現在,自動車の前突試験用ダミーとして1970年代に開発されたHybrid IIIが世界的に使用されているが,乗員保護性能向上のため,生体忠実性がより高く,先進的拘束装置に対しより敏感な応答を示すダミーの開発が求められてきた.米国では,NHTSAが1985年に次世代の前突試験用ダミーの開発プロジェクトに着手し,Hybrid IIIの一部を改良したTAD-50M (Trauma Assessment Device - 50th percentile male)を1992年に発表した.その後,NHTSAはTAD-50Mの開発経験を踏まえた新たな前突試験用ダミーの開発に取組み,2001年にTHOR (Test Device for Human Occupant Restraint)-alphaと呼ばれるダミーを開発し,その耐久性や使用性の改善を施したTHOR-NTを2005年に発表した1).現在は,より新しい生体力学的データを活用してTHOR-NTの部位毎に変更を加えたTHOR Mod Kitの評価がNHTSAおよび関連研究機関の協力の下で進行中である2).また,欧州の第7次フレームワークプロジェクトの一つであるTHORAXプロジェクトでもTHORの新しい胸部の開発と評価に取り組んでいる.
本稿は,THOR Mod Kitを評価するためのベースデータを得ることを目的に実施したスレッド試験の結果の概要について報告する.具体的には,THOR-NTおよびHybrid IIIの異なる着座位置に対する全身挙動および各部位の加速度や荷重などの動的応答の違いを評価した結果である.
抄録全体を表示