第四紀研究
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52 巻, 3 号
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2011年日本第四紀学会学術賞受賞記念論文
  • ─大阪湾および播磨灘の海水面変動─
    前田 保夫
    2013 年 52 巻 3 号 p. 53-58
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    この研究はおよそ2万年前から現在にいたる間に起きた海水面変動を年代にしたがって,その復元を試みたものである.地質時代の年代は14C年代測定法(放射性炭素年代測定法)の測定値によった.地質調査は従来の方法と違って海底下に設けられた潜函を利用して年代測定の試料を採取した.フィールドワークは主として大阪湾および播磨灘沿岸で行った.
    大阪湾に最終氷期最盛期以降の縄文海進の海が進入したのはおよそ9,850 yrs BPであり,海進の最大期はおよそ6,000年前で,海水面は現在を上回る標高+2.2 mに達した.現在の海水面を超える高海水面安定期は6,000~4,000年前で,その後はゆるやかに高低を繰り返して現在の海水面高度に定着した.
短報
  • 五十嵐 八枝子, 苅谷 愛彦, 下川 浩一
    2013 年 52 巻 3 号 p. 59-64
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    サハリン南西部のアルカンザスに分布する後期完新世の黒色埋没腐植土から,高率のツガ属(Tsuga)花粉が産出した.ツガ属は現在サハリンと北海道には分布しない常緑針葉樹である.しかし,これまでに両島の完新統から花粉の産出は報告されていた.サハリン南東部トウナイチャからのツガ属花粉の母樹は,現在の分布北限地とトウナイチャの気象条件の類似からコメツガ(Tsuga diversifolia)の可能性が高いとされたが,花粉包含層が陸成層でないことから,二次堆積した可能性も考えられた.これに対し,今回報告するアルカンザスの化石包含層は陸成層である.ツガ属花粉は風により遠距離飛散しないため,母樹が調査地周辺に分布した可能性が高い.さらに今回,化石の花粉形態を検討した結果も,コメツガの特徴を持つことが明らかになった.1,700~630 14C yrs BPのアルカンザスにコメツガが分布したことは,北海道とサハリンにおけるコメツガの変遷史を解明するうえで重要である.
雑録
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