方,南シナ海における海洋堆積物コアには,西部太平洋暖水域に起動された夏季モンスーン活動の活発化イベントが17,000年前から10,000年前にかけて9回も記録されていたが,この活発化イベントも諏訪湖湖底堆積物に降水量の増加イベントとして,ほぼ同時に記録されていた.すなわち,東アジアにおける更新世以降の気候変動のトリガーは,年縞が認められたり,高分解能な14C年代測定が行われた湖沼堆積物による解析から,WWPの水温変化の影響を受け,多量の湿潤大気を東アジア内陸部へ運搬した東アジア夏季モンスーンであったと考えられる.
  • 岩田 修二
    2003 年 42 巻 3 号 p. 181-193
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    面積は小さいが,日本アルプスは第四紀研究にとって重要な高山環境なので,そこでの研究は注目に値する.日本アルプスの削剥にとっては,大規模崩壊などの重力地形が重要である.その発生時期や,下流の河谷の埋積とどのように関係するかについてはまだ未解決である.最終氷期の氷河最大拡張期はMIS4~MIS5aであった.そして,最終氷期後半の氷河最大拡大時期はMIS2(北半球氷床のLGM)ではなく,MIS3の可能性が大きい.したがって,MIS2の氷河最大拡大期を想定して書かれたこれまでの垂直分布図や古環境地図は改訂を検討すべきである.日本アルプスにも,過去には山岳永久凍土が存在し,現在も局所的には分布することが岩石氷河の研究や地温観測から明らかになった.晩氷期と完新世の寒冷期における山岳永久凍土の地形形成や,植生に対する役割を再評価すべきである.最終氷期から完新世への移行期には,高山帯での崩壊が頻発したらしい.今後の研究の進展のためには,未発表の調査結果の印刷と公開現地検討会の開催が重要である.
  • 公文 富士夫
    2003 年 42 巻 3 号 p. 195-204
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    湖沼堆積物中の全有機炭素(TOC)・全窒素(TN)含有率に関連する最近の研究を概観した.TOCおよびTNには,湖水中で自生するものと,陸上から運び込まれる外来性のものがあり,通常の調和型湖沼では前者を起源とするものが優占する.木崎湖における最近の研究では,1983年から1999年にかけての湖底堆積物中のTOC含有率は,同じ期間の湖水中の年間クロロフィルa量および冬の平均気温(12月~翌3月の平均)との間によい相関があることが認められた.このことは,気温が湖水中の生物生産性に影響を与えることを通じて,湖沼堆積物中への有機物流入を支配していることを意味する.野尻湖底堆積物のコア試料中のTOCとTNの含有率およびC/Nの変動を過去4.5万年間にわたって解析したところ,グリーンランドの氷床コアにおける酸素同位体変動が示す寒暖変動とよく一致する結果を得た.野尻湖の堆積物コアについての最近の研究では,TOCやTNの増減が気候に支配された花粉組成の変化と対応することも示されている.これらの事実は,湖沼堆積物中のTOCやTNの含有率が,気候変動の指標として有効であることを示している.
  • 堤 隆
    2003 年 42 巻 3 号 p. 205-218
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    日本の後期旧石器時代は,未較正の14C年代で3.3万年前から1.3万年前のおよそ2万年間存続し,時期的にはAT降灰期前後を境に前半と後半に区分される.本稿では,前半期を前葉と後葉に,後半期を前葉・中葉・末葉に区分し,各時期の石器群の様相について,特に寒冷気候への適応に注目して概観した.前半期前葉は局部磨製石斧と台形様石器に,前半期後葉は石刃技法の成立やナイフ形石器の登場に,後半期前葉は石器群の地域性の発現に,後半期中葉は尖頭器石器群などの地域的展開に,後半期末葉は列島全域におよぶ細石刃石器群の展開によって特色づけられる.
    後期旧石器時代前半期前葉に登場する掻器と呼ばれる石器は,後期旧石器時代の諸石器群にあまねく伴う石器ではなく,時空的な偏りをもって保有される石器である.とくに掻器は高緯度地域に濃密に分布する傾向があり,使用痕分析から導き出される皮なめしという機能推定とあいまって,防寒のための毛皮革製品製作用具であることがうかがえ,寒冷環境への適応を物語る石器として重要視される.
    後期旧石器時代の編年を地域ごとにいかに精緻に組み立て,同位体ステージで示されるような環境イベントとの対応関係をどのように読み取るかは,後期旧石器時代研究の今日的な課題のひとつである.掻器の存在は,最終氷期最寒冷期のより寒冷な環境への人類の適応戦略の解読を可能としている.
  • 中村 由克
    2003 年 42 巻 3 号 p. 219-228
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    長野県を中心とする中部高地は,高原,湖沼,盆地などからなり,旧石器時代遺跡が集中することで知られている.野尻湖は長野県北部に位置し,その西岸に有名な立が鼻遺跡がある.立が鼻遺跡では,1962年から2000年までに14回にわたる発掘調査が行われ,ナウマンゾウ,ヤベオオツノジカ化石とともに旧石器遺物が出土している.最も重要なものは,石器と骨製のクリーヴァー,スクレイパー,ナイフ,剥片などを含む骨器である.これらの旧石器遺物と大形獣の化石は48~33kaのものであり,酸素同位体ステージ(OIS)3の前半期にあたる中期旧石器時代の最後に位置づけられる.
    飯田市の竹佐中原遺跡・石子原遺跡,中野市の沢田鍋土遺跡・がまん淵遺跡などは,立が鼻遺跡と同様に,中期旧石器時代に属する可能性があるが,確実な証拠という点では問題がある.中期旧石器時代に対比される可能性のある複数の遺跡があることからみて,中部高地は旧石器研究に重要な地域である.
    OIS3の後半にあたる後期旧石器時代前半期には,野尻湖周辺に多くの遺跡が集中しており,局部磨製石斧,台形(様)石器,ナイフ形石器などに特徴づけられる.OIS2の同後半期になると,中部高地の全域に遺跡が増える.野尻湖周辺では,杉久保系石器群,瀬戸内系石器群,そして尖頭器石器群などが出土する.
    霧ヶ峰,八ヶ岳周辺の黒曜石原産地の近くには,多くの遺跡が分布する.これらの旧石器時代遺跡は,たいへん標高の高いところにまで立地している.飛騨山脈を越えた飛騨地域で産する下呂石(湯ヶ峯デイサイト)や黒鉛を含む沢式土器が中部高原地域にも広く分布することは,後期旧石器時代後半以降にこの地域における活発な人の移動と交易がはじまったことを示唆する.
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