過去から現在までに度重なる津波の被害を受けてきた愛知県渥美半島太平洋岸の沿岸低地を対象に,堆積学的手法を用いて,イベント堆積物の特徴を検討した.採取された3本の柱状コアとトレンチ断面の深度30 cm付近に,平常時の堆積物とは異なる特徴を持つ層厚1~4 cmの砂層が観察された.篩法および沈降管法による粒度分析,円磨度解析から,この砂層の主な供給源は海浜であることが示唆された.海浜砂の運搬距離,海浜砂と河川砂の混合,津波と高潮との水理学的特徴の違いなどをもとに推定されるイベントの性質と,
14C年代を参考にした歴史記録の記述との比較から,この砂層は江戸時代の歴史地震に伴う津波堆積物であると推定される.
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