九十九里浜平野の中央部に位置する千葉県九十九里町(旧片貝村)を対象に,1703年元禄関東地震津波の痕跡について,史料調査と低地の掘削調査によって検証を試みた.元禄関東地震の前後に作成された絵図を現地調査で比定した結果から,津波は少なくとも九十九里町役場付近まで遡上したことが分かった.九十九里町役場に隣接する水田で掘削したコア試料の層相と珪藻化石の分析からは,海浜堆積物とそれを覆う堤間湿地堆積物が認められた.淡水性の湿地堆積物を明瞭な地層境界を介して覆う砂層が一枚認められ,堆積物の特徴などから津波堆積物の可能性が高いと考えられる.この津波堆積物の堆積年代は少なくとも1,664calAD以降と考えられ,史料などの情報も考慮すると1703年元禄関東地震による津波堆積物と考えるのが最も妥当である.