中部琉球に位置する喜界島には, 更新世および完新世の海成段丘がそれぞれ数段発達する. そのうち, 島の中央部に発達する最高位の平坦面は百ノ台段丘と呼ばれ, 南北方向の断層により3分されている. 本論では, それらを高位から, それぞれA, B, Cブロックと呼ぶ. これまで, 最高位のブロックAはMIS 5eに形成され, MIS 5c相当の堆積物はブロックAおよびBの間にわずかに分布していると考えられてきた. 本研究で, 百ノ台 (ブロックAおよびB) の精密地形測量を行うとともに, そこから採集した化石サンゴの高精度ウラン系列年代測定を行った結果, 中部~上部更新統の年代値 (>450ky, 154.8±6.4-97.7±3.0ky ; 2σ) が得られた. それらは, ウラン系列年代測定の測定限界, あるいはそれを超える>450kyを示唆するものを除けば, MIS 6, 5e, 5cに対比される3つの年代グループ (154.8±6.4-142.7±5.8ky, 122.1±3.8ky, 108.2±3.2-97.7±3.0ky) に区分される. ブロックAから3ステージすべての年代値が得られたのに対し, ブロックBからは5cと中部更新統相当の年代しか得られなかった. ブロックAから得たMIS 5c相当のサンゴ化石は, 明瞭なbindstoneから採集されたものであり, 化石サンゴ群集からみて, 当時の堆積水深が5~15mだったと推定される. これらの事実は, 喜界島の最高位段丘がMIS 5cに形成されたことを示唆するとともに, MIS 6やMIS 5eのサンゴが露出することは, MIS 5cの海進時における侵食作用によるものと推察される.
抄録全体を表示