死傷者数低減のための様々な安全対策などにより,近年の交通事故による死亡者数は年々減少傾向にあり,2012年には61年ぶりに4,500人を下回った.また,交通事故による負傷者数についても,ここ数年は減少傾向にはある.しかしながら,交通事故における負傷者数は,依然として850,000人を超えている.交通事故に占める追突事故の割合は全体の約3割であり,最も多い事故類型となっている.年次推移をみると,追突事故件数は1980年代において100,000件程度で推移していたが,1995年には200,000件程度まで増加し,2000年には276,000件に達した.その後,2001年から2006年までの間,毎年280,000~290,000件程度発生している.2005年から2007年までの3年間は前年を下回る件数となっているが,230,000件を超えており,未だに高い水準で推移している1).さらに,追突事故による負傷者の約9割は,軽傷の頚部傷害を負っており,近年,追突事故による後遺障害者数が増加傾向にあることが報告されている2).追突による頚部傷害は,その発生頻度と予後に発生しやすい後遺障害等の社会的損失の観点から,諸外国においても重要な課題となっており,追突時の頚部傷害低減に向けた検討が国際的に進められている.現在では,UN ECE WP29/GRSP /GTR7において,国際的に統一されたヘッドレストの要件,ならびに試験方法が検討されており,種々の議論がなされている.
これらの背景を踏まえ,追突事故の発生状況を把握するため,ITARDA交通事故統計データベース(以下,マクロ事故データと称す)をもとに,追突事故の全体概要と事故発生状況の年次推移,乗員の傷害程度と損傷主部位との関係を分析した.また,衝突状況と後遺障害の関係について,被追突運転者に後遺障害が発生した事故における危険認知速度差(=(追突車の危険認知速度)-(被追突車の危険認知速度))などを分析した.さらに,日本からUN ECE/WP29/GRSP/GTR7に提案している頚部傷害指標の妥当性を検討するため,自動車アセスメントの後面衝突頚部保護性能試験において,試験が行われた車両が関与した追突事故についても調査を行い,頚部の傷害発生率と試験結果との相関について分析した.
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