永久凍土環境の指標地形である岩石氷河が日本アルプスで形成された時期を明らかにするために,赤石山脈三峰岳周辺において岩石氷河を構成する礫質土を採取し,その細粒分の
14C年代を加速器質量分析法により求めた.三峰岳北面にある露頭において岩石氷河と基盤岩の境界(標高2,750m)から試料を3点採取した.そのうち2点が11cal ka BP, 1点が18cal ka BPを示した.一方,南面のカールを覆って発達する岩石氷河の下端急斜面上(標高2,650m)から得た3点のうち1点が10cal ka BPを示した.カールの形成時期と岩石氷河の発達に要する時間を考慮すると,三峰南面の岩石氷河が発達した期間はおもに晩氷期である可能性が高かった.三峰北面の岩石氷河についても,最終氷期最盛期から完新世初頭までのいずれかの時期の地形であることが判明した.
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