東北地方太平洋岸では,10万年スケールの隆起傾向と最近数十~百年間の沈降傾向という,観測期間によって向きの異なる地殻変動が超巨大地震の繰り返しと関連付けて説明されてきた.しかし,更新世海成段丘の分布が不明瞭な地域の存在や,完新世地殻変動データの欠如により,当該海岸における観測記録よりも長期間の地殻変動分布は2011年東北地方太平洋沖地震の発生時点では不明であったとみなし得る.完新世地殻変動に関する2011年以降の研究によれば,東北地方太平洋岸は沈降域(三陸海岸中~南部)とその南北の相対的隆起域(三陸海岸北部,常磐海岸)に区分される.この地殻変動分布がMIS 5.5海成段丘分布と調和的であることから,三陸海岸中~南部で沈降,その南北で相対的隆起,という地殻変動様式は少なくとも最近10万年間継続している可能性が示唆される.日本海溝のすべり特性も踏まえると,沿岸域における最近数千年~10万年間の地殻変動分布は,プレート境界断層のすべり特性の南北方向の違いを反映している可能性が考えられる.
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