第四紀研究
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46 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論説
  • 長橋 良隆, 佐藤 孝子, 竹下 欣宏, 田原 敬治, 公文 富士夫
    2007 年 46 巻 4 号 p. 305-325
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2008/09/25
    ジャーナル フリー
    長野市高野に分布する高野層は,中・後期更新世の湖成堆積物からなる.ここで掘削された高野層コア(TKN-2004 : 掘削深約54m)は,ほぼ均質な粘土質シルト層からなり,多数のテフラ層を挟在する.本論では,挟在するテフラ層の層序と岩石学的検討に基づき,下位より順に,Aso-2, Aso-3, SK, Ata, Aso-ABCD, K-Tz, Aso-4の各広域テフラ層を同定・対比した.さらに,MIS 5.5~5.4には火山ガラスの主要成分化学組成でK2O量が特徴的に少ないテフラ層があり,大阪湾沿岸コアおよび琵琶湖高島沖コアのテフラ層と対比されること,高野層コアの上部に挟在するアルカリ岩質テフラ層が野尻湖底コアに挟在するBW1466テフラ層と対比され,その堆積年代が39.5kaであることを明らかにした.Aso-2,Aso-3,Aso-4およびアルカリ岩質テフラ層を年代基準として堆積速度を算出し,主要なテフラ層の年代を求め,酸素同位体比ステージとの対応について検討した.その結果,高野層コアは約160kaから約30kaのMIS 6からMIS 3に相当し,中期更新世末から後期更新世の広域テフラ層の標準層序を提供できることが明らかになった.
  • 立石 良, 酒井 哲弥, 山内 靖喜
    2007 年 46 巻 4 号 p. 327-340
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2008/09/25
    ジャーナル フリー
    島根県中西部に分布する鮮新—更新統都野津層は,基盤の侵食で形成された開析谷を埋積する.露頭のよい地域での調査から,この地域の都野津層は下部層と上部層に区分され,湾奥の三角州堆積物を主体とするいくつかの堆積シーケンスからなることがわかった.下部層では2つ,上部層では2つから3つの堆積シーケンスが識別された.これらの堆積シーケンスは,上位のものほど海進時における開析谷への海水の侵入で形成された内湾の堆積物が厚層になることから,全体として後退型の累重様式を示すと考えられる.また,開析谷の横断面では,内湾の堆積物は下部層の堆積シーケンスよりも上部層の堆積シーケンスで側方へよく連続する.この理由は地層堆積時の谷の幅の違いで説明できる.下部層堆積時には,谷幅に比べて相対的に広い範囲で,河川堆積物が累積するのに対して,上部層堆積時には河川堆積物の累積する範囲が相対的に狭くなり,結果として内湾の堆積物が側方によく連続する.
  • 中尾 賢一
    2007 年 46 巻 4 号 p. 341-354
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2008/09/25
    ジャーナル フリー
    九州北西部,島原半島に分布する下部~中部更新統北有馬層の貝化石について,堆積相との関係に注目して調査した.その結果,潮汐低地,潮汐流路,河口,内湾の4つの堆積相が識別され,これらは少なくとも2回の堆積サイクルを示す.また,(1)ヒラタヌマコダキガイを主体とし,潮汐流路相に伴う貝化石群,(2)アワジチヒロ,スミノエガキ,サルボウなどからなり,礫層より産出する貝化石群,(3)マクラガイ,スミスシラゲ,シロバトガイなどからなり,内湾相に伴う貝化石群の3種類の貝化石群を確認した.この中には,有明海準特産種とされる貝類のうちの5種が含まれる.そのうち,アワジチヒロとチリメンユキガイは加津佐層に次いで古く,スミノエガキは最古の記録である.しかし,ホソウネモミジボラとウミタケは鮮新世の陸棚堆積物中に現れている暖流系種であり,これまでしばしばいわれていたような中国大陸沿岸系の内湾種と考える理由はない.
短報
総説
  • 澤井 祐紀
    2007 年 46 巻 4 号 p. 363-383
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2008/09/25
    ジャーナル フリー
    北海道東部太平洋沿岸において完新世後期の海水準変動を復元し,これに基づいて千島海溝南部における古地震を議論した.堆積物の海成層と陸成層の境界を,(1)それぞれの低地における境界の連続性,(2)津波堆積物の随伴の有無,(3)異なる低地間における境界の同時出現性,を基準に評価した.その結果,本地域で明らかにされた最近3回の海水準低下は,海溝型地震に関係した海岸の隆起によるものと考えられた.海岸の隆起のおもな原因は,地震発生帯より深部が非地震性すべりを起こすことであり,このすべりは400~500年に1回の連動型地震がトリガーとなって発生すると考えられる.
    北海道東部太平洋沿岸では,測地学と地質学が示す地殻変動にまったく別の傾向が見られるが,本研究によりこの相反する現象を説明することができる.
討論・返答
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