長野市高野に分布する高野層は,中・後期更新世の湖成堆積物からなる.ここで掘削された高野層コア(TKN-2004 : 掘削深約54m)は,ほぼ均質な粘土質シルト層からなり,多数のテフラ層を挟在する.本論では,挟在するテフラ層の層序と岩石学的検討に基づき,下位より順に,Aso-2, Aso-3, SK, Ata, Aso-ABCD, K-Tz, Aso-4の各広域テフラ層を同定・対比した.さらに,MIS 5.5~5.4には火山ガラスの主要成分化学組成でK
2O量が特徴的に少ないテフラ層があり,大阪湾沿岸コアおよび琵琶湖高島沖コアのテフラ層と対比されること,高野層コアの上部に挟在するアルカリ岩質テフラ層が野尻湖底コアに挟在するBW1466テフラ層と対比され,その堆積年代が39.5kaであることを明らかにした.Aso-2,Aso-3,Aso-4およびアルカリ岩質テフラ層を年代基準として堆積速度を算出し,主要なテフラ層の年代を求め,酸素同位体比ステージとの対応について検討した.その結果,高野層コアは約160kaから約30kaのMIS 6からMIS 3に相当し,中期更新世末から後期更新世の広域テフラ層の標準層序を提供できることが明らかになった.
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