第四紀研究
Online ISSN : 1881-8129
Print ISSN : 0418-2642
ISSN-L : 0418-2642
43 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 高橋 啓一, 添田 雄二, 出穂 雅実, 青木 かおり, 山田 悟郎, 赤松 守雄
    2004 年 43 巻 3 号 p. 169-180
    発行日: 2004/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    1998年8月に北海道網走支庁湧別町の林道脇の沢から発見されたナウマンゾウ右上顎第2大臼歯化石の記載と,気候変化に伴ってマンモスゾウとナウマンゾウの棲み分けが北海道で入れ替わった可能性を報告した.臼歯化石の年代測定結果は30,480±220yrs BP(未補正14C年代値)であった.臼歯が発見された沢には,臼歯化石の年代とほぼ同じ時代に噴出した大雪御鉢平テフラ(Ds-Oh)を含む地層が分布していることから,この臼歯はこの沢に堆積する地層から洗いだされた可能性が高いと推定した.
    今回の標本も含め,これまで北海道で発見されているナウマンゾウとマンモスゾウの産出年代およびその当時の植生を考えると,地球規模の気候変動とそれに伴う植生の変化に合わせて,2種類の長鼻類が時期を変えて棲み分けていたことが推定された.同時に,約3万年前のナウマンゾウ化石の発見は,MIS3の頃の北海道にナウマンゾウが津軽海峡を渡って来ることができたか,どうかという議論の一材料を提供することとなった.
  • 山口 勝, 太田 陽子, 大村 明雄, 中村 俊夫
    2004 年 43 巻 3 号 p. 181-188
    発行日: 2004/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    台湾東海岸で得た過去約1万年間の完新世サンゴ化石の9試料について,αスペクトル230Th/234U年代測定法とAMS14C年代測定法によりその形成年代を測り,海洋試料の14C年代の暦年較正に必要なローカルな海洋リザーバ効果を求めた.これまで報告がなかった台湾におけるΔR値は,完新世の9試料すべてがマイナスを示し,時代によって変化していた.これは,この地域が基本的に湧昇流などの影響を受けにくく,台風などの降雨による陸水の流入が激しいことから,大気と表層海洋が混じりやすいことによると考えられる.また,ΔRの完新世における時系列変化から,2~3cal kaと8.5cal kaには現在より温暖で降水が多く,4cal kaには寒冷少雨であったことが推定される.本研究で求められた台湾地域のローカルリザーバ補正により,数百年から千年間隔で繰り返し起こる台湾東海岸の地震性地殻変動の解析や,古地震の復元,さらに将来の大規模地震の長期的予測などを考える上で,年代に関してより精度の高い議論ができると期待される.
  • 中村 有吾, 平川 一臣
    2004 年 43 巻 3 号 p. 189-200
    発行日: 2004/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    北海道駒ヶ岳から噴出した駒ヶ岳gテフラ(Ko-g)は,北海道南部から東部に広く分布する広域テフラである.Ko-gは,駒ヶ岳北側斜面において層厚1mを超える降下軽石で,3層のフォールユニットが認められる.給源から約360km離れた厚岸町では,層厚5cm,中粒砂~細粒砂サイズの降下火山灰が認められる.このことから,Ko-gの分布は広く,Ko-gの噴出は大規模な噴火だったと考えられる.Ko-gの岩石学的特徴は,スポンジ状火山ガラス,斜長石,斜方輝石,単斜輝石を含むこと,脱水ガラス屈折率がn=1.500-1.505を示すことである.
    十勝平野南部の泥炭地においてKo-g直上および直下の層準から採取したミッガシワ(Menyanthes trifoliata)の種子から得た14C年代は,それぞれ5,770±40および5,760±40yrs BPであった.Ko-gの噴出は,暦年補正値を考慮すると6,500~6,600cal yrs BPころと考えられる.
    Ko-gは,北海道の完新世編年上,重要な示標テフラである.とくに,縄文時代遺跡,縄文海進堆積物,津波堆積物,斜面堆積物などを編年する上で重要な鍵となる.
  • 池原 研, 吉川 清志, Jong-Hwa Chun
    2004 年 43 巻 3 号 p. 201-212
    発行日: 2004/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    日本海中部大和海盆から採取された堆積物コア中に挾在する火山灰のうち,姶良-丹沢火山灰(AT)と阿蘇4火山灰(Aso-4)の間に産し,従来富山沖(To),山陰1(SAN1),鬱陵-大和(U-Ym)火山灰と呼ばれていた3枚の火山灰について,火山ガラスの諸特性をまとめた.また,3層準での浮遊性有孔虫を用いた放射性炭素年代測定結果とあわせて,その起源と噴出年代を考察した.その結果,以下のことがわかった.富山沖火山灰の火山ガラスの屈折率,主成分・微量成分化学組成は,その給源火山が白頭山であることを示した.その年代は48~51kaである.また,この火山灰は白頭山-日本海盆火山灰(B-J)に対比されると考えられる.山陰1火山灰は,火山ガラスの主成分化学組成から大山火山起源と推定され,Toとの層位的関係から53~55kaの噴出年代が推定できることから,大山倉吉軽石(DKP)に対比される可能性が高い.鬱陵-大和火山灰は,その噴出年代がAT-To間の堆積速度を外挿して求めると62~64kaとなり,AT-Aso-4間の堆積速度を一定として考えられてきたものよりも古い年代値が得られた.今回得られた年代から,大和海盆の平均堆積速度は酸素同位体ステージ3の中・後期(AT-To間)とステージ3の前期から5の後期(To-Aso-4間)までの期間で異なり,前者では後者よりも遅かったと考えられる.これは気候・海洋環境変化による細粒堆積物の供給量の変化を反映している可能性がある.
  • 加藤 茂弘, 檀原 徹, 兵頭 政幸
    2004 年 43 巻 3 号 p. 213-224
    発行日: 2004/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    淡路島中部の大阪層群愛宕累層上部に挾まれる研城ヶ丘2火山灰から,2.3±0.2Maと2.5±0.3Maのゼータ較正されたフィッション・トラック年代を得た.また,研城ヶ丘2火山灰より上位に未記載の都志火山灰を発見し,都志火山灰とその下位の堆積物が逆帯磁していることを示した.これら研城ヶ丘2火山灰のフィッション・トラック年代と古地磁気測定結果から,オルドバイサブクロノゾーン下限が都志火山灰より上位の愛宕累層上部に,その上限(鮮新-更新統境界)が園出火山灰より上位の愛宕累層上部ないし五色浜累層下部に,それぞれ置かれることが確認された.
  • 中島 礼, 伊藤 光弘, 兼子 尚知, 樽 創, 利光 誠一, 中澤 努, 磯部 一洋
    2004 年 43 巻 3 号 p. 225-230
    発行日: 2004/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    茨城県つくば市東部を流れる花室川の中流域から,Palaeoloxodon naumanni (Makiyama)の臼歯が発見された.産出層準は,最上部更新統である桜川段丘堆積物に相当する緩斜面堆積物で,約2.7万年前より新しい年代を示す.歯種は左上顎第3大臼歯であり,歯冠長は331mm,咬板数は1/2・22・1/2と,これまでに報告された臼歯の中でも大型であり,特に咬板数は最大であることがわかった.この標本の産出は,P.naumanniの時代的な形態変異を明らかにする上で重要である.
  • 浅海 竜司, 山田 努, 井龍 康文
    2004 年 43 巻 3 号 p. 231-245
    発行日: 2004/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    サンゴや樹木は,過去の環境変動に関する連続記録を保持している.特に,造礁サンゴ骨格のMg/Ca比,Sr/Ca比は強い温度依存性を示すため,熱帯~亜熱帯海域における第四紀の海水温を高分解能(週~月単位)で復元するために,有用であるとされてきた.しかし,近年,サンゴ骨格のMg/Ca比,Sr/Ca比は海水温にのみ依存するわけではなく,海水中のMg2+/Ca2+比やSr2+/Ca2+比の変化,生物学的効果(vital effects)の影響を受けることが指摘されている.また,骨格微細構造中の金属元素の不均一性による効果(heterogeneity effect)や続成作用,化学的な前処理法などが,測定値に影響を与えることも報告されている.今後,サンゴ骨格のMg/Ca比,Sr/Ca比を用いた古環境復元法をより厳密かつ正確にするためには,これらの諸影響の原因究明とその定量化が重要である.
feedback
Top