日常生活において,転倒・転落事故での死者数(2010 年)は年間約7,500 人1)にも達しており,交通事故死者数(2010 年)の4,863 人2)を上回っている.転倒・転落事故の発生原因として,スリップやつまずきが6 割を超えており,発生場所は公的建築空間,家庭,街路等さまざまである.転倒・転落事故における死者数は近年増加傾向であり,今後もその傾向は持続すると推測されている3).このことから,転倒事故における死者数削減は重要な課題である.
これら事故の安全対策として,転倒の予防などいくつかの対策が提案されている.本研究では,それら対策のうちコストや普及の早さの点から,歩行者の頭部保護帽の着用に着目した.
現在,多種多様な保護帽が販売されている.しかし,現状の日常的な使用を目的とした保護帽は,単に何らかの緩衝材を内蔵した帽子であるものが多く,保護性能は不明確なものが多い.一方で,自動車乗員に対しての衝突安全対策は多くの研究が行われてきており,現在さまざまな基準が設けられている.当研究所でも,長年にわたり衝突安全に関する研究を行っており,多くの知見を有する.
そこで,本研究では,自動車の衝突安全に関する知見を活用して,より安全な頭部保護帽を開発することを目的とした.具体的には,自動車乗員の頭部保護基準で用いられている頭部傷害基準(HIC)により保護性能の評価を行い,さらに,快適性についても評価を行う.これにより,安全性と快適性を両立した頭部保護帽の開発を目指した.
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