第四紀研究
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50 巻, 6 号
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論説
  • 千葉 崇, 遠藤 邦彦, 増渕 和夫
    2012 年 50 巻 6 号 p. 279-293
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル フリー
    古環境復元する上で,珪藻遺骸群集の現地性・異地性を識別することは重要である.その識別のため,現世の干潟において,珪藻遺骸群集の形成過程を珪藻殻のサイズ(殻長)と底質の対応関係から明らかにした.その結果,現地性遺骸群集の個体数と分布は,底質のLOI(強熱減量)と相関が高かった.また,異地性遺骸群集の分布と個体数は,底質のシルト含有率と相関が高かった.さらに,異地性遺骸群集の主要な個体は,砂質干潟のような波浪が卓越する環境から洗い流された,シルトサイズのものだった.これらの結果は,特定のサイズの異地性珪藻が選択的に運搬され,シルト含有率が高い環境で特徴的に堆積していることを示唆している.よって粒径など堆積物の特徴を踏まえた上で,珪藻のサイズから遺骸群集の性質を捉え,現地性・異地性の識別が可能になる.以上の珪藻のタフォノミーに着目すれば,よりよい環境指標種を設定することも可能である.
  • 大石 雅之, 下司 信夫, 下岡 順直
    2012 年 50 巻 6 号 p. 295-308
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル フリー
    斜長石斑晶の屈折率を用いた火山噴出物の同定・対比法の有効性を詳細に検討するため,重鉱物の屈折率では識別が困難な榛名火山起源の噴出物について,斜長石斑晶の屈折率分析を行った.その結果,斜長石斑晶の屈折率によって,5~6世紀に相次いで生産された噴出物,32ka の榛名三原田降下軽石,45ka の榛名八崎降下軽石および白川火砕流堆積物について,互いの識別が可能になった.主成分化学組成からも,屈折率分析と同様の結果が得られ,斜長石斑晶の屈折率による火山噴出物の識別が有効であることが示された.
    また,榛名火山南麓に主として分布する白川火砕流堆積物中に,斜長石斑晶の屈折率が明瞭に異なる火砕流堆積物が存在することが確認された.これを新たに里見火砕流堆積物と呼ぶことにする.
短報
  • 池田 敦, 西井 稜子
    2012 年 50 巻 6 号 p. 309-317
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル フリー
    永久凍土環境の指標地形である岩石氷河が日本アルプスで形成された時期を明らかにするために,赤石山脈三峰岳周辺において岩石氷河を構成する礫質土を採取し,その細粒分の14C年代を加速器質量分析法により求めた.三峰岳北面にある露頭において岩石氷河と基盤岩の境界(標高2,750m)から試料を3点採取した.そのうち2点が11cal ka BP, 1点が18cal ka BPを示した.一方,南面のカールを覆って発達する岩石氷河の下端急斜面上(標高2,650m)から得た3点のうち1点が10cal ka BPを示した.カールの形成時期と岩石氷河の発達に要する時間を考慮すると,三峰南面の岩石氷河が発達した期間はおもに晩氷期である可能性が高かった.三峰北面の岩石氷河についても,最終氷期最盛期から完新世初頭までのいずれかの時期の地形であることが判明した.
  • 高岡 貞夫, 吉田 真弥
    2012 年 50 巻 6 号 p. 319-325
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル フリー
    箱根町仙石原のススキ草原において,ローム層などの表層堆積物中の植物珪酸体と微粒炭の分析を行い,過去約1,000年間の植生変遷と人為活動との関係を検討した.ススキ草原内の深さ1.1mの試坑断面中から採取した41点の試料を分析した結果,草本起源の植物珪酸体7分類群,木本起源の植物珪酸体3分類群が認められた.ススキ属型の珪酸体は深度68cmから上方で多く検出され,それより下方ではネザサ節型の珪酸体が多く検出された.微粒炭は地表から深度62cmまで連続的に検出されたが,それより下方では不連続的に検出され,量も少なかった.土壌中に含まれる腐植の年代測定結果と合わせて考えると,調査地では西暦1200年頃までに火入れを伴う人為的影響を強く受けるようになり,ネザサ節のハコネダケが優占する植生から,ススキ草原が卓越する植生へと変化したと推察される.
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