国土交通省と独立行政法人自動車事故対策機構が実施する自動車アセスメント(以下,「JNCAP」という)では,2009年度よりオフセット前面衝突試験(以下,「ODB試験」という)において,後席にHybrid-Ⅲ AF05ダミー(以下,「AF05ダミー」という)を搭載し,後席乗員の保護性能評価を実施している1),2).
2009年に実施した試験の高速度ビデオ映像において,試験中にAF05ダミーのショルダーベルトが肩部から肩関節方向に移動する事例が複数確認された.その中には,肩関節を超えて上腕部まで達している事例も見られた.これを受け,2010年度の試験からは,高速度ビデオ映像により試験中のショルダーベルトの状況を確認し,肩関節方向への移動が確認された場合はその事象を公表している.しかしながら,世界的にも,ODB試験で後席にダミーを搭載した試験を実施している事例が少なく,ショルダーベルトの移動を評価している事例もない.さらに,ショルダーベルトが肩関節方向に移動することが胸部傷害にどのような影響を及ぼすかの知見もない状況にある一方で,高速度ビデオ映像による確認は,評価者の主観による判断であることなど判定方法が不明瞭であった. のため,公表に際しては,「ショルダーベルトがダミーの鎖骨から,肩関節に移動している」として事象のみを記載していた.
このような問題を解決するため,ショルダーベルトの位置と胸部傷害値(胸部変位)との関係を整理して,ショルダーベルトが肩関節方向に移動した場合に発生する事象を明確化するための基礎資料を得ることで,今後の前面衝突後席乗員保護性能評価にいかに反映していくかを検討することとなった.
抄録全体を表示