第四紀研究
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45 巻, 1 号
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原著論文
  • 小野 映介, 大平 明夫, 田中 和徳, 鈴木 郁夫, 吉田 邦夫
    2006 年 45 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    越後平野中部を対象として, 層相や土砂の堆積速度の地域的差異を検討し, 完新世後期における河川供給土砂の堆積場の変化と地形発達を明らかにした. 同地域では縄文海進時に内湾が形成され, 7,000~6,000yrsBPには湾奥部にまで海水の影響が及んだ. 縄文海進高頂期以降, 内湾は縮小と拡大を繰り返しながら, 信濃川の供給土砂によって徐々に埋積された. 土砂の堆積場の中心は, 完新世後期を通じて海側に移行する傾向が認められ, 4,000yrsBP以降には臨海部における土砂の前方付加や砂丘の形成が集中的に進行した. 一方, 堆積場の中心から外れた内陸側の氾濫原においては, 土砂の垂直的な堆積が徐々に進行し, その過程においては河川の洪水による土砂の堆積が少ない1,400~1,000yrsBPの「安定期」と, 土砂の堆積が活発化した1,000~800yrsBPの「堆積期」が認められた. 現在, 西川と中之口川の間の氾濫原にみられる自然堤防群の大半は, 1,000~800yrsBPに生じた河川の洪水による土砂堆積の活発化にともなって形成された.
  • 宮縁 育夫, 杉山 真二
    2006 年 45 巻 1 号 p. 15-28
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    阿蘇カルデラ東方域に位置するテフラ断面において, 土壌層の各種分析と植物珪酸体分析を行い, 最近約3万年間の植生変遷について検討した. 土壌層の産状, 植物珪酸体総数・組成の変化から, 調査断面は下位よりZone 3 (32~30cal ka), Zone 2 (30~13.5cal ka), Zone 1 (13.5cal ka以降) の3帯に区分された. Zone 3の時期には, ササ属 (おもにミヤコザサ節) を主体とする草原が発達していたが, 最終氷期最寒冷期にあたるZone 2の時期には, 火山活動の活発化もあり, 草原植生は衰退傾向にあった. また, 完新世のZone 1の時期は一貫してススキ属が優占する草原が継続しており, これには人為による火入れが関与していた可能性が示唆された. さらに阿蘇火山周辺域では, 母材供給速度が大きいときには褐色土層が, 小さいときには黒ボク土層が形成されており, その境界となるテフラ噴出率は0.1~0.2km3/kyの間にあると推定された.
  • 里口 保文, 山川 千代美
    2006 年 45 巻 1 号 p. 29-39
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    伊吹山山麓の寺林地域には, 年代未確定の礫質堆積層が分布している. 本論では, この堆積層を寺林層として詳細に記載した. 寺林層は, 下位から最下部層, 下部層, 中部層, 上部層の4層に区分される. 基盤岩の凹地を直接埋める最下部層は, 縞状泥層, 有機質泥層, 基質支持の塊状礫層からなる. 下部層と上部層は, そのほとんどが基質支持の礫層からなっており, その主たる構成物である基質支持の礫層は土石流によって堆積した. 中部層は, 流路に堆積した砂礫堆や残留堆積物と考えられる礫支持の礫層と, それに挾まるレンズ状の砂層からなる.
    最下部層に挾まる寺林I, II, III火山灰層について, 岩相, 記載岩石学的性質, 火山ガラスの主要化学成分を新たに記載した. さらに, 寺林IおよびII火山灰層を琵琶湖湖底で掘削された高島沖ボーリングコア中のBT60とBT59火山灰層にそれぞれ対比した. これらの対比から, 本堆積層の堆積年代は酸素同位体ステージの8から7の境界付近であることが示された.
短報
  • 稲垣 美幸, 大村 明雄
    2006 年 45 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    中部琉球に位置する喜界島には, 更新世および完新世の海成段丘がそれぞれ数段発達する. そのうち, 島の中央部に発達する最高位の平坦面は百ノ台段丘と呼ばれ, 南北方向の断層により3分されている. 本論では, それらを高位から, それぞれA, B, Cブロックと呼ぶ. これまで, 最高位のブロックAはMIS 5eに形成され, MIS 5c相当の堆積物はブロックAおよびBの間にわずかに分布していると考えられてきた. 本研究で, 百ノ台 (ブロックAおよびB) の精密地形測量を行うとともに, そこから採集した化石サンゴの高精度ウラン系列年代測定を行った結果, 中部~上部更新統の年代値 (>450ky, 154.8±6.4-97.7±3.0ky ; 2σ) が得られた. それらは, ウラン系列年代測定の測定限界, あるいはそれを超える>450kyを示唆するものを除けば, MIS 6, 5e, 5cに対比される3つの年代グループ (154.8±6.4-142.7±5.8ky, 122.1±3.8ky, 108.2±3.2-97.7±3.0ky) に区分される. ブロックAから3ステージすべての年代値が得られたのに対し, ブロックBからは5cと中部更新統相当の年代しか得られなかった. ブロックAから得たMIS 5c相当のサンゴ化石は, 明瞭なbindstoneから採集されたものであり, 化石サンゴ群集からみて, 当時の堆積水深が5~15mだったと推定される. これらの事実は, 喜界島の最高位段丘がMIS 5cに形成されたことを示唆するとともに, MIS 6やMIS 5eのサンゴが露出することは, MIS 5cの海進時における侵食作用によるものと推察される.
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